見出し画像

東京都村民生活〜三宅島〜(9)

天国の島その2:磯釣り④

三宅島で磯釣りの沼にハマった。
週末になるとどこかの磯に立っていることを想像していた。
しかし、磯釣りと言っても奥が深い
沼はずっと深いのである。
フカセ釣りを上手になろうと思うと、もっと違う釣法を知る。
磯にはメジナ以外にも魚種は多い。
磯釣りは超楽しいのである。
そして目の前には超一級の沖磯、
三本岳」がど~んと存在しているのである!
※巻頭の写真は三本岳の夕焼け
   (三宅島観光協会から)


磯釣りの磯場は危険である。
釣り座まで都道212号線が走っていても駐車した場所から行き方がわからない。
磯場で足を滑らせてケガしたら、突然高波がきたら、と考えると磯釣りの達人について行くしかできなかった。

職場には初めてメジナを釣らせてくれたA先生だけではなく、御蔵島からのC先生、釣りが大好きで単身赴任のD先生など、釣りの師匠が多くいた。

C先生は磯場を歩くプロである。
三宅島の磯場は溶岩が海まで流れたてできた場所がほとんどである。
釣り座までの道のりはゴツゴツしている岩場なので歩きにくい。
目の前に自分の背丈を超える溶岩を乗り越えて行くこともある。
そんなところでもC先生はスイスイと先へ行ってしまう。
磯釣り初心者の私は釣り道具一式を持ってついて行くのが精一杯である。
「C先生、なんでこんなに速いんですか?」と私。
C先生曰く「御蔵島の磯には一山越えて行くところもあるから、この辺りは平なもんだよ」
つくづく島人には敵わないと思ったものである。

D先生にも磯場に連れて行ってもらった。
彼はフカセ釣りより「カゴ釣り」という釣法が好きだ。

カゴ釣りのイメージ(SHIMANOより)

基本的に足もとを釣るフカセ釣りとは違って、仕掛けを遠投し磯場の沖を狙うのがカゴ釣りである。
沖にいる大型メジナも対象であるが、沖の潮流に乗ってくる回遊魚も狙える。
カンパチやヒラマサ、ブリなど大物を釣ることができるのだ。

カンパチ(市場魚介類図鑑より)

ブリはよく知られている通り、美味しい魚である。
もちろんカンパチやヒラマサもとても美味しい。
どの魚も本土の和食屋や居酒屋では高級な刺身として提供されることが多い。
ぜひ70cm級の魚をゲットしたい、と願ったが残念ながら大物を手にすることは一度もなかった。

D先生には泳がせ釣りも教えてもらった。
泳がせ釣りというのは文字通り、餌となる生きた小魚を針に付けて泳がせ、それを喰わせる釣法である。
これも狙いは大物。

いつものように磯場に入って海の様子を見ていると小魚がたくさん泳いでいる
何だろうと見ているとD先生が釣ってみようとサビキ仕掛けを取り出した
サビキ仕掛けというのは、小さな疑似餌が針に巻きついていて、その針がハリスに何本かついた小物を釣るための仕掛けである。
磯釣りに来て『こんなものまで釣りの道具箱に入れてあるのか』と感心した。
さすが釣り好きで単身赴任を希望しただけのことはある。

水面下に多数見えていた魚を釣ってみる。
サビキ針に掛かってきたその魚は小サバであった。
唐揚げにしたら美味いに違いない
が、今回の小サバは餌である。
体長10cmほどのものに大きめの針を背がけして、水面下に投入。
小サバの泳ぎに合わせて竿先がゆっくり動く。

すると、竿先が小刻みに震え、小サバの動きが激しくなった。
魚に追われているようだ。
注意深く竿先を見つめ、全神経を集中させる。
釣り人には一番緊張する瞬間だが、たまらない時間である。
グッと竿先が引っ張られた。
そのタイミングで竿を立てて大きく合わせる。
同時に強烈な引きが腕に伝わる。
あの45cm超のメジナより強い引きだ!
しかし、泳がせ釣りを想定した竿は太いので少し余裕がある。
それでもリールから道糸は出て行くし心臓はドキドキである。

慎重にリールを巻き、引き寄せる。
自前のタモに入れて水面から垂直に引き上げるが、相当な重さである。

泳がせ釣りの初ゲットは、
52cm、2.5kgを超えるフエフキダイであった!

フエフキダイ(市場魚介類図鑑より)

これが三宅島で釣った最大の魚となった。

このフエフキダイは住宅に持ち帰り、冷凍庫に押し込んだ。
一人で食べるには大き過ぎる。

次の長期の休みには4家族でバンガローに泊まる計画があった。
そこへこのフエフキダイをもって行くこととしたのである。

4家族=大人8人、子ども6人での大型バンガロー。
そのキッチンで三宅島で覚えた見よう見真似の三枚おろし。
みんなに覗き込まれながらフエフキダイを捌いた。
身は塩焼き、たっぷり肉のついた兜(頭)や骨はアラ汁にした。
捌き方が上手くないので、かえって食べ応えのあるアラ汁に仕上がった。
私もフエフキダイは初めて食べた。マダイと同じ白身であるが、味わいは違がった。
より脂が強いものだったが、結構美味しくいただけた。

「このお魚、美味し〜い!」とアラ汁を食べた子どもが言ってくれたことは釣り人冥利に尽きる。
大人8人+子どもで食べても十分な大きさだった。
三宅島の海の豊かさに感謝!

次の目標は磯釣りソロデビューだ。
それは程なくして達成できた。
今まで教えてもらった知識とちょっとの決心で達成である。

さらにその次の目標は三本岳への渡船である。
磯釣り好きなら誰でも憧れる超一級磯へ船で渡り、主に巨大メジナを狙うのである。
50cm級、いや60cmに迫る大物を釣り上げることができる日本でも数少ない磯場である。

D先生の教え子のお父さんはその渡船の船長をしている。
仕事が暇な時に格安で渡らせてくれるという約束をしているという。
絶対D先生についていこうと決めた。

次は夢のフィールドへ!
三宅島2年目の夏は
「私を三本岳へ連れてって♬」である。

しかし、それは夢で終わってしまったのである。

続く


#三宅島
#離島
#単身赴任
#釣好き
#磯釣り

いいなと思ったら応援しよう!