【実録】40歳バツイチ女がマッチングアプリで年下彼氏に出会うまで(2)
いらっしゃいませ!さえこです。どうぞゆるりと読んでいってくださいね。
【実録】シリーズ連載2回目。前回の記事はコチラです☆
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「あんた、自分をだましてない? 本当に、彼の家にいるのが爬虫類だと思ってる? そんなわけ、ないでしょ。女だよ。苦手な爬虫類がいるって言えば、それ以上押して来ないと思って言ったんだよ」
潜在意識の声を無視して彼と会い続けること数ヶ月。
ますますヒロくんのことを好きになっていた。彼はとても優しいのだ。
いつも楽しそうに話をきいてくれる。褒めて励ましてくれるし、決して否定しない。
大好きなヒロくん。
ああ、家に呼んでくれないことと、休日は連絡が取りづらいこと
この2点を除けば完璧な彼氏なのに…。
――バカじゃないの?
その2点が一番大切だって、どうしてわからないの?
今日も潜在意識の私がうるさい。ほんと、なんなのこいつ。ちょっと黙ってくれないかな。
「さえこ!」
季節は秋に差し掛かっていた。待ち合わせ場所で、彼が嬉しそうに手を振る。
180㎝の長身。アイロンのかかった白いシャツは、近づくと柔軟剤の匂いがする。
――いい匂い、なんて思ってるの?いい気なもんだね。…このシャツは誰が洗っているんだろうね?
……だめだ。悔しいが、もう潜在意識の声を無視できない。私はやっと決意した。
もう一度、彼に訊いてみよう。答えてくれないなら、終わりだ。今日で終わりにしよう。
「さえこ? どうしたの?暗い表情して」
「ヒロくん、今日こそはちゃんと聞かせて。ヒロくんの家に、他に誰がいるのか。爬虫類なんかじゃないよね」
冷静に訊こうと思ったのに、声が震えていた。
「………」
彼は黙っている。
「黙ってるのはずるいよ」
「……だって、言ったら、さえこは僕の前からいなくなるでしょう?」
私は彼の目を見つめた。
「いなくならない、って言ったら? そうしたら答えてくれる?」
彼は唇を真一文字に結んで、首を縦に振った。
「わかった。いなくならない。だから教えて!」
「本当に、約束してくれる?」
「約束するから」
そして彼はゆっくりと、口にした。
「妻がいるんだ。結婚しているんだよ」
一瞬、目の前が真っ暗になったような気がした。
「誰か」がいるのはわかっていたけれど…。
せめて「妻」でなく「彼女」であってほしいと願っていた私の望みは、薄いガラスのようにあっけなく粉々に砕け散った。
「……奥さん……」
「それと、あと二人いる。子供が、二人」
その言葉を彼が言い終わるやいなや、私はくるりと踵を返すと、駅に向け歩いていった。
彼が「さえこ!」と呼ぶのが一度だけ聞こえたが、振り返る余裕は無かった。足早に改札を通り、ちょうどホームに入ってきた電車に乗り込んだ。
せめて一発殴ってやればよかったと後から思ったけれど、もう電車は走り出していた。
さようなら、ヒロくん。
寂しいけれど、悲しくて悲しくて涙が出るけれど、貴方に本当のことを言わせることができなかった私の負けだね。
どうか幸せに。
時々は思い出してね。バカな女だった私のことーーーー
てな感じで、ここで切れればとてもキレイだったのだが……そうはいかないのが人間の「業」というものである!!
結局、その後も彼に会うことをやめられず数ヶ月が経過した。
……そして、驚きの事態が私を襲うのであった。そう、まるで、天罰のように。
(続く)