ヒマラヤ便り31号 女神ドゥルガー現る
ナマステ!今日はピーター・ファン・ペルスに誘われてトレッキングに繰り出しました。先日マニカランでゲットした緑と黒の市松模様のクルショールを颯爽と巻きつけて張り切って出発。トレッキングの始まりは、隣街までトレッキングすることから始まるのだ。待たれるのと足手まといになるのが苦手で、何度か誘いを断って来たが、トレック慣れしたピーターは日帰り可能なライトなコースを選んでくれた。歩幅もスピードもスタミナも段違いのピーターに「私遅いよ。それでもいいんだね?」と何度も念押しした。
隣町のダバ(食堂)で、「歩く直前によく食えるなぁ。」とチキンカレーをガッツリいってるピーターを横目にチャイをしばく。「天気悪くね?」若干不安になる。一人だったら止めてるが、ピーターは御構いなしで歩き始めたのでついてった。
ゴミがなく綺麗な歩きやすい道でニコニコハイキング気分で、たまにすれ違うヤギやロバやローカルにナマステ〜と挨拶をする。帰りに持ち帰れるよう、タンドリーの着火剤になる松ぼっくりスポットに目星をつけながら行く。
30分ほどチンタラと歩いていると、案の定、雨が降り始めて「もうすぐ村があるから雨宿りしよう。」とピーターが言った。生粋のお天気屋くるちゃんは、天気がどんよりしてくると、気分もどんよりしがち。暗雲と霧に覆われた薄暗い村に到着。年季の入った普通の家が数軒あるだけの小さな村は、チャイ屋なんてなさそ。一人だったら木陰で雨宿りか雨にぬれても帰ってるが、ピーターは村人を探し歩いて「チャイが飲めるところがないか?」と聞いた。さっきチャイ飲んだばっかだからいらねんだけどなぁ。と思いつつ、やりとりを見ていた。
道沿いの家の二階の窓から、イキった青年が、「チャイ屋じゃないけど、ウチで雨宿りしていけYO! メーン!」って感じでフレンドリーに家に招待してくれた。村の中で一番大きそうな立派なお家は、こういう天候と取り扱いでは、年季が悪い方に出て、物にあふれた手入れと掃除の行き届かない埃っぽい部屋は、「これで土禁かよ!」と靴を脱ぐのを躊躇させた。早くも二度と来ない場所リストの上位に食い込んだ。
とても息苦しく居心地が悪かったが、バィジーは、めちゃ歓迎してくれてるのが伝わるので感謝はしている。レトロで可愛いブラウン管のテレビをつけてくれ、チャンネルを私に決めさせてくれた。「トムとジェリーじゃん!」日本語で思わず言った。ピーターも懐かしがってた。テレビに集中するっきゃナイト。
おもてなしのチャイが来て、「ダンニャバード!」と言って、口をつけずに両手を温める。バィジーは熱く夢を語り、適当に相槌を打ちながら、部屋をゆっくり見回す。色々な物が低い天井あたりまで積み上げられ、目眩がする。かろうじて見える壁に、ドゥルガーのポスターを見た。
壁に飾られたドゥルガーは、それぞれに武器を持った十の腕を羽のように広げ、流血した水牛とマヒシャースラを足蹴にトリシューラを突くお馴染みのヤツだけど、この部屋に飾るには、オドロオドロしが過ぎる。見なかったことにして再度、トムとジェリーに集中した。バィジーは相変わらず、ピーターに大きな夢を語っていた。
「ポトリ。」と天井からバィジーとピーターの間に何かが落ちた。全員が気づき、薄暗い床に視線が集中する。ピーターが「ネズミだ!」と言った。私は「ジェリー?」と言った。みんな爆笑した。自分が笑わせておきながら、笑ってる場合じゃねぇだろ。と思った。
脳内で「どうゆうことだろう?バィジーによって手荒に窓から放り出されたジェリーは、かなり弱っていた。弱ったネズミが天井から落ちてくるとは?」と色々な仮説と、その後の良からぬ展開が巡り不安でいっぱいになる。
「ちょっと、外の空気を吸ってくる!」と元気に立ち上がり、ポーチに出る。
胸いっぱい新鮮な空気を吸い込む。やっぱ、外の空気がいい!
帰りに拾うタンドリー着火用の松ぼっくり達が濡れてないといいなぁ。とか、今日こそうまく着火させるぞ!おー!とか、タンドリーが恋しくなって、早く帰りてぇ。
お掃除して、ポーチでくつろげるようにしたら、このお家、活きるのになぁ。とか、やっぱチャイ飲まなくて良かった。とか思ったりして過ごした。やり過ごしたと言った方が的確。
脳内で宣言した通り、あの部屋には二度と入らないので、雨にぬれても、汚れや埃が洗い流されるようで逆に気持ちが良いかもなぁ。ピーターが出て来たら、このまま帰ろうって言おうと心に決めた。ピーターのガイドは、ルートの選択は良いが違った意味でハードコアだな。などと思いながら、ピーターを待った。