見出し画像

コミケに初めてサークル参加した話

コミケに初めてサークル参加してきたので、何を書いて売ったか、当日の売れ行きや感想などを簡単にまとめる。

書いた物

WW2ごろの戦車や戦闘機を擬人化したゲームであるアッシュアームズ(以下アシュア)に登場している兵器の中には現存している物が少なからずあり、それらを写真と共に紹介する本を書いた。そのついでに、同じ施設に展示されている兵器などに対する解説も少しだけしている。
このような本を書いた理由はいくつかある。

1つは、アシュアのプレイヤーに対して元ネタとなった兵器を見る機会は意外とあるし、それらを見る事は想像以上に面白いといった事を伝えたかったからだ。元々アシュア自体がコアなミリタリーファンにも、逆にその辺には詳しくない人にも支持されるような作品だ。だから、前者に対しては実物を見た上でキャラのビジュアルや設定面を改めて考察する楽しみを、後者に対しては元ネタとなっている物が一体どういうものなのかを実物をその目で見られるのを知って貰う事でコンテンツをより楽しめるようになると考えた。
本心とはいえ綺麗事を吐かすだけだとアレだから暴露しておくと、アシュアのコミュニティの雰囲気的に何かしら書ければ1冊も売れず大爆死する事だけは避けられそうだという下心もいくらかあった。流石にいきなり魑魅魍魎の集まるミリタリー島で勝負する度胸はない。

もう1つは、一度でいいからコミケにサークル参加してみたかったからだ。今まで何回か一般参加はしているものの、サークル側だとどういった体験になるのかは全然分からなかった。これを知らないままで済ます気にはなれなかったので、自分に多少の経験値がある展示されている兵器についての文章でサークル参加を体験する事にした。

どんな感じで書いたかについては大した話でもないので割愛しよう。pagesを使ってスマホのご機嫌を伺いながら今まで行った事のある場所、見てきた兵器についてひたすら書くだけである。何も面白い話はない。強いて言えば、確実に出品できるよう当初予定より規模を縮小した結果、やたら早く終わってしまった為に告知などをするタイミングが早くなりすぎた事くらいだ。

そこそこ分厚い本になったので、印刷費もなかなかすごい事になった。最初から赤字上等ではあるが、最低限原価の数割は戻ってくるような値段にすると決めていた。よって、価格は同人誌としては高めな2000円にした。手前味噌だけど、自分がその値段で買って満足するか?の問いに関しては自信を持って頷けるような仕上がりになっていたのも大きい。

当日自分も他の本を買いに行けるように、知人に売り子をお願いした。結果を先に言えば、これがないと他の本を買いに行くのは不可能だったと思う。

当日の経過

一般参加よりも極めてスムーズに入場し、設営をしていく。キャリーケースに詰めて家から在庫の本を持ってきたのだが、124ページほどのA4の本が40冊もあるとめちゃくちゃ重たく、運搬には割と苦労した。次は宅配便を利用してもいいかもしれない。設営に必要な物も最低限しか持ってきてなかったので、随分と殺風景なサークル枠になってしまった。特に、まともな値札を用意しておらず、小さい付箋に書いただけなのはかなり問題があったと思う。近くのサークルの方が戦車の模型や立体物、サークルポスターなどを思い思いに展示して賑やかな空間になっていたのとは大違いだ。本自体も華があるデザインとは言い難く、改善すべき点が多いように感じられる。とはいえ、模型など本以外の物もゴロゴロあるし、その隣には分厚くてお堅そうな本もあるのは個人的に好ましいカオスさなので、自分がその一端を担えたかもしれないというのは嬉しい。

近くの同ジャンルのサークルの方とも挨拶し、本を交換した。新刊交換には結構な憧れがあったので、やれて良かったと思う。しかも一部の方はあえて代金を払ってまで買ってくれた。感謝しかない。

そうこうしているうちに開場時間になった。開いたばかりなのに、壁に配置されているサークルには人が途切れる事なく訪れては何かしら買っているのを見ると、壁サーは完全に別次元の存在なのだと改めて実感した。一般参加の時でも、外にまで並ぶ長蛇の列には大変驚かされると同時に壁サーの強さを理解したが、自分が物を出す側だとまた違った視点からそれを感じ取れる。別に競う物ではないのはよく理解しているが、自分の本が一般参加者にはまだ一冊も売れてない中でばんばか売れていく様が嫌でも目に入ってくるとどうしても心がざわつく。そのうち、自分の本は本当に需要があるのだろうか、周りと比較してあまりに高額じゃないだろうか、分厚さで怯まれないだろうかと思い悩むようになった。

そんな中で、1人目の購入者がいらっしゃった。自分が作った物を誰かに買われる瞬間というのはとても嬉しい物だ…そう書ければ良かったのだが、正直な事を言うと会計をする時に特に大きな感情は生まれなかった。今まで散々やってきたレジ打ちの業務と同じような感覚で代金を受け取り、商品を渡す。それだけだった。
勘違いされたくないので明記しておくが、自分が書いた物を誰かが買って読んでくれる事に関してはとても感謝しているし、ありがたい事だと思っている。ただ、他のコミケレポ漫画とかである、感情が溢れ出てくるとかそんなオーバーな話ではなかったのは事実だ。もしかしたら、金を扱う業務の間は努めて冷静になるべきという習慣が体に染み付いていたからかもしれないし、それか単に当日かなり早起きだったから疲れていただけかも。
ともかく、自分の本が売れたお陰で、壁サーに対しての引け目のような物は消えた。どうであれこっちの本も売れるんだから、後は単なる規模と知名度の話でしかない。少なくともこっちはサークルの規模も大きくないし、知名度は皆無だから比較する意味がない。必要もない。その上で更に何人かの購入者がいらっしゃったので、壁の事などもはや気にならなくなった。
これで拗らせた感情も消えて、のんびり楽しめるようになるかと思ったが、自分の捻くれた根性ではそうもいかない。今度は同ジャンルでイラスト本を出している人の売れ行きが良好なのが気になるようになってしまった。その方はアシュア以外のジャンルの絵も描いていて、そっちでも需要があるから当然購入者も増える。それにイラストの質も高いから売れて当然。頭ではそう分かっていても、ゲームのキャライラストが一切出てこない本は需要がないのでは、価格とボリュームが過剰すぎたかといった感じでやっぱり意識してしまう。壁とは違って同じ作品の二次創作をしているサークルなので、比較する事にもある程度の正当性が見出せるのも良くなかった。しまいにはボリュームを減らして元ネタ兵器だけを簡潔に紹介した廉価版の方がマシだったのではと自分の作品の根本的な所に疑問を抱くようになる始末。
こうやって変に拗らせ続けていたのだが、ふとしたタイミングで、コミケには自己顕示欲を満たす為だけに参加したのか、それとも他の人にも実機を見る事の楽しさを伝える為に参加したのかどっちなんだと自分の中で問答が始まった。無論後者である。自分が書いた物を買われて褒められたいから来たんじゃなくて、売って読ませたいから来たんだ。そう心の中で断言すると、いつの間にか悩むのをやめていた。我ながら随分と変な悩み方をしていた物だと思うが、これも実際に参加してその場の空気に呑まれたからなのだろうか?

そうこうする内に、先にサークルを回っていた売り子が帰ってきたので交代する事にした。12時頃だったと思う。この時間だと物によっては売り切れている事もあり、目当ての物を買い切るのは不可能だった。それに、いくら売り子がいるにしてもなるべく早めに戻らなくてはならないという焦りもあった。覚悟はしていたが、やはりサークル参加では一般参加のように気楽に買い物や見学はできない。
一通り買い物を終えて戻ると、自分がいない間に4冊売れたと報告された。じわじわと売れている事への感謝もあったが、売り子なしでの離席はかなりまずいとも思わされた。これから1人で参加しなければならなくなった場合は、他の本を買いに行くのはほぼ諦めなければならないだろう。

それからもう何冊か売れた後、時間にしてだいたい14時30分頃には人の流れも落ち着き始めたので撤退する事にした。
資材が少なかったからか、撤収作業は5分ほどで終わった。その後残った在庫を委託ブースに回してサークル参加は終了。随分と軽くなったキャリーケースが自分の本を捌けた事を雄弁に物語っていた。

結果・反省点

最終的な本の流れは次のとおり。
持込:41冊
運営への提出:1冊
近隣サークルとの交換:10冊。うち3冊は購入していただけたのは前述のとおり。
販売:17冊。うち2冊は身内が買ってくれたので実質的には15冊か。
委託:12冊。参加前にXで委託についてのアンケートをした所8名程度が委託なら買うと答えていたので、委託するのに妥当な数だったと思いたい。
自分用に保管:1冊

コミケに初参加かつイラスト本ではない変化球で、その上価格がやたら高いとリスクだらけの出展だった事を考えれば大成功だろう。元ネタ兵器の展示を見学し解説する、といったジャンルはアシュアでも需要があると考えていいはずだ。今回のクオリティを維持出来るのならば、次回のサークル参加でもある程度売れる事が予想される。

反省点としては、以下の2つが挙げられる。
まず、設営資材が貧弱だった事。特に、値札に関しては事前に用意するべきなのにそれを怠った事は一切擁護できない。それに、サークル主不在などの伝達事項を書くためにもホワイトボードの類が必要だった。また、頒布物を紹介する小さなポスター位は作っても良かったと思う。宣伝というか、サークルを回っている人が今自分がどこにいるか把握する助けとして用意するべきだったかもしれない。

次に、本自体の構成をもう少し練るべきだった事。本来は表紙をもう少し硬い素材にするつもりだったのだが、紙の材質に関して何も知らないのに一切調べず、サンプルが届いてあまりよくないと思ってもなお調べないまま印刷のゴーサインを出したのはひとえに自分の怠惰が原因だ。
他にも、どういう訳か文中の文字の一部だけが太文字になるというよく分からない不具合もあったが、これも把握した上で納期延長を恐れてゴーサインを出してしまった。そうするのであれば、せめてその辺のプリンターで丸々印刷して校正を行う必要があったと思う。
あと、表紙についてももっと飾り気のある物が作れるはずだ。今回の本は写真を適当にコラージュして貼り付けただけで、特に下部に思いっきり余白ができているのが頂けない。せめて背景色位は置くべきだったのだが、pagesへの理解を深める事に嫌気が差していたので色々ぶん投げた。言い訳すると、本当にpagesは使いにくい。次のページに行こうとしたら訳わかんない改行してレイアウトをズタズタにしやがるし、画像の配置の取り回しも悪い。とりあえず書く分にはともかく、こだわるにはかなりの習熟が必要だろう。

まとめ

今回自分はかなり硬めかつゲームとの関連性が薄めの内容で参加したのだが、それでもなおたくさんの方が手に取ってくださった事が一番の驚きだった。深く感謝すると共に、アシュアの懐の広さも身をもって実感した。イラスト系でも小説でもなく、創作ですらないレポートでも十分受け入れられる余地があるのならば、余程のことがない限り大体の物は受け入れられるだろう。二次創作初心者や同人誌初心者がコミケ初出展に挑戦するための舞台としてもってこいだ。
コミケへのサークル参加も、とても刺激的な体験だった。周りが売れていく中で自分の物はほとんど相手にもされていないのを見せつけられる時間というのは、事前に予想していてもやっぱり楽しい物ではない。それでも、いやだからこそ、自分の作品を買ってくれる方に対しては感謝の気持ちが自然に芽生えてくるし、売れると嬉しい。仕事とかではなく、趣味で自分が作った物を売るという経験自体が貴重な物なので、色んな人にサークル参加をおすすめしたい。自分が好きな物、知ってる物について書くだけでも他の人にとっては未知の世界への招待状だ。やってみる価値は大いにある。一切売れないのが怖かったら今回のようにアシュア同人って事にして、無理やりこじつけてもいいだろう。少しでも関連性があればいいのは今回で証明された事だし。
最後に自分の今後の予定を。なんとなく来年の夏コミも参加できそうな雰囲気があるので、申し込みはするつもりだ。次は、今回紹介しきれなかった施設の展示機について書く予定。実際に参加できるかどうかはもう少し時期が近づかないと分からないが。

いいなと思ったら応援しよう!