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解像度が高まる

お稽古ごとで通っている場所に、たくさんの文化財、書物が収蔵されているお蔵があるのだけれど、なかなか機会がなくて拝見させていただくことがないまま10年近く経っていた。基本的には非公開の場所であるし、博物館とかで展示されているときに何度もみたことがあるし、こういう場所でお稽古ごとをさせていただいてるだけでも十分なので、見られなくてもいいかなとも思っていた。

それが先日、たまたま機会が巡ってきてお蔵に入らせてもらうことになった。お蔵の2階に展示室があり、その入り口からなんともすごい圧があってなかなか入れない。促されて中に入ったらお軸が壁一面にかかっていて、真ん中のガラスケースには巻物が広げて展示されていた。
そのガラスケースのガラスも開けていただいて直接見せていただけた。

そこには国宝か重要文化財しかない。

とっても古いものたちばかりなので、扱いには細心の注意が必要なのだけど、よく見るためにハンカチを口に当てつつ、それでも息を止めながら顔を近づけて見せてもらえた。

千年以上前の紙の上に墨が乗ってて、その当時生きていた人の筆づかい、息づかいが立ち上ってくるようですごく感動した。とても生々しく感じた。

ゆっくりとたくさんのお軸や書物を拝見させていただいてからお蔵を出たときに、さっきまで自分が立っていた場所は千年前にタイムスリップしていたような、不思議な感覚だった。

帰ってからもなんだかちょっとふわふわしていてしみじみと「ああ、今日のこの日に見せてもらえてすごく良かった」と思った。ここに通い始めた時に見せてもらえていたとしても、こんなに感じ取ることはできなかった。

この10年近く、美術館も博物館もお能も文楽も歌舞伎も現代劇も沢山見て、寺社仏閣も興味のあるところは訪れて、お謡とかお花とかのお稽古を重ねて、その成り立ちとか背景とかを勉強して、たくさん考えて、そしてほんのすこしずつだけど良さが理解できてきてる気がする。

それを踏まえて見る『世界』ってすごく良い。
解像度が高まる感じだ。

なにかになりたいわけじゃないけどなにかになりたくて、なにかわからないけど、とりあえずいろいろ手を出して勉強してきたことが、ほんの少し自分の中で役に立ち始めてるのかもしれない。

そういったことを自分の中ではっきりと自覚できた機会となった。

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