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東京都村民生活〜三宅島〜(4)
羽田空港〜三宅島空港✈️
三宅島の空の玄関は三宅島空港。
私が単身赴任していた時は羽田空港から三宅島に定期便が就航していた。(現在は調布〜三宅島)
午前と午後の一日2便。
機材はあのYS11・・・そう日本の名機である!
私の大好きな機体である‼︎
私は自動車も好きだが、飛行機はもっと好きである。
小学生の時はプラモデル作りに熱中していた。飛行機は車の何倍も作った。
第一世界大戦の戦闘機から現代のジェット旅客機まで、飛行機ならなんでも。
マンサン、レベル、ハセガワといったかプラモデルメーカーの箱のイラストを見てはニヤニヤして、どんどん未製作のものが貯まっていった。
当時、カラーリングするのにプラカラーという塗料を使うのだが、それを薄めるのにシンナーを使用していた。作業に夢中で気がつくと、ふらっとしたことがあった。
今思うと疲れていたのか、シンナーのせいなのか・・・今でもわからない。
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私は三宅島に赴任したが、研修のために月1回あるいは2ヶ月に3回ほど上京していた。
研修日の前日に島を発たないとならないので、給食を食べたら職務免除(職免)で港に向かい竹芝桟橋行きの定期船に乗るのが通常である。
しかし、飛行機大好きな私はせっかくだから羽田空港への午後便に乗りたい、と思った。
当然、旅費は船便である。
う〜ん、でも飛行機に乗りたい。
費用は自腹でもちろん高い。
ところが問題は船と飛行機の時間である。
船便が午後2時40分、飛行機は午後4時。
もし飛行機が欠航になったら完全にOUTである。
三宅島は風の島でもある。
赴任前の説明では風が強く吹くことが多く、風速10m/h以上を記録する日が年間130日という。
都内の平均が13日というのだから、10倍もの日数で強風が島を吹き抜けるのである。
しかも強風は西風が多い。
西風というのは島の中心にある雄山を越えて吹き下ろしてくる。
三宅島空港の滑走路は南北に延びているので、ちょうど横風となる。
飛行機は横風に弱い。
しかも山越えで乱流が発生する。
羽田空港からの便が着陸できずに上空を旋回して引き返す。
機体が見えているのに欠航いう悲しい光景もしばしばあった。
よって、午後便の飛行機に頼ると上京できなくなるリスクが高く、結局定期船に乗ることなるのである。
単身赴任の私はそれでも飛行機に乗って帰宅したい!
連休や長期の休みの時などは、午前便を予約する。風の関係で午後より午前中の方が少し運行することが多かったと思う。
午前便がダメなら天候をみて、午後の船にするか、午後便の飛行機に賭けるか⁈
とても悩みどころである。
ちなみに全日空・全日空系列の定期航路で一番欠航率が高いのが、羽田空港〜三宅島だったという。
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羽田空港駅駐機場のYS11
羽田空港から三宅島行きの飛行機はもちろんYS11。YS11という機体は国産初の本格的な双発旅客機である。
開発直後の1964年、東京オリンピックの聖火を各地に運んだことで有名になった。
機体は64人乗り。
キャビンは横4席の単通路。
イメージとしては大型バスの通路を広くして、室内を丸くした感じである。
羽田空港の定期航路に使われていた機体としては一番小さかった。
搭乗にはターミナルからのボーディング・ブリッジではなく、バスでB747ジャンボ機などの大型機の合間を縫ってはるかかなたの駐機場のYS11にたどり着く。
そこからタラップを登るのである。
子どもの頃見たアップダウンクイズのハワイ旅行のようである。(古〜い)
嫁さんが三宅島に来る時は飛行機にしか乗らない、と宣言していた。
絶対船酔いするから、という理由だ。(まぁ、否定はできない)
飛行機と言えば2本通路のワイドボディ機しか乗ったことのない嫁さんはバスで連れて行かれた駐機場のYS11を見て、唖然としたという。
「こんな小さな飛行機で大丈夫⁇」
(周りの飛行機が大きいのだ)
羽田〜三宅島の飛行時間は45分。
直接距離で180km。
飛行時間というのは空港の駐機場を動き出し、目的地で止まるまでの予定時間である。
羽田空港の駐機場から誘導路を通って滑走路から飛び立つまでの時間はおそらく日本一長い。
ため息がでるほどに。
離陸すると機種を南に向け高度3000mほどに上昇していく。
初フライトの時は窓にかぶりつき。
上昇中の窓からは東京湾の左右に房総半島と三浦半島が直近に見える。
すぐに右手奥に大島、さらにその奥には伊豆半島が見える。
高度が低いのでどこもくっきりと視界に入る。
上空からの風景は青い海のキャバスに描かれた絵画のように美しい。
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景色に見惚れていると、
「これより着陸体制に入ります。シートベルトをご確認ください。」というCAさんのアナウンス!
『えっ、もう着陸⁈』
実際に空を飛んでいる時間は30分弱。水平飛行は15分もないかもしれない。
三宅島が近づくと機体がガタガタと震え始める。西風の乱流の中に機体が入っていくためだ。
YS11は小刻みに震え、小さな上下を繰り返し、風下に流されるのを修正しながら滑走路にタッチダウン。
飛行機好きにはこの着陸までの緊張感がたまらない!
機体が止まって、タラップを降り機体を振り返る。
しっかりとしたカッコいい機体だ!
小さなターミナルビルに入って、フッと思った。
定期航路でCAさんも乗っているのだから、機内サービスもあるはずだ、と。
次の搭乗時、シートベルト着用サインが消えた瞬間、CAさんに向かって手を挙げた。
「ホットコーヒーをください!」
続く