見出し画像

【打開の翼】第19話「推測」

私たちは成保さんが落ち着くまでの時間、坂本さんと雑談した。

「へえ、ほな、坂本さんのチームは…」
「もう前のオタサー臭は影も形もないよ。
 充斗さんと柚さんに声をかけたいけど、食事中くらいしか見かけられないし
 あの雰囲気に入って行ける人は居ない。」
「どんな雰囲気やねん…」
「さっきも言ったじゃん。大人のデート?」
「やめてください…(照)」
「そう見えるらしいだけや。普通やて。」
「で、うちのメンバーは気づいたらしい。
 『声をかけられないなら、声をかけてもらえるようになればいい。むしろその方が嬉しい。』って。
 おかげでチームワークを意識して動くようになったし、自分の腕も磨くようになった。
 女性同士もいがみ合うのをやめたよ。
 よっぽど充斗さんの檄が効いたんだろうな。
 『仲間として行動ができないのなら一緒に行動する意味はない!』なんて言われたら
 充斗さんと一緒に行動できるようになりたくて努力する。
 結局…あんな喧嘩するような奴らは、すごく単純だってことだったんだ。」
「いい方向に向かってよかったですね」
「うん。…………ホント…もっと早く…君らに出会いたかったよ…………」
「…………」

「まあ、隊ではなくなっても、いつでも会えるんだし、共闘だってすることがあるかもしれない。
 その時どうなってるのか楽しみではあるよ!」
「じゃあ、坂本さんは残るんですか?」
「うん」
「俺等がちょっかい出さなかった時は、やめたかったんちゃう?」
「ああ…………そうだね…でも都市伝説のUDMに入れたんだ!
 ちょっと運がなかったくらいでやめるのももったいない!」
「都市伝説…?」

「『地球外生命体と戦ってる政府の極秘軍隊がある』なんて、SFじゃん。
 都市伝説としては有名だよ。でも俺はあるって信じてた。色々探して、やっとたどり着いたんだ。
 柚さんはどうやってここに?」
「街の壁にあった張り紙の電話番号に…」
「えええ!?確かに本物もあるらしいけど、あんなのほとんどイタズラなのに…よく当たりを引いたね…」
「はい…私も普段なら絶対そんなことしないのに…なんかあの時は何の疑いもなく…」
(ホンマの番号を知っとったからやろな…)
「充斗さんは?」
「俺は国のHPの問い合わせに書いたら連絡来た。」
「当たりだ。あとは役所経由とかいろんなパターンでたどり着ける。
 とにかく大抵は政府に直結してる機関を入口にしないとならない。」
「へえ…」

「なんで都市伝説なんやと思う?」
「え…さっき坂本さんが言ったように…荒唐無稽な話だし…」
「市街地で戦闘も起きとる。ビルを吹っ飛ばしたこともある。
 そんなニュース見たことあるか?」
「あ…ないです…報道規制…?」
「それもあるかもしれない。
 でも実際市街地戦で、UDM隊員以外の人間は傷つかない。
 殺されるなんて絶対ない。
 市街地戦でビルを壊した時、中に人は居たかい?」
「…………居…………なかった…………え?どういうことですか?」
「これは推測からの仮説だけど、まず1。
 あの生物たちは『自分を傷つける力があるやつだけを排除する』
 だからUDM隊員だけを傷つける。
 その2。あの生物たちは、一般市民の記憶を消せる。そしてテレポートさせることができる。」
「???」
「宇宙人のテンプレやろ。誘拐されて何も覚えてへん。
 それってテレポート+記憶消去みたいな話やろ。」
「…………たしかに…………」
「多分無力な市民はいつでもどうにでもできる。
 その前に交戦能力のあるものを排除する。
 無駄に一般市民を傷つけても、自分らの存在を公にするだけでメリットがない。」
「今はUDMさえ排除したらええ。
 無駄に騒ぎ起こして、UDMその2みたいなのが出来たらめんどい。て考えとんのかもな。」
「充斗さんの解説分かりやすい…………」
「坂本さんの前提をかみ砕いただけや。前提がなかったらかみ砕かれへんのやで?」
「坂本さん、すごい」
「ははは、俺のもあくまで『俺の推測』だからね。
 壊したビルとかはUDMが何とかしてるのかもな。
 これだけの兵器を作れるんだ。建築物の修復光線みたいなSFなものがあるのかもね。」
「それやったら、戦闘中はそこは立ち入り禁止にしたらええだけやもんな。
 政府も侵略者も」

今まで考えたことなかった…………
なんとなく、必死に戦って…………
色んな矛盾や不可解を無視してた…………
敵がどこから来た…何なのかも…………

「こんな推測、大真面目にしてるっておかしいかな?俺ってオタク?」
「ははは、ベクトルの違うオタサーの一員やな」
「オカルト研究会とかの方だろうね。
 俺、ハテナって思ったことをほっとけない質なんだよね…
 知りたがりで考えたがりで。」
「ええんちゃう?そういう人らがおらんと、俺等はずーーーーっと、こん棒持ってマンモス追っかけなあかんやろ?」
「ははは!探求心のある奴が居ないと科学も魔法も進まない。永遠に原始人か。
 そう言ってもらえると嬉しいよ…結構ウザがられるんだ。
 だからこういう話は滅多にしない。少なくとも恋愛脳の自分の隊には絶対。」
「それがいいです。」
「でも考えとるだけやったら、やっぱ原始人や。
 坂本さんは行動した。それが大事やと思うで?」
「うちの隊長は『やらなきゃやられる。簡単な図式だ』って言ってました。
 それが戦う理由だって思って今までやってきました。
 坂本さんみたいなこと考えたことなかった…聞けて楽しかったです!」
「…隊長さんの言うとおりだよ。
 その方がいい。
 俺は考えるのが好きなだけで、それだけだ。
 戦闘では『やらなきゃやられる。だから戦う』で動くのが一番だと思う。」
「そうやな。色々考えて、思って、いっちゃんええと信じることをする。それでええんや。」

その言葉が、充斗の今の成保に対することでもあることを感じる…

「さて…じゃあそろそろ行くか。」
「…はい!」
「あの…俺も行っていい?あのドラマのきっかけ俺だし…」
「責任感じる必要はないけど…来てくれるんやったら来てや」

<つづく>

ここから先は

0字 / 1画像

¥ 100

読んでくださってありがとうございます!