【実録】40歳バツイチ女がマッチングアプリで年下彼氏に出会うまで(7)
いらっしゃいませ!さえこです。いつもお疲れ様です。今日もゆるりと読んでいってくださいね。
【実録】シリーズ連載7回目です☆
https://note.com/saeko_111/m/mcb342d0fb6f1
【前回までのあらすじ】
39歳バツイチのさえこは、マッチングアプリで知り合った大ウソつきのヒロくんに「実は既婚者なんだ」と告白される。
ショックを受けるも、それから数ヶ月にわたり別れることができず関係は続いていた。そんなある日、彼がマッチングアプリに登録していることが判明する。彼といるときの自分が幸せではないことにようやく気づき、別れを選択するさえこ。
そして傷心をものともせず、丸の内で開催されるお見合いパーティーに参加するのであった。
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「はじめまして!」
「はじめまして。よろしくおねがいします」
一人目の男性との会話が始まった。
43歳。穏やかそうなサラリーマン風。どことなく元夫に雰囲気が似ているのが気になるが…。
セン子が心配する「スポ根モード」が発動中の私であるが、だからといって闇雲にマシンガントークをはじめたりはしない。
一番大切なのは笑顔。
そして、初対面の相手との会話では、聞き役に徹するのが基本姿勢だ。相槌は「さしすせそ」(※)を大げさめに連発する。
※
さ 「さすがですね」
し 「知らなかったです」
す 「すごいですね!」
せ 「センスいいですね!」
そ 「そうなんですね!」
相手の名前は即座に覚えて、頻繁に呼びかけるのが鉄則である。
もう一つ、長年の営業経験で培った極意がある。「目の前の人を好きになれば、自然と会話は上手くいく」。
外見でも、話の内容でも、話し方でも、持ち物でもなんでもいい。相手の「素敵だな」と思えるポイントをできるだけたくさん見つけること。
直接的にそれを褒めるのは会話が途切れたときでいい。話すことがなくなったときのために、材料をたくさん用意しておく、そんなイメージだ。
「すごい! ◯◯さんはギターがご趣味なんですね! 楽器が弾ける方って尊敬しちゃいます!」
「はは…いやいや、『下手の横好き』ってやつですよ」
よし、もう大丈夫だ。気分よく話し始めてくれた。
相手が8割、私が2割の配分で会話はテンポよく運んでいく。
この配分は、異性に限らず、初対面の人に好意を持ってもらうための黄金比率だ(注:さえこの個人的な見解です)。
メリットはもう一つ。自分が話す時間が短いほうが、単純に、疲れない。
「…はい。5分たちました! お席の移動をお願いします!」
アナウンスが入り、私は笑顔で彼に御礼を言った。
「ありがとうございます。お話できて嬉しかったです!」
「ありがとう。僕はさえこさんを指名するね」
よしっ!! 一人ゲット!
心の中でガッツポーズする。
そして息つく暇もなく、次の男性が目の前に着席する。
「はじめまして!」
「……よろしくお願いします……」
ぽっちゃり目の男性。年齢は36歳。緊張しているようで表情が固い。服装はポロシャツにチノパンだ。
いかにも、こういう場所に慣れていない感じがする。
私は優しさ100%(当社比)の笑顔になった。トーンを落として言う。
「…次々にお相手が変わって疲れちゃいますね? 私とはゆっくりお話ししてください」
彼はたちまちホッとしたような表情になり、趣味について尋ねるとアニメやゲームの話を嬉しそうにしてくれた。
5分はあっという間に過ぎる。
「ありがとうございました!」
「ありがとう…楽しかったです」
可愛らしい笑顔を見せてくれた。
いいね。順調、順調。
お見合いパーティーや合コン参加に明け暮れていたのは10年以上昔のこと。だが、ブランクはあるものの「カン」は少しも鈍っていないようだ。
それどころか、若かった頃よりも包容力が増したせいか、ちっとも会話に苦労しないではないか。
やっぱりね。思った通り、歳をとるのって案外悪くないみたいだ。
(続く)