ゴロとの時間―紀州犬の静かな強さが教えてくれたこと
ゴロ(紀州犬)とのふれあい
1. ゴロ(紀州犬)との出会い
ゴロ(紀州犬 以下ゴロ)が家族に加わったのは、私が4歳の頃でした。紀州犬らしい堂々とした姿と、どこか温かみを感じる目が印象的で、その存在感に圧倒されたのを覚えています。ゴロは若い頃、特に父親以外や子どもたちに対しては威圧感があり、「近寄るな」という空気をまとっていました。それでも、彼の白い毛並みや堂々とした姿には誇らしいものを感じました。
2. 距離を感じた時期
最初の頃、私はゴロに触れたいと思いつつも、その威厳に圧倒され、近寄る勇気が出ませんでした。ゴロは強さと自立心を持つ犬で、簡単に甘えたりするタイプではありませんでした。そのため、私もどこか遠慮してしまい、距離感を感じる日々が続きました。しかし、その距離感が逆にゴロの特別さを引き立てていたのかもしれません。
3. 触れ合えるようになったタイミング
そんな関係が変わり始めたのは、私が声変わりした頃だったのではないかと思っています。声が太くなり、ゴロが私を「子ども」ではないと認識し始めたのではないか、と今では感じています。
決定的なきっかけとなったのは、辛くてゴロの側で泣いていた時に小屋から出てきて優しく涙をペロッとしてくれたことでした。その時から頭を撫でたり、耳を押さえてゴマちゃん(少年アシベに出てくるアザラシ)といういたずらをしてみたり、胸の辺りを撫でるようになりました。その手触りは温かく、少し荒い毛の感触が今でも忘れられません。その時、私の中で「信頼」という言葉が大きな意味を持つようになりました。
また、散歩中のエピソードも印象的です。ゴロは前へ行きたすぎて、リードを引っ張ることが多かったんです。私も「そっち行ったらダメ!危ない!」と張り合いながら引き止めようとしていたのですが、ついには力負けしてしまうことも…。そんなある日、ふっと力が抜けた瞬間にゴロが一歩進んで、溝にハマってしまいました。ドジっ子な一面を見せるゴロに、思わず笑ってしまいましたが、その無邪気さに癒されることも多かったですね。
4. ふれあいが教えてくれたこと
ゴロとの触れ合いは、私にとって心の支えでした。彼の存在がこんなにも温かく、優しく、穏やかでいられるものだと教えてくれたのです。ゴロは多くを語るわけではありませんでしたが、ただそばにいてくれるだけで私に安心感を与えてくれました。その静かな強さは、困難に直面した時にも思い出し、乗り越える力となりました。
5. おわりに
ゴロはただのペットではなく、私の人生における大きな支えでした。亡くなったのは高校3年生の2月の冬。体調が悪化し病院で治療を受けた後、外に出た際に心臓発作を起こしてしまいました。すぐに病院に戻ったものの、そのまま静かに旅立ちました。
今振り返ると、ゴロの体調にもっと向き合うことができたのではないかと考えることもあります。彼は長い間家族を支えてくれた存在で、最後の数年間、内臓はかなり悪い状態だったと後で知りました。あの時の後悔は今でも忘れられません。
次回は、ナナとホクトについてお話しします。甘え上手で愛されキャラだったナナと、クールで忠実なホクトがどのように家族の一員として過ごしていたのか、彼らの特別なエピソードを振り返ってみたいと思います。