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愛するギャルに捧ぐ

私にとっての「かわいい」は、いつもギャルだ。美人なギャルが、たまらなく好きだ。

小さい時から安室ちゃんにひたすら憧れていたし、高校時代はカラオケでくぅちゃんばかり歌っていたし、テレビでみちょぱが小麦色の長い手足を見せていると「かわええ〜」と思うし、色々あっても変わらずユッキーナの見た目がめちゃくちゃ好き。

なんというかこう、「かっ、かわいい」とポッとする類のものでもなく、「かわいいぃぃぃ」と悶えるような感じでもなく、「かわええなぁ〜〜〜〜〜」と腹から声を出して唸ってしまう感じ。何かをねじ伏せてしまうような強い説得力が、ギャルにはあるのだ。


ギャルの定義って何なのか、ギャルっていったいどういう人のことをいうのか、と聞かれるとなかなか説明しづらい。けれど、私にとって「ギャル」とはこの人のことだ、と言える人はいる。


12歳の時、私は中高一貫の女子校に入学した。

中高一貫の魅力というのは、ただ単に中学から高校にエスカレーター方式で上がれる、ということだけではないと、私は思う。ピヨピヨの中学1年生が、高校3年生を身近に感じながら生活できる。これってすごいことだと思うのだ。

つい数日前までランドセルを背負っていた小さい女の子が、もうすぐ大学生になる一人の女性と同じ校舎に通う。廊下ですれ違い、体育室で見かける。一緒に体育祭に出場し、同じ校歌を歌う。そんな環境の中で、私は一人の先輩が大好きになった。部活の先輩。

その先輩は、ギャルだった。正真正銘の、ギャル。めちゃくちゃかわいい、ギャルだった。

校則がゆるい私服校だったというのもあり、髪の毛はプリン気味の金髪で、ウェーブっぽいパーマがかかったショートカット。超ローライズのブーツカットデニムに、お腹がちらっと見えるショート丈のぴっちりTシャツ。ブルー系のアイシャドウに大ぶりなラメをまぶして、涼やかな目元をしていた。肌ももちろんうっすら小麦色。日サロに通っていたのかどうかは、そこまで聞けるほど近い存在ではなかったから、わからない。

その女性らしい身体つきも、強烈に魅力的だった。中学1年生と高校2、3年生の女性の身体というのは、全く違う。身長や体重といった単純な項目ではなく、その身体つきがみるみるうちに変っていくのだ。

中学に入りたてで、ガリガリのきょんきょんだった私は、丸みを帯びていてたくましく大人っぽい先輩の身体つきをみて、少しドキドキしながら憧れていたのを覚えている。

同じ部活とはいえその年齢差はなかなかなもので、そう簡単に話しかけるわけにはいかない。同級生の間では「●●さんかっこいい」とひたすら話し、でも直接言えるわけもなく内弁慶にきゃーきゃー騒ぐ。憧れているんです、という熱視線だけは、静かに送っていた。

そんな私にとっての唯一と言ってもいいチャンスは、お正月だった。今はもう珍しくなってしまった「年賀状」のやりとりがまだ普通に行われていた時代、私が所属していた部活でも、部員同士で年賀状を送り合うのは普通のことだった。

こんなチャンスはない、と思い、ギャルの先輩に年賀状を書き、願いを込めて自分のプリクラを貼った。自分のプリクラを貼って送るだなんて今考えるとちょっと不思議だけれど、その当時はプリクラを送り合うことは普通だった。

先輩からのお返しの年賀状には、期待通り、先輩のプリクラが貼ってあった。あまりに美人で、あまりにギャルな先輩のプリクラ。めちゃくちゃめちゃくちゃかわいかった。本当にかわいかった。最高だった。その年賀状は、私の宝物ランキングぶっちぎりトップに躍り出た。

2年ほどそのやり取りが続いて、宝物は2つに増えて、先輩は卒業してしまった。今のようにSNSが発達していたわけではないから、それきり先輩の消息は知らない。


今思い返してみても、先輩はかわいい。私の脳内にいる「ギャル代表」の先輩は光り輝くほどかわいい。もうほんとに、めちゃくちゃかわいい。最強のギャルだ。

こうしてつらつらと書いてみると、見た目のことしか書いていないなぁ、と思う。髪の毛がどうとか、小麦色がどうとか、プリクラが、とか。

先輩は性格もきっと良い人だった。周囲にも慕われていたし、いつも豪快に笑う気持ちが良い人だった。でも、そこまで先輩の内面を知っていたかと言われると、疑問だ。内面なんて、よほど近くにいる人しかわからないものだろう。私にとっての先輩の魅力は、他でもなくその見た目だった。私にとっての青春時代の「かわいい」は、それだったのだ。

人は見た目じゃないとか、メイクがどうとかで人を判断しちゃいけないとか、あなたはあなたの可愛さがとか、ルッキズムだとか、多様性がどうとか、そういうのを全部承知のうえで、先輩はかわいかった。見た目が、かわいかった。


見た目のかわいさだけで終始する世界があってもいいと思っている。ルックスが好きだ。見た目がタイプだった。それでいい。大好きな見た目、というものには、内面がどうとか内側からでる魅力がどうとかを超える強烈な何か、があると、私は思う。

私の大好きだった先輩は、ずっと私にとって最強の「かわいい」だ。

Sae


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