諦めるにはまだ早い! 大人が夢を叶える映画5選!
『グレイテスト・ショーマン』
誰も成し遂げたことがないチャレンジをしてみない!?
新たな夢を描き、それに向かって突き進むのは、子供や若い世代がやること? いやいや、何歳になっても夢や野望を抱き続けるのは大切。そして大人になってから叶える夢こそ、人生をドラマチックにする。つまり映画にも最高のテーマになる、ってこと! その典型的な例が『グレイテスト・ショーマン』の主人公、P・T・バーナムかもしれない。身分違いのお嬢さまと結婚し、子供たちも生まれ、幸せな生活を送っていた彼だが、就職した貿易会社の倒産など不運が重なった挙句、ショービジネスの世界で、誰も成し遂げたことがないチャレンジへ向かうことに!
バーナムの魅力は、機転のうまさと“あきらめない”精神力。貿易会社の船が沈没したら、すぐに船の登録証を手に入れ、借金の担保にする。サーカスを始めてからは、周囲の悪評にもかかわらず、次々と奇策を繰り出して、観客からの支持をつかむ。もともと子供時代から夢見がちな性格のバーナムだったので、このサクセスストーリーには納得だが、物語の後半、すべてを失う大事件が起こっても、不屈の魂で立ち上がる姿に誰もが共感させられるはず。ヒュー・ジャックマンがバーナムの“人たらし”な面を名演しているし、ミュージカルというスタイルも夢を叶えるというテーマに最適な効果を上げている。
『シェフ 三つ星フードトラック始めました』
安定した生活を捨て、リスクも覚悟で新たな目標に突き進め!
やりがいのある仕事に就き、しかも優秀な能力を発揮し続ける。見方によっては夢が叶った理想の人生でもあるが、当人にとっては現状維持かもしれない。本作の主人公、キャスパーは、そのパターン。LAの人気レストランの料理長なのだが、メニューに口出しするオーナーと対立。しかもSNSで炎上騒ぎも起こして店を辞めるハメになってしまう。別れた妻の提案で息子とともに故郷のマイアミへ向かった彼は、キューバサンドイッチ(クバーノ)に魅了され、フードトラックでの移動販売を決意するのだった。
安定した生活を捨て、リスクも覚悟で新たに目標を作ること。そして結果的に、人生が輝き始める、という気持ちのいい流れに乗っていける一作。キャスパーのキャラクターが明るいうえに、彼の再起を助ける周囲の人物も温かみに溢れるのが好印象。疎遠だった息子との絆も、主人公のもうひとつの夢として捉えると感慨深い。本作の監督で自らキャスパーを演じるジョン・ファヴローは、『アイアンマン』でロバート・ダウニーJrのキャリアを復活させたが、そのダウニーJrがこの『シェフ』ではキャスパーにフードトラックを譲る役で登場。恩人であるファヴローの作品に、夢をサポートする役割を果たしたわけで、そんな関係も重ねながら観れば、夢を叶える大人たちのドラマは感動倍増だ。
『ワン チャンス』
過酷で劇的な運命を“ゴット・タレント”で一発逆転!
スポーツやエンタテインメントの分野では、素質を発揮するうえで“旬”の年代がある。しかし常識に囚われていたら、せっかくの才能が永遠に埋もれてしまう……。というわけで、“夢を叶えるのは遅くても大丈夫!”と人気になったのが、視聴者参加型のオーディション番組だ。その先駆けである英国の“ブリテンズ・ゴット・タレント”で発掘されたのが、ポール・ポッツ。オペラ歌手を夢みていたが、容姿のコンプレックスなどで挫折。スーパーマーケットに就職し、市議員も務めたポッツだが、ボイストレーニングだけは怠らず、37歳の時、最後のチャンスとして挑んだ番組で優勝。世界ツアーもこなす大スターになった。
この映画で改めて驚かされるのは、ポール・ポッツのあまりに過酷で劇的な運命。腫瘍の切除手術や交通事故による骨折、治療費のための多額の借金など、とにかく踏んだり蹴ったりの人生。しかし苦難の連続でも、どこかのんびりしたポッツのキャラで、観ながら悲痛な気分にならないのが本作の特徴。妻のプッシュによる番組への応募や、携帯電話ショップでの仕事との両立など、ついに栄誉をつかみ、まさかの“あの人”の前で歌うことになるクライマックスは心を鷲掴みにされる。ポール・ポッツは性格的に弱気な面あり、夢を叶える能力や執念はそれほど強く感じられない。そんな人物がタイトルどおり、わずかなチャンスに懸けるので、観ているこちらも勇気をもらえるのだ。
『ジュリー&ジュリア』
夢を叶えるには根気も必要!
夢を叶えるうえで重要なのは“根気”かもしれない。一歩は小さくてもいい。とりあえず積み重ねていくことで新しい道が開けると教えてくれるのが『ジュリー&ジュリア』。小説家の夢をあきらめ、公務員として働くジュリーは、30歳を前にしてキャリアップする友人たちの姿に焦りを感じる。“このままではダメ。人生を変えたい”と自らを奮い立たせた彼女は、幼い頃、憧れていた有名料理研究家ジュリアの524ものレシピを、一年間ですべて作り、毎日ブログに載せるというチャレンジを試みる。
当初の作家という夢とは違うかもしれないが、大好きな執筆活動と料理を組み合わせるというアイデアによって、新たな方向性が生まれる。これは大人が夢を達成する、最適なプロセスかもしれない。本作ではジュリーのドラマだけでなく、料理研究家ジュリアの物語も並行して展開。1949年に夫の仕事のためにアメリカからパリへ移住したジュリアが、名門料理学校で学び、やがてTVにも出演する人気料理人となる。ジュリアも結婚後、大きな夢を叶えたわけで、2人の生き方がシンクロし、ダブルの達成感。そしてこの映画の原作は、モデルとなったジュリーその人。結局、彼女は一度あきらめた作家への夢を自伝小説として叶えたことになる。
『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』
低迷からの復活ロードは人生の応援歌!
ある程度の成功を達成した後に、残念ながらその地位を失えば “過去の人になる。その場合、復活への道はさらに厳しいが、だからこそトライする価値もある。そんな生き方を教えてくれるのが、このドキュメンタリー。1970年代に結成されたカナダのヘヴィメタバンド、アンヴィル。80年代前半までは有名だったものの、その後、人気は低迷。しかし創設メンバーで親友のスティーヴとロブは、給食の宅配や建設現場で働きながら、バンド活動を地道に継続。ようやくツアーの話が舞い込んでも会場はガラガラだったり、その現実はシビアなのだが、カムバックを模索する彼らの姿が、有無を言わさぬ感動を届けてくれる。日本でのシーンは胸アツものだ。
メタリカやガンズ・アンド・ローゼズのメンバーも登場し、アンヴィルからの影響を告白。本作の監督は、もともとアンヴィルの大ファンで、彼らのツアーにもローディーとして参加した経験があるので、メンバーも安心して素顔と本音をさらす。この映画が作られたのは2008年だが、アンヴィルは現在も活動中。良く言えば“しぶとい”。ちょっと否定的に表現すれば“あきらめが悪い”。しかしすべてを総合すれば“カッコいい”というのが最高の形容詞だろう。アンヴィルの夢は、まだまだ終わらない!
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
Photo by AFLO
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