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取材日記③ プロへの3つの課題とは?
K大学のグラウンドには、太陽が照りつけていた。練習を見ていた私のシャツは、汗で背中にへばりついていた。
ベンチでT監督と話していると、1人の選手に声を掛けて、ベンチに呼び寄せた。
「Y、ちょっといいか?」
来年のドラフト候補として注目を集めているY選手だった。
僕がその場から離れようとすると、
T監督が「ココにいてもいいですよ」と言ってくれた。
その言葉に甘えて、2人の会話を聞かせてもらった。
T監督が、Y選手に語り掛けた。
「Y、君がプロに行くには、まだ3つの課題がある。何かわかるか?」
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Y選手は真剣な眼差しでT監督を見つめながら、額から流れる汗を拭った。
そして、静かに話し始めた。
「まず一つ目は、変化球への対応です。特にスライダー、カーブといった変化球への対応力をもっと高める必要があると思っています」
T監督は深く頷いた。Y選手が続ける。
「二つ目は、初球への準備です。プロでは、初球から積極的にストライクを取りに来る投手が多いです。初球からしっかりと対応できる準備をする必要があると感じています」
T監督は、最後の答えを待った。
「そして三つ目は、送球の正確さです。プロでは、一つ一つのプレーの精度が求められます。特に、送球の正確性をさらに高める必要があると思っています」
Y選手が話し終わると、T監督は深く息を吐き、ゆっくり立ち上がった。
「君の答えは、オレが考えていたものと全く同じだ。これ、見てみろ」
T監督は、手に持っていたメモをY選手に見せた。
そこには「1、変化球への対応 2、初球への準備 3、送球の精度」と書いてあった。
「自分の課題を正確に理解している。その分析力は、これから大事なってくると思うよ」
T監督は、Y選手の肩を優しくポンポンと叩いた。
Y選手が練習に戻ると、T監督は僕のほうを見て言った。
「今、鳥肌がたちましたよ」
Y選手がプロで活躍したら、今日のことを書こうと思う。