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『銀色のトレジャーボックス』#0プロローグ

 これは、2000年ぐらいに書いたものです。
私が母子家庭になり、音楽だけで食べていけずに別のお仕事をしていて、それを卒業することになり、1年間の思い出を綴ったものです。
 生きること、死ぬこと、幸せ・・医療関係の中でいっぱい悩み、考えていた自分を、愛おしく思い、今回、載せることにしました。
 読んでいただけたら幸いです。


#0 プロローグ

 3月3日、おひなまつり。ラジオからDJが、しきりにその話しをしている。私は、それを聞き流しながら、今日はお寿司を買って帰ろうなどとぼんやり考えている。あと約1ヶ月。この車ともお別れだ。銀色の軽自動車。一日平均100キロ走る。西荻に始まって、西新宿・田無・武蔵境・清瀬・保谷・・・。

「都内を100キロ走るって、並みじゃないよー」そう言った友人もいた。あと約30日と思うと、これまで飽き飽きしていた全ての物が、きらきらと輝いて見えるから、人間っていい加減な生き物だ。もうすぐ、一年を向かえる私の昼の顔・・・。それは、病院から検査用の検体を集めて、検査をする所まで運ぶ仕事だ。それも、私の任されているコースは、緊急便。つまり、早く結果が欲しい人のものだ。

 あと少しで、この仕事から卒業。とうとう、好きな音楽書く事などの仕事のみになるのだ。もちろん不安もある。でも、私には、たくさんの確信もある。この一年を振り返ってみると、たくさんの宝物をもらったような気がする。私の銀色のトレジャーボックス・・忘れない様に書き留めておこう。


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