小谷の裏話②幼少期から抜毛が発覚するまで
両親、いや「家族」にとっての私は出来損ない以外の何者でもなかったのかもしれない。両親の「理想」とかけ離れすぎた私。それ以上の姉と妹。
「家族」は私の存在を隠したがる。でも手帳から発せられる「恩恵」の光は両手を広げて受け止める。「貰えるものは貰っとけ」そう囁いては私から金銭的な意味で搾取してきた。私が迷惑をかけた、お金がかかった、そう言い続けられ私もそう思うしかなかった。罪悪感から生じる義務という鎖が私を沼のさらに深いところに引っ張った。「恩恵」の光は私に届くことはなく、手帳というレッテルが重りとなって私から這い上がる気持ちすら奪った。「支配」の中で息を潜めるのは苦しいと同時に楽だった。痛みは麻痺していた。抜け出して社会の光に焼かれることが怖かった。そのまま融けてしまいたかった。
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