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なぜテイラー・スウィフトはSuper Bowlでブーイングを受けたのか (彼女の政治的スタンスについての解説付き)

私の初めてのNote投稿です。
先日、Xでこんなツイートがバズっていました。

このツイートのスレッドには、事実でない返信が連なっていました。

「反トランプで トランプが再選したら アメリカを出て行くと 豪語してバイデン支持してたからね 恐らくトランプ支持者からのブーイングでしょう」

「このカップル、トランプさんが大統領に就任したらアメリカから出ていく言うてましたけどいつ出て行くんですかね?日本には来ないでね。」

「テイラースイフトがDSの手先だってことをアメリカ国民はみんな知ってるってことですね」

こういったコメントは、明らかな事実誤認であり、かつ、スーパーボウルの文脈には全く関係がありません。

このブーイングは、テイラーが現在のボーイフレンドであるカンザスシティ・チーフス所属のトラビス・ケルシー (Travis Kelce)の応援に来ていたため、相手方のフィラデルフィア・イーグルスのファンから発されたものです。

トランプの支持者が、彼女をブーイングしたのではありません。

今年のスーパーボウル(第59回スーパーボウル)は、カンザスシティ・チーフスとフィラデルフィア・イーグルスの対戦でした。スポーツでは対戦相手に対しブーイングをすることはあっても、その選手の彼女に対してブーイングが起こることはあまりないでしょう。

ではなぜ今回テイラーにブーイングが起こったのか。

なぜなら、テイラーは過去にフィラデルフィア・イーグルスのファンだったものの、ケルシーと付き合うようになってから、チーフスを応援するようになったからです。彼女はペンシルベニア州のウェスト・レディング出身で、フィラデルフィア地域で育ちました。お父さんのスコットも含め、家族でイーグルスを応援していたことがあるのです。

例えば、2010年3月19日にフィラデルフィアの当時のワコビアセンターで行われた「Fearless」ツアーでの最初のアリーナコンサートで、テイラーはアンコールの一環として、カスタマイズしたイーグルスのジャージを着て「Today was a Fairytale」を演奏したことがあります。

また、ケルシーと付き合う前の2020年にリリースされた「evermore」というアルバムに収録されている曲、「Gold Rush」の歌詞にも"With my Eagles T-shirt hanging from the door"という歌詞があります。それくらい日常的に応援していたということですね。

そのためもあってか、今回テイラーなりの配慮も感じられていたと個人的には思っています。
去年のスーパーボウルチーフスの応援に行くときは必ず全身赤を身に着けていたテイラーですが、今回の参戦時の服装は白いタンクトップで、アクセサリーこそ赤いものをいくつか身に着けていますが、普段よりは相当控えめです。

今回のスーパーボウルでの参戦服
引用:https://www.themirror.com/sport/american-football/philadelphia-eagles-taylor-swift-dig-964750
普段の観戦服
引用:https://indigomusic.com/feature/taylor-swifts-best-game-day-outfits-supporting-travis-kelce

では、なぜ今回、このブーイングが政治的な意図によるものだと誤解されたのでしょうか。

個人的に、要因は2つあると考えています。
①スーパーボウルの会場に現アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプが来ていた
②テイラーが2024年の大統領選挙ではカマラ・ハリス候補の支持を表明していた

彼女が初めて政治的な立場を表明したのは2018年で、当時の中間選挙で民主党の候補者を支持することを公表しました。また、直近では2024年の大統領選挙に向けて、カマラ・ハリス候補を支持することを発表していました。

テイラーの直接的な政治的発言は、以下SNSでの表明文(過去に3回投稿有り)と、NetflixのMiss Americana内だけであり、よく言われる「トランプが大統領になったらアメリカを出ていく」と過去に発言したことはありません。

ここからは、テイラーが政治的発言をするに至った背景を少し掘り下げて解説します。

もともと、テイラーの出身であるカントリーミュージック界では、政治的発言が長年タブーとされてきました。カントリーミュージックは、白人の多いアメリカ南部や中西部の保守的な地域で人気があり、ファンの多くが保守的な価値観を持っているからです。

例えば、カントリーミュージックの代表的なグループのひとつである、The Chicks(旧Dixie Chicks)は、2003年にロンドンでのコンサート中に、当時のアメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュとイラク戦争に対する批判的な発言をしました。具体的には、リードシンガーのナタリー・メインズが「私たちはテキサス出身の大統領を恥ずかしく思っている」と述べたのです。この発言はアメリカ国内で大きな反響を呼び、特に保守的なカントリーミュージックのファン層から強い反発を受けました。ラジオ局は彼女たちの曲をボイコットし、一部のファンからは脅迫状が送られるなど、過激化したのです。

しかし、The Chicksはこの逆風にも屈せず、2006年にリリースしたアルバム『Taking the Long Way』で、批判に対する強い意志を示し、このアルバムは商業的にも成功し、グラミー賞を5部門で受賞するなど、高く評価されました。歴史的瞬間です!

テイラーは、このChicksの例を挙げながらも、「Miss Americana」では、彼女が政治的発言をするようになった経緯とその理由を語っています。

テイラーは長い間、カントリーミュージック界の「良い子」として、政治的な話題を避けてきました。しかし、前述の通り2018年の中間選挙をきっかけに、自分の信念を公にすることを決意しました。

テイラーはドキュメンタリーの中で、「自分の意見を表明することが重要だと感じた」と述べています。特に、女性の権利やLGBTQ+の権利に対する強い支持を表明し、これらの問題に対する無関心が許されないと感じたのです。例えば後にリリースされるアルバム、「Lover」に収録されている"You Need To Calm Down"はそういったLGBTQ+コミュニティへの支持を表明し、オンライン上のヘイトやネガティブなコメントに対するメッセージが込められています。

結果、テイラーの発言は多くの若者に影響を与え、有権者登録の莫大な増加にもつながりました。

こういった影響力の大きさもあり、トランプは、テイラーに対して批判的なコメントをしたこともあります。特に、テイラーが2018年の中間選挙で民主党候補を支持した際、トランプ大統領は「彼女の音楽が以前ほど好きではなくなった」と述べて話題になりました。それ以外でも、Trump Media & Technology Groupによって運営されているSNS上でも度々Taylorを嫌いだと発言しています。

引用:https://variety.com/2024/music/news/donald-trump-i-hate-taylor-swift-truth-social-1236144531/

一方で近年のテイラーは、こういった対外的な政治的スタンスと自身のプライベートの交友関係を分けて考えているようにもうかがえます。その一例として、チーフスのパトリック・マホームズの妻、ブリタニー・マホームズは、政治的な立場が異なるにもかかわらず、テイラーと良好な関係を築いています。テイラーは民主党支持者であり、ブリタニーはトランプ支持者として知られていますが、2023年の秋に初めて一緒にカンザスシティ・チーフスの試合を観戦してから、その後も頻繁に一緒に試合を観戦する姿が見られています。彼女たちはお互いの政治的意見を尊重しつつ仲良くしています。

https://www.instagram.com/p/DA6Nf6jJBKr/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==

長くなりましたが、今回のスーパーボウルでのテイラーに対するブーイングは、スポーツならではのブーイングである一方で、いち選手の彼女に対してブーイングが起こるというイレギュラーな事件でもあり、話題性があったために、政治的意図と絡められて揶揄されることがあった。というのがまとめとなりそうです。

テイラーについての正しい理解を広げるためのいい機会になるのではないかと思って書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。

もしご質問、補足、ご意見などなどあれば遠慮コメントいただければと思います☺