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【がん患者の徒然草】結局、主治医は、他人だからね。

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「結局、主治医は、他人だからね」

 エコー検査の女医さんがつぶやいた言葉に、何だかつめたい先生だなぁと思った。

 今日は、甲状腺の検査のために、がん治療を受けている大学病院ではなく、かかりつけのクリニックで甲状腺のエコー検査を受けている。

 がんの標準治療を終えて1年半が過ぎようとしている。今もがん治療に伴う副作用が続いて、最近の体調は山谷の繰り返しである。

 毎月の定期検査は、大学病院で受けている。おかげさまで今のところ異常は無い。ありがたいことだ。

 しかし、ここ数週間、体調が悪いので家でゴロゴロしていると女房が「いつものクリニックで検査してみたら?」と促してくれた。

 「そうだね、あのクリニックなら気軽に話せるからね」とクリニックに行くことにした。

 クリニックのお医者さんは、簡単な問診の後、私の愚痴もいろいろ聞いてくれた。

「念のために血液検査もしておきましょうね」

「はい、お願いします」

「ではこちらへどうぞ」

 といつもの看護師さんが、採血室に案内してくれる。看護師さんが、顔見知りだと何だかほっとするな。

 血液検査の結果を聞く日を予約して、自宅迄、自転車で帰る。天気も良いのでちょっと遠回りして帰ることにした。

秋の風が気持ちいい。

 一週間後にクリニックを再訪した。血液検査の結果は、甲状腺ホルモンが基準値より少ないということで、これを補う薬を飲むことにした。また併せてエコー検査をしてもらうことになった。

 エコー検査の先生は、闊達な女医さんだ。「大島さん、言いにくいこともあるだろうけど、がん治療後のいろいろな症状を教えてね」と明るく訪ねてくれる。

 「放射線の副作用で、喉や首回りの凝りが酷くて辛いです」

 「またがん治療後の副作用で難聴と耳鳴りが辛いんです」

 「○○大学病院の主治医からは、難聴と耳鳴りは殆ど治らないと言われて不安です。聞こえないなら補聴器でも着ける? と軽い調子で言われます」

 その女医さんは「主治医は、他人だからね」とあっけらかんに言う。

 エコーの準備をテキパキとしながら「医者は、患者に感情移入しちゃダメなのよ」

 その言葉の背景には、必要なのは家族の応援よ。親身になってくれるのは家族だけよ。

私には、そう聞こえたのだ。

 がんの治療は、抗がん剤や放射線治療をして体調が回復したら終わり、というわけにはいかない。入院が長引くこともあるし、退院後も通院して治療をしたり、定期的に検診を受けたりと、長い期間あるいは一生の付き合いになるかもしれない。

 それだけに、がんという病気と上手に向き合い、納得のゆく治療を受けるには、主治医と良好な人間関係を築くことが必要だと思っている。

 主治医とのコミュニケーション不足は、お互いの不信感やあきらめを招くだけでなく、患者はもちろん主治医にとっても納得のいかない場合もあるかも知れない。

 私の場合は、中咽頭がんだったために首、喉の周りを放射線治療した。そのために治療をはじめて暫くすると喉や舌が腫れて話すことができなくなった。

 毎月の定期検査には女房も同席してくれていたが、彼女には、私の症状や気持ちを上手く伝えられない。

 女房は一生懸命に「主人は、○○○の状態で、ここが痛むらしいです」

 主治医は「どれどれ・・・」

 でも私は、「いゃ〜、ちよっと違うんだけど」と思っても声にならない。

 話すことが出来ない私は、主治医宛に「健康レポート」を書くことにした。

(健康レポート:イメージ)

<健康レポート-抜粋>
(1)全体的なこと
今は、飲み込みと味覚障害等が、一番辛いです。
 ・唾や水を飲み込む時に喉が痛い
  (レベル7~8/10)
 ・舌の腫れと口の渇き等

 ここ数日の水分補給は、何とか口からできるようになりました。それまでは、胃瘻から補給していました。

(2)唾や水の飲み込時に痛むが、それ以外の痛みは殆ど無い。
(以下省略)


 これで誤解のないコミュニケーションがとれそうだ。

 主治医とのやり取りは、「安心」という言葉のキャッチボールだ。

 定期検診時に主治医に健康レポートを渡すと「ほほぅ〜、凄く分かりやすいですね」と誉めてくれた。

 主治医は、健康レポートをPDFにしてカルテに添付してくれると言ってくれた。

これなら私も安心できる。

 患者に感情移入しないで、患者の事実を理解してもらえる方がありがたい。

 主治医と患者とのコミュニケーションの価値は、ここにある。


「主治医は、他人だからね」という言葉の意味を私は、前向きに捉えることで「健康レポート」を思いつき、主治医とのコミュニケーションを的確にすることで「安心」できたのだ。

 このエッセイは、自分への励ましの意味でも綴っている。がんになって、死への不安や治療の副作用の辛さに負けないように・・・
今日も雨が降っているような気分だけど、まだまだ元気だ。
 


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がんになってから、「お布施をすると気持ちが変わる」ことに気がつきました。現在「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」に毎月定額寄付をしています。いただいたサポートは、この寄付に充当させて頂きます。サポートよろしくお願い致します。