人気俳優・監督がハリウッドに進出を果たした映画5選!
ミシェル・ヨー/『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』
オスカー獲得への第一歩となった作品!
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアジア系初のアカデミー賞主演女優賞を受賞したミシェル・ヨー。マレーシア出身で80年代から香港映画で活躍した彼女は、ジャッキー・チェンと共演の『ポリス・ストーリー3』などでアクションの才能も磨いてきた。その成果を買われ、ハリウッド作品に呼ばれたのが1997年公開の『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』だった。
ピアース・ブロスナンが演じる5代目ジェームズ・ボンドが衛星システムやステルス艦を操るメディア王の暴走を食い止めようとするが、そこでボンドの前に現れるのが、中国情報部に所属するウェイ・リン。最初は警戒し合いつつ、目的が同じと知った二人は強力なタッグを組む。得意のカンフーはもちろん、高層ビルからの落下、ボンドと手錠で繋がれたままのハーレーの運転など見せ場はたっぷり。現在に至るまで、このミシェル・ヨーは“最強のボンドガール”と評価されている。それから25年をかけ、彼女がオスカーを手にしたのだから感慨深い。
リュック・ベッソン/『レオン』
その後の活動の起点となった大ヒット作
1980年代、フランスからは若き映画の才能が次々と誕生。『ディーバ』のジャン=ジャック・ベネックス、『汚れた血』のレオス・カラックスとともに、注目されたのがリュック・ベッソンだった。近未来のパリの地下を舞台にした『サブウェイ』に続き、フリーダイビングに挑む男たちの友情を描いた『グラン・ブルー』、女性暗殺者が主人公の『ニキータ』と、ベッソンは時代をリードする作風で多くの観客を虜にした。
そのベッソンが、フランスとの共同製作ではあるがハリウッドのスタジオで初めて撮ったのが、1994年の『レオン』だった。麻薬売買に絡んで家族を皆殺しにされた少女マチルダと、イタリア系移民で殺し屋稼業のレオン。NYの片隅で、年齢の離れた2つの孤独な魂が触れ合うこの物語は、衝撃のアクションとヒューマンな感動が最高レベルで合体し、ベッソンの新たな代表作となった。
NYが舞台なのでセリフも英語。マチルダ役のナタリー・ポートマンが本作で大ブレイクし、ハリウッドを代表するスターへと成長していく。『レオン』は世界的に予想以上のヒットを記録。ベッソンはその後、ハリウッドとの共同製作も経験しながら、自身の会社、ヨーロッパ・コープを立ち上げ、数多くの作品を送り出すが、その起点が『レオン』であった。
渡辺謙/『ラスト サムライ』
本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネート!
今や日本が誇る世界的スターといえば、渡辺謙。そのきっかけを作ったのが、今からちょうど20年前、2003年公開の『ラスト サムライ』だった。トム・クルーズ主演のハリウッド大作ながら、舞台となるのは19世紀の日本。アメリカ人大尉のネイサンが明治維新直後の日本に招かれ、政府軍に西洋式の戦術を教える。政府軍に敵対する侍たちに捕えられたネイサンだが、武士道精神を学び、彼らとの絆を深めていく。日本とアメリカの“架け橋”を特大スケールで描いたアクション感動作だ。
渡辺が演じたのは、反乱軍である不平士族の長、勝元盛次。トム・クルーズのネイサンに対し、威厳もたっぷりに存在感を発揮し、クライマックスの戦いでの壮絶な演技は、作品の中で最大のインパクトを残すことになった。その結果、渡辺はアカデミー賞助演男優賞にノミネートという、日本人俳優で初の快挙を達成。これを機に彼はLAも拠点として、『硫黄島からの手紙』や『インセプション』など数々のハリウッド作品に出演するようになる。『ラスト サムライ』は、共演の真田広之にとっても海外への大きな足がかりとなった。
ペネロペ・クルス/『ウーマン・オン・トップ』
ハリウッドも虜にしたラヴコメディ!
今やすっかり世界的スターとなった、スペイン出身のペネロペ・クルス。母国スペインやフランスのTVシリーズの小さな役でデビューした後、スペインを代表する監督、ペドロ・アルモドヴァルの作品などでその魅力が広く知れ渡り、ハリウッドにも進出した。その1作目が2000年の『ウーマン・オン・トップ』。当時、ペネロペは20代の半ば。彼女の初々しさとセクシーな面が絶妙にブレンドされた、ラヴコメディが完成した。
ペネロペが演じるのは、ブラジルで暮らすイザベラ。天才的な料理の腕をもつ彼女は、歌が得意でレストランを経営する青年トニーニョと結婚する。しかし夫の浮気を知り、すべてを捨ててアメリカへ向かったイザベラは、サンフランスシスコで料理を教え始め、TVの番組にも出演。新たな恋も生まれるが、夫も追いかけてきて……という物語。
料理番組でイザベラが男性視聴者の目をクギづけにする展開が、ハリウッドも虜にしたペネロペ自身と重なり、彼女の持ち味を心から堪能できるはず。この後、ペネロペはスペイン時代に出演した『オープン・ユア・アイズ』のハリウッドリメイク『バニラ・スカイ』に同じ役で出演するなど、そのキャリアを生かして大活躍!
ジョン・ウー/『ハード・ターゲット』
香港+ハリウッドの接点を模索した一作!
『男たちの挽歌』などで香港アクション映画の一時代を築いたジョン・ウー監督。同じくチョウ・ユンファ主演ということで、物語は無関係ながら日本では『狼 男たちの挽歌・最終章』のタイトルで公開された一作が、アメリカでもカルト的な人気を獲得。ジョン・ウーはハリウッドに招かれた。ちなみに監督のトレードマークである鳩を飛ばせる演出は、この作品で初めて取り入れられたことで知られる。そしてジョン・ウーの記念すべきハリウッド進出作となったのが、1993年の『ハード・ターゲット』。
父の行方を探す女性のために、仕事を失った船員が独自の捜査を続けるうち、恐るべき殺人ゲームに巻き込まれていく。主演ジャン=クロード・ヴァン・ダムが得意のマーシャル・アーツで奮戦。鳩はもちろんのこと、バイクのチェイス、二丁拳銃によるアクション、そして要所でのスローモーション……と、ジョン・ウー作品に期待するポイントが満載! とはいえ香港時代よりも、振り切りぶりがやや抑え目なのも、ハリウッドデビューらしいかも。『フェイス/オフ』、『ミッション:インポッシブル2(M:I-2)』と、さらなる大作を手がけていくジョン・ウーが、香港+ハリウッドの接点を模索した一作として必見だ。
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
photo by AFLO