入所前日 母との幸せな時間
母が施設に入所する前日、実家で母、姉2人と私の4人で一緒に時間を過ごした。
施設への入所って、家族は結構やることがあって忙しい。
何枚もある提出書類を記入したり、持ち物全てに名前を書かないといけない。足りないものがあれば買い物に行ったり。
これにかなり時間がかかった。
疲れ果てて、お昼はほか弁を買ってきてみんなで食べた。
母は要介護2だけど、よく食べる。この日もほぼ、完食していた。
お弁当を食べ終わると、疲れからかそのままみんなでウトウト昼寝をした。
私が、ふと目が覚めるとみんな気持ち良さそうに眠っている。
穏やかで幸せな時間だなぁと感じる。
父が生きていた頃は5人で、亡くなってからは4人でこんな時間をたくさん過ごしてきた。
でも、こんな時間もあと少しで終わってしまう。
幸せって何気ない時間にあるんだなと、改めて思った。
「夕飯は何食べたい?」母に聞くと、
「お寿司!」と即答する。
家族で何度も行ったお寿司やさんに行き、たわいもない事を話ながら、美味しく食べた。
その日の夜は、母に「ずっと家族のためにご飯作ってくれてありがとね。」と伝えた。
すると母は、「今日、母の日だっけ?」と聞いてくる。
「今日は七夕だよ!」と慌てて訂正した。
母が寝た後、部屋に様子を見に行き、寂しさから母の背中をさすっていると、耳が遠い母が「朝?起きるの?」と大きな声で話し出した。
こんな時間に起き出したら大変と慌てて、「まだ夜だから寝てて!」と私は叫ぶ。
母って昔からそう。私が感傷的になりそうになると、すっとんきょうな返しをしてきて、思わず笑ってしまう。
こんなやり取りもこれからは、あんまりできなくなるんだなと思いながら、母の部屋を後にした。