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🇺🇸米国暗号資産規制ニュース(2024年5月6日):上院ステーブルコイン規制法案:内容と課題、そして立法化の見通し
近年、ステーブルコインは暗号資産市場において重要な役割を果たしており、その市場規模は急速に拡大しています。しかし、ステーブルコイン市場の成長に伴い、消費者保護や金融システムの安定性に対する懸念も高まってきました。
このような背景の下、2024年4月17日、Lummis上院議員(共和党)とGillibrand上院議員(民主党)が共同で「Lummis・Gillibrandペイメント・ステーブルコイン法案(Lummis-Gillibrand Payment Stablecoin Act)」を提出しました。この法案は、米国のステーブルコイン市場に明確な規制の枠組みを設け、市場の健全な発展、消費者保護、イノベーションの促進、そして米ドルの支配維持を目指しています。
ステーブルコイン規制の立法化の期待が高まりますが、外国発行者への対応やイノベーションの阻害など、いくつかの課題も指摘されています。また、法案の成立に向けては、政治的動向や民主党・共和党間の合意形成の進展に大きく依存することが予想されています。
本レポートは、法案の主要ポイントとそれに関連する課題について分析します。
ステーブルコイン法案の主なポイント
1. 発行者の資格
銀行とノンバンクの両方:法案は、銀行だけでなく、フィンテック企業などのノンバンクにもステーブルコインの発行を許可しています。
ノンバンクも発行可能だが、発行上限額あり:ノンバンク発行者は、連邦準備制度理事会(FRB)に登録された非預金取扱信託会社が該当します。ただし、発行上限額100億ドルという制限が設けられています。
連邦または州規制当局下の銀行:銀行発行者は、連邦銀行監督当局である通貨監督庁(OCC)または州の銀行当局監督下にある預金取扱機関で、国内ペイメントステーブルコイン発行者としてFRBに認可された機関が該当します。銀行発行者には発行上限がありません。
マネーロンダリング対策:すべての発行者は、米国のマネーロンダリング防止法および制裁規則を遵守する必要があります。
2. 準備金の要件
1対1の米国ドルの裏付け:法案は、消費者保護とステーブルコインの価値維持のため、1対1の米国ドルの裏付けを義務付けています。つまり、発行されたステーブルコインと同額の米国ドル(現金及び現金同等)を準備金として保有する必要があります。
アルゴリズミック型ステーブルコインの禁止:2022年に発生したTerraUSDの崩壊を受け、アルゴリズミック型ステーブルコイン規制が議論されてきました。これまでに2年など期限付きで禁止する法案もありました。この法案では、アルゴリズミック型ステーブルコインの発行は完全禁止されています。
3. 消費者保護の強化対策
子会社設立の義務:すべての発行者はステーブルコイン発行専用の子会社を設立する必要があります。
連邦預金保険公社(FDIC)による管理と解決:発行者が破産した場合、FDICが管理と解決を行い、消費者の資産を保護します。
準備金の保護:
カストディアン:発行者は、非預金取扱信託会社を主要なカストディアンとして使用し、預金取扱機関をサブカストディアンとして使用する必要があります。
準備資産の公開:発行者は、準備資産の内容を定期的に公に開示し、透明性を確保する必要があります。
本法案に関して指摘される課題点
1. 外国発行者などのステーブルコインへの対応が不明瞭
法案の適用範囲:法案は米国外の発行者にも適用されるとしますが、Tetherのような発行者に対する具体的なメカニズムが不明確であり、また法律の有効性に疑問が生じると指摘されています。また、DAIのような暗号資産担保型トークンへの対応も明確になっていません。
2. イノベーションの阻害が懸念
一部の業界関係者からは、法案の枠組みが過度に厳格であるとの懸念が示されています。
発行上限の弊害:非預金信託会社に対する100億ドルという発行上限は、新規参入障壁となり市場競争を阻害し、また新興企業や中小ノンバンクにとって不公平であると指摘されています。さらに、法案はデュアルバンキングシステムの維持を謳っていますが、FRBに州規制当局の認可先に対して拒否権を与えることは、この原則と矛盾するという意見があります。州が独自の判断でステーブルコイン発行者を認可する機会を奪い、FRBに過度な権限を集中させることになると問題視されています。
アルゴリズミック型ステーブルコインの禁止:法案はアルゴリズミック型ステーブルコインを全面的に禁止していますが、イノベーションを抑制する可能性があるという意見もあります。
3. 立法化の見通しが不透明
立法化の見通しについては、いくつかの要因により不透明さが残っています。
政治的な要因:大統領選挙やその他の重要法案との兼ね合いなど、様々な政治的な要因が、ステーブルコインの立法化に影響を与える可能性があります。
党派間の対立:民主党と共和党では、ステーブルコイン規制に対する考え方が違います。両党が歩み寄って合意に達することができるかどうかが、法案の行方を左右することになりそうです。そんな中、暗号資産の懐疑派として有名な上院銀行委員会のSherrod Brown委員長からは前向きなコメントが出ており、立法化が期待されています。
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