【25時、赤坂で】2人の大学時代からのすれ違いを羽山・白崎の言葉遣いから読み解く @球体の球体を添えて
【誰も知らない 文章の奥の 深い孤独】
【今さら 想いが巡る 君の言葉に支えられた】
【結局、私たちは愛のすべての形に溺れ、愛の恵むすべての喜びを知りました】
今、シアタークリエで絶賛上演中のミュージカル『ファンレター』の言葉が美しいんですよ!
媚薬に酔って心惑わす言葉の数々!
それで、「あ…いつか羽山麻水は『美しい日本語(仮)』って本を持っている説をnoteに書こうと思ってたんだった。」ということを思い出しました。
で…、9/14~9/29までの半月で22公演観劇(うちほとんどが「球体の球体」と「ファンレター」)という、狂気の状態の今じゃないとこのまま書かないなと思ったので、いまさらながら書こうと思います。
(意外と社会人になっても、きちんと結果を出して周囲の信頼を勝ち得れば観劇って、たくさんできるもんだよね。いや、なんだかんだ有給1日と半休2日取るだけで22公演観られるんですよ、びっくり。だから、学生の皆さん、バイタリティがあれば観劇って社会人になってもたくさんできるよ!と言いたい)
1.「25時、赤坂で」の言葉遣い分析
前回、「最終話のみ」と1~9話との対比構造を8,000字で書くという狂気的なことをしていますが、今回は、「羽山・白崎ってバリバリ大学時代からすれ違っているよね」を両者の言葉遣いという観点から掘り下げていこうと思います。
2人の言葉遣いと人物像
まず、大前提として、「羽山麻水は正しい日本語を使う人物」に対して、「白崎由岐はフラットな若者言葉を使う人物」であるということ。
私が、最初の違和感を感じたのは、3話の羽山さん、白崎くんのおうち突撃シーンでのことでした。
羽山「今日泊って行こうかな。2人寝られるでしょ」
この言葉です。違和感分かります?
「ら抜き」言葉を使っていないんですよ。
羽山さんアラサーだよね?アラサー世代って、普通に「ら抜き」言葉使っちゃわ
ない?(私もアラサーだが、「ら抜き」言葉を普通に使う)
アラサー世代だったら、「2人寝れるでしょ?」と使いそうなのに、
正しい日本語である「2人寝られるでしょ?」と言うんだな。
ドラマだから正しいのか、それとも「俳優」であるから、言葉の感度が高いのか…。とオンエア見ながら感心していました。
が、一方の白崎くんはどうかというと、5話(温泉回)で
白崎「ダメだ、麻水さんのこと好きだって思ったらもう…まともに顔見れない…」
さあ、私の言いたいこと、もうお分かりいただけますね?
「ら抜き」言葉を使っています。
正しい日本語は「まともに顔見られない」です。
これで、「ドラマだから正しい日本語を使う説」は却下されました。
ここから分かることは、
羽山麻水=日本語を正しく使う
白崎由岐=普段は若者言葉…というか、話し言葉(口語)として一般的な言葉を使う
という人物像であると言えます(因みに、山瀬も「ら抜き」言葉使ってるっすよ)
この2人の性格がめちゃくちゃ分かるのが、4話のニョッキのシーン。
羽山「うん、美味しい!」
「あ、あーんしなくちゃいけないんだっけ、美味しくてつい」
白崎「うまっ」
羽山「うまいよね。」
白崎「うまいです。ニョッキ。」
羽山さんは、「綺麗な日本語(おいしい)」を使い、
白崎くんは、「話し言葉(うまい)」と使います。
そのうえで、羽山さんが白崎くんの言葉に合わせる(うまいよね)んです。
いやー、人物描写、うまっ!!!うますぎるよ!! とうなっちゃいますよねー。
羽山さんは、基本的に「自分が発する言葉」で若者っぽい言葉(話し言葉)は使いません。(唯一使うのは、9話のすれ違いコーヒーの「あんまっ」)
ただし、相手の発した言葉に合わせます。
白崎くんだけでなく、山瀬にも5話の温泉脱衣所で、「役と自分がごっちゃになる」と使っていますが、これも羽山さんが最初に使うなら「役と自分がごちゃごちゃになる」だったのでしょう。
このように、羽山麻水という人物は「相手に合わせる・受け身に回る」が大前提だということが、言葉遣い1つとっても分かるんです。
(何度も言うが、人物描写、うっま!!!うますぎるよ!!)
一方の白崎くんは、基本的に自分の言葉遣いを変えません。
(唯一、正しい日本語感出るのは1話の自販機シーンの「おいしい」でしょうか。これも、最終話は「うまっ」に変わるのがいいよね♪)
白崎由岐は「基本ブレない」(ただし、恋愛は別)ということが、言葉遣い1つとっても分かるんです。
(何度も何度も言うが、人物描写、うっま!!!うますぎるよ!!)
学生時代に「喋ったこと」あるの?問題
そんな前提を持ってみると、「あれ…?」と思うことありません?
羽山さんが「白崎くんと、1度話したことがある」と認識しているっておかしくない?って思いません?
さて、ではこの会話のシーンも思い出してみましょう。
1話 自販機シーン
白崎「そうですけど、しゃべったことなかったし…」
羽山「あるよ。1回だけ」
さて、この「1回喋った」は何を指しているか。
皆さん大好き7話(モノローグの駒木根さんの話し方が綺麗はもちろん、言葉も綺麗なんですよねー。だからこそ、7話の異質さが際立つのでいい!!)
白崎「ありえねぇ!羽山さん、演技の仕事しないんですか?どうかしてますね」
羽山「・・・・・・・。」
さあ!!!皆さん、おかしいと思いません!?
正しい日本語使いの羽山麻水が、「喋る」と間違ったことを認識するの!?
え、どしたの?羽山さん…と思うと、「喋る」を辞書で調べたくなるよね。では、辞書的な意味はどうなるかというと、
「喋る=ものを言う」
(喋るは大前提で相手がいるときに使う)
あああああ!!!!
そっか、そうだよな!喋ったことあるよね!
もう一度、主語を追加して、自販機シーンを再現してみましょう。
1話 自販機シーン
白崎「そうですけど、(俺は)しゃべったことなかったし…」
羽山「あるよ。(白崎くんがしゃべったことが)1回だけ」
うん、間違っていない。さすが、正しい日本語使い羽山麻水…。
どこまでも君の言葉は正しい。
きっと、羽山麻水は『美しい日本語(仮)』という本を持っている。
多分、辞書の言葉の意味をきちんと把握して使っている。
どこまでも、器用で、お手本で、商品で、相手の望む自分像を作るのがうまい人物だよね。
(器用であることは間違いないけど、「映画をたくさん見る」ように、イギリスから帰国後に「日本語をたくさん勉強した」んだろうな。そして、本人はそれを努力と思っていなくてやっているんだろうな…)
ただ、「話し言葉」として考えると、普通は「喋る=相手とコミュニケーションをとること」だと思うじゃないですか。
若者言葉遣いの白崎くんは、「喋る=会話する」という意味で使ってるよね。
うん…2人とも、大学時代からめちゃくちゃすれ違っていますね!(笑)
再会してから、なんでこんなに羽山・白崎はすれ違うのか?
こうした、羽山・白崎の言葉遣いの違いから、2人は徹底的にすれ違います。
「恋人契約」(U‐NEXTの言葉を引用)に関しても、
2話
羽山「恋人にならない?まずは恋人になろう」
(これに対して、2話全般で白崎くんは「理由」に注目しています。)
4話
羽山「俺たち、恋人だしね」
6話
羽山「俺たち恋人なのに、寂しいな」
正しい日本語遣い羽山さんは、「恋人」そして、「俺たち」を多用します。
一方で、感覚人間の若者言葉遣い白崎くんは
6話
「羽山さん。今まで、ありがとうございました。俺の役作りに付き合ってくれて」
∟正しい日本語遣い麻水さんには、苗字もだけど過去形って辛いよな。
「俺の」一人称なんですよ…。
「もう辞めます。羽山さんの恋人」
「羽山さんに頼らなくても大丈夫です。必要ありません。」
∟断定形はあまり使わない、相手に合わせる気質麻水さんに、断定形は辛すぎる…
8話
「自分が恋人ごっこやめるっていったくせに、こんなこというの、おかしいのは分かっています」
さて、お気づきですか?6話は「羽山さんの恋人」。8話は「恋人ごっこ」なんです。感覚で言葉を使う白崎くんなので、感情の中で出た言葉だってとても分かるのですが、
「正しい言葉遣い羽山麻水」を傷つけるには、適切な言葉選びすぎて、
「どうしてそんなに器用なん!?」と突っ込みを入れたくなる言葉のチョイスをする白崎くん…。せめて、6話と8話の「恋人」と「恋人ごっこ」のチョイスが逆だったら、ここまですれ違わなかったのに…。
「分からないのは、怖いね・・・」(@球体の球体より)
因みに、「正しい言葉遣い羽山麻水」と、台本・LINEの履歴を見ると、
だいたいの、「お泊り回数」と時期は特定できるようになっているのが、25時、赤坂での「エモい」ポイントですよね。
(白崎くんが、6話で「今日うち来る?」に驚く&「忙しいのに無理しないで…」と思うのも頷ける。また、8話の「羽山麻水が台詞飛ぶ怪奇現象」と「白崎くん、唐突に聞こえる【抱いてくれませんか?】宣言」も分かる…となるけど、これ書くとめちゃくちゃ長くなるので、省略)
さて、冒頭の「ファンレター」に戻ります。言葉遣いの違いによって、羽山・白崎は、
【結局、私たちは愛のすべての形に溺れ、愛の恵むすべての喜びを知りました】(ファンレター引用)になっているんです。
「言葉で相手に伝えることは大事」ということを、25時、赤坂では伝えてくれます。
それと同時に、「どんな言葉を使っていくか」も大事ということを、この作品は訴えかけてくれているようです。
だから、私はこのドラマが大好きなんだと思います。
2.「球体の球体」の言葉遣い分析
さてさて、そう考えると、あと2日で終わってしまう、「球体の球体」も、
言葉遣いで人物像がめちゃくちゃ分かるようにできています。
本島(新原くんの役)は、終始ロジカルに話して、問題解決思考。
代表台詞:
「なんで?」「ママ、呼んでもらっていいですか?」
→言葉のロジカルさと、会話での返答の速さから、「本島は頭の回転が早く問題解決思考型」ってことが分かる
(だから「生き延びるほど、殺されるより殺す側に~」が分かるんですよね。管理する側のタイプ…というより、新原くん同様に本島ENTPだよね。ENTPの典型よね。…あ、私もENTPなので、本島思考がめちゃくちゃわかる)
岡上は、「操作されている」前提を理解したうえでも、話をまとめるのがうまくないのが分かる
代表台詞:
「えっと(これを多用)」「あのっ」「いやだー」、「○○なんです、~なのに」等
主語を付け足すか主語や目的語を入れずに話す。
あと、指示語(これ・あれ・それ)をめちゃくちゃ使う。
(なお、私は某エリアに囲まれた辺りからは操作されていないと考えています。
詳しく話すとネタバレになるので、あえて代表台詞は抽象的に、どこでも使われる言葉にしています)
→説明をすることが苦手なタイプですよね。あと、感情を拾ってほしい、共感してほしいし、言葉の裏を考えてしまうタイプ。「えっと」「あの」「あれ」などが多く、本島のように仮説の立てた質問はしていないので、頭の回転は早くない(「バカなので」は多分正解。残念ながら)。でも、感情を重視するので、めちゃくちゃ優しいんんですよね。
(「淘汰される側」になりやすいことは言葉遣いでもわかるなー)
うわっ、この2人、「朝食」なければ仲良くならないタイプだよね。うん。
基本的に気が合わないタイプ。クラスが一緒なら別のグループにいる。
だからこそ、私は35年後の悲劇がうなずけるんです。
そして、グレイニ日野大統領(の影武者?の、おすーしー)は、詩人なんですよ。
代表台詞:
「間違ったっていいじゃないか!人間なんだから!」等
→基本的に、詩などの表現でよく使われる「倒置法」を使っています。
あーこの人、インスタの本島が好きな詩人の影響をバリバリ受けてるなーが分かります。
(あと、この人が一番核心をついた言葉を言うし、自分のことが理解できているので、地頭いいと思う。だからこそ、兄弟最後の生き残りの優秀な遺伝子だと私は思うよ)
こんな風に、「言葉」って観点で作品を見ていくと、
いろんな発見があって面白いですよね。
(池田さんがすごいのか、稽古していく中で役者も含めてみんなで考えたのかわからないけど、私は各台詞を見て、1つの脚本から引用された台詞だと気づかない自信がある。すげー)
「言葉を大切にして生きていきたい」と、作品を通して私は思うのです。