僕がベンチャーキャピタリストになった理由
初めまして。山中貞正と申します。僕は、数年に一度、自分の想いや考えを文にし、僭越ながら、世の中に提唱したくなる衝動に駆られます。今がその時です。僕は今、「KSK Mafia」という投資ファンドを運営しています。2022年の12月に、サッカー選手の本田圭佑さんと一緒に立ち上げました。
KSK Mafiaは、本田圭佑さんの個人資産を運用して、学生起業家のスタートアップに500万円ほど出資する投資ファンドです。このように、お金のある個人や会社から資産を預かって、スタートアップに出資する投資ファンドは、俗に「ベンチャーキャピタル」と呼ばれています。略して「VC」です。
もともと僕は、芸能事務所に所属し、スターを夢見る少年でした。そんな僕が今、VCという金融やテクノロジーの猛者が集う業界にいるのには、僕なりの理由があります。日本を世界一の文化大国にするためです。VCには、産業を興す力があります。
VCとスタートアップ
そもそも、スタートアップとは「新しい技術やアイデアで、世界を変えようとする新しい会社」です。Apple、Google、Facebook、Instagram、LINE、YouTube、Netflix、Snapchat、Spotify、Tesla、Airbnb、Uber等の巨大IT企業が、スタートアップとして始まった会社の最たる例です。
スタートアップが、今日の世界を作っていると言っても過言ではありません。だから、世界中のお金持ちが「次なるApple」になりうるスタートアップを必死に探しているのです。ちなみに、お金持ちには、個人、会社、銀行、財団、大学、政府など、様々な種類があります。
しかし、お金持ちは、お金はあるものの、基本的に本業が別にあり、スタートアップを見つけるための時間や情報が乏しいため、プロの代理人に任せます。そのプロの代理人が「VC」です。お金持ちは、VCにお金を預け、スタートアップの発掘・出資・支援を任せるのです。
米国では今や、最もエリートな仕事は、投資銀行やコンサルではなく、VCです。米国のエリートがVCに流れる理由は、稼げるからです。VCは、世界を変えるような新しいスタートアップを生み出した暁には、その報酬として莫大な富が入ります。金融やテクノロジーの猛者が集うのはそのためです。
米国は、この仕組み「スタートアップエコシステム」が、世界で最も発展しているがゆえに、世界一の経済大国であり続けているとも言えるでしょう。米国のVCが絶えず、世界を変えるような新しいスタートアップに投資し続けることで、米国経済の新陳代謝が止まらないからです。
VCが「キングメーカー」とも呼ばれる所以です。米国のVCの大物は「経済の政治家」のような存在かもしれません。実際に、世界最高峰のVCとして知られるAndreessen Horowitzは、投資方針として「American Dynamism」を発表し、アメリカの国益に資するスタートアップに投資しています。
失われた30年
一方の日本は、世界のスタートアップ戦争で大敗を喫してる現状にあります、日本の経済が停滞し続け、「失われた30年」と揶揄されるのもそのためです。僕自身も、1995年に生まれましたが、これまでの27年間の人生において、日本経済の未来に希望が見えたことは、正直一度もありません。
この30年間の中で、いわゆる「IT革命」が起こり、世界中で多くの巨大IT企業が生まれました。Amazonが1994年、Netflixが1997年、Googleが1998年、Teslaが2003年、Facebookが2004年、YouTubeが2005年、Spotifyが2006年、Uberが2008年、Instagramが2010年、TikTokが2016年に生まれました。
日本ももちろん、この30年の中で、ただ黙っていたわけではありません。堀江貴文さん、三木谷浩史さん、藤田晋さん、山田進太郎さんをはじめとする、当時の若き起業家が立ち上がりました。明治維新ならぬ、平成維新です。しかし、結論、日本の志士たちは黒船に負けてしまいました。
ライブドアが1995年、楽天が1997年、サイバーエージェントが1998年、ミクシイが1999年、グリーが2004年、メルカリが2013年に生まれましたが、今日の世界の時価総額ランキングの上位に名を連ねる日本企業はありません。日本は世界のスタートアップに大敗しているのです。
日本が大敗した大きな要因として、日本のスタートアップエコシステムが出遅れたことが考えられます。特に、VCの仕組みが出遅れました。創業間もない何者でもない若き起業家は、世界を変えるためには、VCの存在が必要になります。なぜなら、VCは、お金持ちの資産を運用しているからです。
つまり、VCが出資した若き起業家は、成功を収めると、既存のお金持ちにも富が渡るため、権力者側からの反発が生まれにくいのです。堀江貴文さんも、VCが付いていたら、潰れていなかったかもしれません。日本は、VCの仕組みが出遅れたため、世界のスタートアップ戦争に負けているのです。
日本のスタートアップエコシステムは、未だ成功事例が生まれおらず、今現在においても日本経済のスタンダードになっていません。それゆえ、日本の資金と人材は、大企業に留まり、スタートアップやVCに流れていません。お金にならない限り、資金と人材の大移動は起こらないからです。
このままでは、日本は没落していきます。僕は、日本人として、悲しいです。あらゆる血と汗と涙の上で今に続く平和な社会を築き上げた先人たちのためにも、希望を持って生まれてくる子供たちのためにも、今を生きる僕たちは未来を変える勇気と覚悟を持つ理由があります。
日本のスタートアップエコシステムは、出遅れたものの、今日までに、志高きVCとスタートアップの先輩方が、バラ色の人生を捨ててまで日本の未来のために尽力されたこともあり、日本でもようやく土台が整いました。志高き先輩方には、感謝と尊敬の気持ちしかありません。
だから今こそ、その土台の上で、未来を担う僕たち若者が頑張る時です。僕は、才能や知能には恵まれない人生でしたが、「日本を良くしたい」という夢と志だけは、誰にも負けません。だから僕は、VCとして、日本の未来の基幹産業を本気で作りにいきます。令和維新です。
令和維新
僕は、日本が世界のスタートアップ戦争の中で戦うためには、世界の行く末を予測した上で、日本および日本人の優位性・独自性を鑑みて、世界で勝てる産業を見極める必要があると考えています。人と同じように、国にも、向き不向きがあります。
日本や日本人が世界で勝てる産業は、必ずあります。それも、一つや二つではないはずです。日本は、自分たち日本人が思っている以上に、世界有数の技術や資源に溢れた国です。日本には既に資産があるのです。僕は、以前から、日本が世界一だと信じてやまない産業があります。「文化」です。
日本は、世界でも有数の文化大国です。和食、旅館、工芸、神社仏閣などの約2500年の歴史の中で育まれた伝統文化から、漫画、アニメ、ゲーム、アイドルなどの戦後の経済成長とともに発展した現代文化まで、日本には世界に誇る独自の文化コンテンツに溢れています。
日本は「失われた30年間」の中で、GoogleやFacebookなどの世界を代表する会社を作ることはできませんでした。しかし、忘れてはいけません。日本は、この期間で『ワンピース』、『ナルト』、『遊戯王』、『千と千尋の神隠し』、そして『ポケモン』等、世界を代表する作品を生み出したのです。
会社は、時代の流れとともに倒産していく宿命ですが、作品は、いわゆるIP(知的財産)として生き続け、稼ぎ続けます。ミッキーやディズニーがその代表例です。歴史的に見れば、これほどまでに、尊いことはありません。日本のクリエイターは、日本の宝です。
また、文化は、国のソフトパワーとして、経済・観光・外交に多大なる影響を及ぼすため、波及効果は計り知れません。韓国では、政府が国策として文化を輸出しています。K-POPや韓流ドラマによって韓国の存在感や好感度が上がり、韓国旅行や韓国製品を好む若者が世界中で激増しています。
日本が、その独自の文化や、豊富な自然を活かし、フランスの観光客数を抜いて「世界一の観光大国」になることも夢の話ではありません。さらに、メタバース(仮想世界)が社会の中心になる未来において、漫画やアニメなどの日本の作品は、世界中で最も選ばれる「世界」になるでしょう。
しかし、日本は現状、文化のマネタイズに大きな課題を抱えています。クリエイターは、職人であり、良い意味で商人ではないからです。宮崎駿さん、山本耀司さん、NIGOさん、村上隆さんなど、日本を代表するクリエイターの会社が、度々存続の危機に陥るのもそのためです。
そのため、日本のクリエイターには、志高き優秀なビジネスマンが必要なのです。この点において見習うべき相手は、紛れもなく、西洋です。欧州は伝統文化、米国は現代文化のマネタイズに長けています。伝統文化ではLVMH、現代文化ではWalt Disneyが、世界一の会社と言えるでしょう。
日本においても、一人の志高き優秀なビジネスマンが出てきました。森岡毅さんです。彼は、2017年に刀という会社を創業し、現在までに220億円の資金を調達し、日本の文化のマネタイズに尽力されています。僕は森岡毅さんを強く尊敬しています。刀は日本一の企業になるかもしれません。
日本を世界一の文化大国へ
だから、僕はVCとして、日本の宝を国力に換えるために、文化のスタートアップに資金と人材を流します。そして、次なるDisney、LVMH、HYBE、Marriott、Sony、Nintendo、Epic Games、Netflix、Spotify、Appleを日本から生み出し続けることで、文化産業を日本の次の基幹産業にします。
僕は、人生をかけて日本のより良い未来を目指します。未来の子供たちが夢と希望を持てるように。年齢や国籍に関係なく、本気で「日本を良くしたい」と願う同志の方がいましたら、是非お話ししましょう。僕は、夢を夢で終わらせません。日本を世界一の文化大国へ。令和維新です。