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シュナの旅

1983宮崎駿による初版本

チベットの民話 犬になった王子 が元になっている。 
穀物を持たない貧しい国民の生活を憂いたある国の王子が苦難の旅の末、竜王から麦の粒を盗み出し、そのために魔法で犬の姿に変えられてしまう。1人の娘の愛によって救われついに祖国に麦をもたらすと言う民話。
チベットは大麦を主食としている世界唯一の国。大麦は、アジアの原産地から世界に伝搬したものだそうだから王子が西に向かって旅をしたと言う内容は歴史と符合している。ただしこの民話は本当にあった出来事というより、チベットの人々が作物への感謝を込めて生み出した優れた物語と考えるべきであろう。宮崎さんは、この物語が描かれる十数年前に、この物語を読んで依頼アニメーション化が1つの夢だったそうだが、日本の現状では、このような地味な企画は通るはずがなく、書籍化になったとのこと。
文庫本あと書きより引用終わり

シュナの旅は、ナウシカの原作などと言われている作品であったが、初めて読んだ。ナウシカの原作漫画本は何度読んでもよくわからないが、この物語は短いし完結していてすぐに読める。セリフなどは少なくト書きの説明が多く、読んだ者の、解釈により深みが増す作品なのではないだろうか。

本文中よりシュナが追い求めた金の麦の種があると言う神の国にやっとの思いでたどり着いたときセリフ

「なんて、豊かで、平和な世界なのだろう
ここにはおびやかすものも
おびやかさられるものもいない」
シュナは、心の底から安らかな思いに包まれた。

引用おわり

そう、この地球は本当はそういう大安心の世界だったに違いない。だが、それも偽りの造られた神による空恐ろしい循環の世界だ、と、その後すぐ知ることになる。

宮崎駿と言う人の持つ世界観。どこでどうやって頭に描くのか?いつもいつも不思議で。未来や過去時間ではないパラレルワールドに行き来したことがあるのか??優生思想、管理者会、種の支配、クローン技術、遺伝子操作、人間の尊厳とは?etcと言った現代近未来的世界の行末が書かれているのか、はたまた古代はるか昔のことが書かれているのか。

この作品の中にはには、宮崎駿の数々の作品のエッセンスと言えるべき世界観が漂う。このような作品が映像化されない(売り物にならない)社会ってなんなんだろう。いや、商業ベースに載せられ、意図しない作品となるのならこの小さな文庫本の世界のままでよいのかもしれない。
40数年たっても色褪せない世界。




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