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心の隙間から詐欺へ

始まりは10年前。
母は近所のよもぎ蒸しサロンに通い始めた。
デトックスできて体が軽くなるわと言って
喜んで通っていた。

ちょうどその頃から姉が引きこもり始めた。
一人暮らしをしたことのない姉は実家の一室に
引きこもった。

父は持病を持っていて、2日に1度は病院に行き、
注射を打たなくてはいけない体だった。
我が家は、小さい頃から父の機嫌を伺うようにして
生きてきたと思う。そんな父も歳をとるにつれて
丸くはなっていたが、父母姉3人が住む実家は
とても息が詰まりそうな空間だった。

父と姉は折り合いが悪くかなり距離をとっている
状態だったので、母がいつも真ん中に入り双方に気を遣っているのが手に取るようにしてわかった。

私は短大を出てからは、
ずっと一人暮らしをしていた。
この家族から逃れたかったのかもしれない。
常に人に気を使い、自分に自信など全くない。
そんな暮らしに疲れて早く一人暮らしをして自由に生きてみたいと強く思っていたので、私は一人暮らしをして正解だったと今でも思う。

話を戻そう。

母は常に父と自分の娘に気を遣っていることで、
仕事以外に安らぎの場所が欲しかったのだと思う。
そこがよもぎ蒸しのサロンだった。
そこのオーナーは、少しぽっちゃりした聞き上手の女性だった。母は、少しずつ少しずつ、自分の家族のことをそのサロンのオーナーに話し始めていた。
私も母が息抜きできる場所ができてよかったなぁと言う思いで見ていたので、怪しむことなどその時は一切なかった。

5年後、父が他界した。

母も精一杯看病したので、父に関しては悔いがないと言っていたが、姉は相変わらず引きこもっていたので、父の死後は母と姉の2人暮らしになった。
おそらくそこからだと思う。
母の言動が加速していったのは、、、。

父の残してくれた遺産は母に入ってきた。
我が家は裕福な方ではないが、貧乏でもないので、ちょうど中流家庭だったと思う。そんな父が母に残した遺産はそこそこあった。

そして母は、心の拠り所によもぎ蒸しのサロンのオーナーを選んでしまったのかもしれない。
そういうふうに誘導してきたとも言えるが、
そこは定かではない。。

私はと言うと、この5年間の間に結婚をして、
出産もして父の死後は夫の仕事で駐在として
海外に住み始めていた。
戸建てを既に購入してしまった後だったので、人に貸そうか迷っていたら、
母が
『姉を自立させたいからお母さんがあなたの家に住んでもいいかしら?』
と言ってきたので、私も姉がもう引きこもってから5年も経つし、動き出すきっかけになればと夫と相談して承諾した。私たちが海外に住むのは3年から4年と決まっているので、その間、母に戸建てに1人で住んでもらい、実家は姉が1人で住むと言う形になった。

母は、姉の生活費、光熱費、年金等を支払っていたので働くことをやめなかった。周りからは甘やかしてる突き放したら良いなどと言われていたが、根本の問題を知っている母にとってはそれができなかった。そう、それは姉は失明し始めている身体だった。母も同じ病気を持っているので、姉の気持ちがよくわかったのだと思う。なので、周りからは甘やかしてると言われても、母にはどうしても失明しかけてる姉をほっぽり出す事はできなかった。
だいぶ視界がぼやけてきているから、住み慣れた実家に住む方が姉にとっては良いだろうと言う考えで、母の方がまだ視力はあるので、母が新しい新天地、私たちが住んでいた戸建てに引っ越してきた。

母は仕事も続けてよもぎ蒸しサロンにも相変わらず通っていた。
5年も経てば、母も姉の引きこもりの事、自分の夫が亡くなったこと、夫の闘病生活での壮絶な介護を経験した事などを全てそのぽっちゃりしたサロンのオーナーに話していた。そして私たち夫婦が海外に住み始めたことも全てオーナーは知っていた。

そこからだ、そこからぽっちゃりオーナーが仕掛けてきた。
そこのサロンは、よもぎ蒸し以外に体に良いと言われている、健康食品、健康器具、スピリチュアル系のグッズなども一緒に販売していた。母もちょこちょこそこの商品を買って、私たちの誕生日プレゼントの時にプレゼントしてくれたりしていた。それまでは全然それでよかったと思っている。

ただ、ぽっちゃりオーナーはストッパーがいなくなったのを見逃さなかった。
ストッパーとは、父と私の夫のことである。
男の人の大半が、スピリチュアル系は信じていない人が多いし、物の値段など、そういったものを客観的に冷静に判断することができる。

そんな男性が母の周りからいなくなってしまった。
その時から始まった気がする。
もともと体に良いものと聞くと、とりあえず試したくなる母だった。
5年以上もサロンに通っていて家族のことさえ
何でも知っているぽっちゃりオーナーにはすっかり気を許していた。
オーナーが
『これは健康維持にオススメですよ。これはとても美容に効きますよ。アレルギーのお孫さんには特に効きますよ。』
母にとっては、魔法の言葉だった。

私の子供はアレルギーを持っていたので、余計この言葉が響いた。
海外に住んでる私たちにも、睡眠が1番大切だからとマットレスを購入してくれたり、アレルギーによく効くからと水素水を作る機器を購入してくれたり、とにかく日本から次々といろいろな健康グッズ、食品が送られてきたのが、私たちが海外に住み始めてからまもなくの事だった。
私は母の気持ちはがとても嬉しくて、でも、きっと高価なものだろうなぁとは思っていたが、感謝の言葉だけを伝えていた。
一方、夫はこんな高価なものを次々と購入している母が大丈夫か心配し始めていた。
誰から購入してるんだろう?
1台30万もする空気清浄機を、我が家に2台も届けてくれたりしてそんなにたくさん必要ないのに、、、。
と躊躇しているのがよくわかった。

それから数ヶ月後、私たちは日本に1時帰国することになった。その時に母がサロンでマッサージでも受けて、日ごろの疲れを取ってきたらと回数券で買っているチケットを1枚プレゼントしてくれた。
私が行ったときに、ロミロミのマッサージを担当したのがぽっちゃりオーナーだった。

ぽっちゃりオーナーは
『お母さんの健康と精神面は全部私に任せて、安心して海外生活を送ってね』
『大丈夫。
お母さんはあなた達のためにお金を使いたがってるのよ』
『○○さんだからこそ、
破格の値段でお譲りしてるの』
『カメ子ちゃんと私の仲じゃない、安心
して、お姉さんの事も任せて』

今思えば言葉巧みだし、私あなたとそんなに仲良くないけど⁈と違和感はあったものの、そこまで親しみを持ってくれるならありがたいとさえ思ってしまっていた。

そして、大事件が起きた。

ぽっちゃりオーナーが母に仕掛けてきた。

『○○さんだからこそ、破格の値段で、今のこのサロンを私のお客さんも引き継いでまるごとお譲りしたいの』
『同じサロンを持つ知り合いたちはみんな口から手が出るほどの条件だって言ってみんな欲しがってるけど、〇〇さんだから相談してるんだけどどうかしら?新しいサロンのオーナーにお姉さんを就任させたら、お姉さんも引きこもりから脱出できるんじゃない?』

母は会社勤めを姉がするのはもう難しいだろうなと思っていたので、突然サロンが自分の手に入り、そこで細々と姉が働いて自立できるならばとても良い条件だと思ってしまった。私の想像だが、もっと巧妙な言い回しで、母親にサロンの条件を伝えていたと思う。
なので、母は誰にも相談することなく即決した。
ぽっちゃりオーナーはさらにガードを固めて、サロンがうまくいき始めたら、海外に住んでいる私達にはサプライズで話せばさらに喜ぶんじゃない⁈と言われ母もそうしようとなり、私たちはしばらく母がサロンを購入したことを知らされなかった。

時は過ぎ、次の日本への1時帰国の時である。
姉は何年も引きこもりをしていたことで、人とのコミュニケーションに自信がなくなっていた。
ぽっちゃりオーナーが引き継ぎをすると言って
姉がサロンに行ったときには、なかなかぽっちゃり
オーナーが言うような接客ができなかった。
それをいいことに、ぽっちゃりオーナーからの反撃が始まった。

私はサロンのオープン1ヵ月前ぐらいにぽっちゃりオーナーから
『内緒にしといてね。実はお母さんサロンをお姉さんのために購入したのよ、でも、お母さんたちが言ってくるまでは内緒にしといてね』と
私にLINEをしてきたのだ。
それと同時にすでにぽっちゃりオーナーは
姉に対して不満を抱いていて、
内容は、お姉さんは営業の妨害をするし、お客さんと話し込んでしまい、もう一つの作業を忘れてしまっている。などなど。
私は姉がご迷惑をかけてしまい、申し訳なかったとメールをしたと同時になんで姉も母も私にサロンの事を言わずに黙っているのだろうと言う疑問があったものの、その時はオーナーをすっかり信じていたので、母、姉には知らないふりをしつつ夫に相談をした。

それを聞いた夫はすぐに私に問い始めた。
『いくらでお母さんはサロンを購入したんだろう?それからそのサロンは赤字続きでそれを引き継がされたりしてるんじゃないの?契約書や、そこら辺お母さんは確認したのかな?』

それを聞いた私も確かに一体いくらで購入したんだろうと純粋な疑問が湧いてきた。夫が言っていた
赤字続きでそのサロンがいらないから母に引き渡したんじゃないか?はさすがにないとは思いつつ、
ぽっちゃりオーナーにサロンに置いてある健康器具などは、そもそも元値はいくらだったのか、それを母はいくらで購入したのかと言うことを失礼ですが確認させていただいても良いでしょうか?と、LINEで聞いてみた。
サロンに置いてある健康機器1台とよもぎ蒸し1台の料金は母は既に支払い済みだった。

返信はこうだった。
『カメ子ちゃんからそんなことを聞かれてショックです。私は破格の値段でお母様にこのサロンの権利をお譲りしたのです。もちろんお姉様がサロンのオーナーを引き継ぎ軌道に乗るまでは私がサポートさせていただくと言うお話になっています。』

私は破格の値段🟰いっても500万くらいなのかな?とそれ以上、元値の事も契約書も追求できないまま、また時がたち、ようやく姉がオーナーとしてサロンを始めてからサロンの事を母から聞かされた。
サロンが新しくオープンといっても、ぽっちゃりオーナーが10年近く使用していた錆びれたサロンがあるだけ、さらに、蓋をあけてみたら1人もぽっちゃりオーナーのお客さんは引き継がれてなかった。
そう、当然サロンは閑古鳥だ。
その頃には、姉の引きこもりは10年近くは経っていたので、当然、姉には友達も知り合いもいなくなっていた。母は相変わらず1日おきに働きに出ている状態を変えなかった。となると、どうやって集客をすれば良いのだろう。私の友達をLINEで呼び寄せて数人、姉のサロンに友達価格で行ってもらった。
姉は妹の私が言うのも変だが、かなりの美人で私の友人も久しぶりに会った姉に対し相変わらず綺麗なお姉さんで対応も丁寧でリフレッシュできたよとお礼のメールをくれたくらい、姉は誰が見ても綺麗な人だし、繊細なゆえに引きこもってしまっている、部分もあった。ただ、10年近く引きこもっていると、姉妹での会話は、その頃にはほとんどなくなっていた。昔は自慢の姉だったが、10年引きこもってるうちにどうして働かないのだろう?母が働くのは姉が自立していないせいだなど心の奥で私が思っていたのと、腫れ物に触るかのように何を話していいかわからなくなっていた。母も姉とどのくらいコミュニケーションを取れていたのだろう。姉が本当にサロンのオーナーをやりたいと言って決めたことなのかな?など色々と疑問が残った。そのくらい私たちはお互いコミュニケーション不足になっていた。

それを全て把握してたのが、ぽっちゃりオーナーだった。その状態を思う存分利用されてしまったのだ。
と言うのも、母とオーナー、姉とオーナー、私とオーナーと3人に対して、ぽっちゃりオーナーは言いたい放題他の2人の悪口を言っていたのだ。そしてそれを私たちはお互い連絡をあまり取り合っていないというのを知っていたので、確認し合わないだろうと言うのも見抜いていた。

例えば、私に対しては
『お姉さんはこう言ってたわよ。かめ子は私が昔から綺麗だから、それをねたんでるの。だから、今回のサロンもねたんでると思うわ。』
と。それを聞いた時は腹が立ったし、本当に姉がそんなことを言ったのか、ぽっちゃりオーナーに確認したら言ってたわよと一言。私は10年も引きこもってる姉が自立をしてくれるなら、サロンオーナーとして新しい一歩を踏み出した姿はとても嬉しいことだったし、今さらお互い歳を重ねているのに、綺麗だからねたむなんて、あり得ないと、そんな事を言った姉にイラっとしていた。
でも、そう、それを、私たちは、お互いの胸に秘めて確認し合わなかった。当然、姉はそんな事は言ってなかったのに。
姉に対しては
『かめ子ちゃんが突然私に精神的に参るようなメールを長文でしてきて、本当に失礼な人だと思った、きっとあなたがサロンのオーナーになったことをねたんでもいるのかもね』と言っていたそうだ。

そんなこと全くないし、もし唯一挙げられるとしたら、夫に確認したほうがいいと言われて、以前
ぽっちゃりオーナーにLINEで確認した元値を教えて欲しい。契約書があるなら見せてほしいとメールした事を言っているのもしれない。

母にも
『あんなに仲が悪い姉妹は見たことがない』
などなど言っていたそうだ。

こうやって、私たちがお互いにぽっちゃりオーナーがこんなことを言ってたよと確認しない、できない仲なのを知っていて操られていたんだなぁと今は思える。

こうして10年かけて、ぽっちゃりオーナーが私たちを思うままに操り、最終的に母から絞り取っていた総額は2,000万を超えていた。

そうサロンをそのまま破格の値段で譲った。
とぽっちゃりオーナーがなんの悪びれもなく
言ったその金額だ。
この値段、どう見ても破格なんて言う人はいないだろう。私が後日、母から支払った金額を聞いた時は、目玉が飛び出るほど驚いた。
もう既に支払いは全て完了してしまっていた。
驚いたことに契約書も何もない状態。
最初は母を責めてしまったが、もうやってしまった
事だし、ぽっちゃりオーナーがうまいこと言っていたのも明るみにでた。

急いで私の友人でサロンをしている人、
契約書の専門家、弁護士に確認をしたら
口を揃えて
『やられましたね』
と、言われた。

そこから私たちは家族みんなで協力しないでどうやってこの問題に立ち向かう?ちゃんと家族会議をしようとはたから見たら遅すぎるだろうと思われることだが、3人は団結し始めた。

姉は10年も引きこもっているが、本が大好きなので、知識だけは莫大にあった。その姉からしてみたら、ぽっちゃりオーナーの言動は最初から不審な事だらけだったと。でも自分は母からお金を支払ってもらって、オーナーになってる立場で母に不審な点があると言う事はなかなか言えずにいたようだ。
姉はサロンを始めてすぐに契約書保証書引き継ぎの時に必要な書類等の要求を求めていたようだが、ぽっちゃりオーナーはお母さんに全部話してます。の一言で片付けてしまうので、それ以上追求できずにいた。

一方、母も同様で、姉の引き継ぎに対してこんなことをしてあんなことをして全く役に立ってないなどぽっちゃりオーナーに言われ、さらに、お姉さんはお母さんに口出しをして欲しくないと言っていると伝えられていたので(実際には言っていない)。
母は母で姉との間に溝がありつつ距離を置いていた。さらに契約書は姉に渡してるとまで、母には伝えていた。

実際に姉がもらっていた唯一の書類は納品書だけだった。納品書といっても、WordやExcelで簡単に作れるようなフォーマットで、ぽっちゃりオーナーが自分で金額なども入力して、いくらでも操作できるそんな不確かな納品書だった。

そして今、現在もサロンの家賃を姉は払い続けている。これも実は契約書など一切交わされていなく、名義人はまだぽっちゃりオーナーなのだ。

弁護士さんに相談をしたら、この家賃に関しては姉が払う必要は全くない。そしてサロンに置いてある健康器具に関しても、所有権がぽっちゃりオーナーのままなら売買が成立したことにはなってない。

今まで散々要求している契約書、健康機器の所有権は誰なのかこの健康機器の製造番号、製造年月日はいつなのかなどはぽっちゃりオーナーに姉がメールで問いただしても返信が全くない状態が続いている。

これは我が家で起きた出来事だが、このような案件は世の中にたくさんあるのではないかと思う。
優しいふりをして、面倒を見てくれるような素振りで近づいてきて、相手の弱みを握って、そしてその人との性格を理解して、絶対に文句を言ってこないと言うのも全て把握した上で悪を働く人がこの世にはたくさんいると思う。そんな心の優しい人の隙間に入ってくる悪魔がいると言うことを少しでも多くの人に知ってほしい。
母ももう少し気軽にいろいろ話せる人が周りにいれば違ったのかもしれない。こうした閉鎖的な世の中だからこそ、起きてしまう詐欺事件なのかもしれないがそんな悲しい人達を増やしたくない。
支払う前に、
契約書の確認。
少なくとも、数名に
書類を確認してもらう。

そんな当たり前のこともできないのか?と思う方もいるかもしれない。だけど、実際にいるのだ。
だから当たり前のことだけど、書きたい。
伝えたい。伝えたい。

そのお金は、母が父と何十年も働いて貯めてきた老後の資金だった。7040、8040問題が引き起こした詐欺事件だとも思う。

私達3人はこれからが勝負だ。











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