「ファミレス行こ。上」の考察とか感想。

だいぶ前に読了していたのですが、なかなか文章化するのに苦労してしまい、今の投稿になります。

私の気付きとか、考察の様な妄想をだらだら書き綴ってゆきますので、未読の方はぜひ原作を読了してからこの記事を読んで下さい。その方が狂えます。

▼絵画のシミと聡実くんの心のシミ

聡実くんがドリンクバーのコーヒーを、ファミレスの絵画にうっかりかけてシミにしてしまう所から話が始まります。

おしぼりでゴシゴシしたところで落ちるわけもなく、しかし律儀にもバックれる事などもせず、聡実くんは「シミ汚れを落とす」事を目的にするかの様にファミレスでバイトを始めます。

シフトの度に汚れを確認しますが、身勝手な大人たちはその汚れの上に落書きまでします。大人であり子供でもある、大学生になりたてのアンバランスな精神状態で、その行動は怒りでも悲しみでもなく、疑問として映ります。

それは聡実くんの心のシミ=狂児と同じなのです。

ヤクザの狂児との付き合いなんてやめてしまえばいい。LINEだってブロックしてしまえばいい。なのに聡実くんは、やはりバックれる事も出来ずに、心のシミとなった狂児への想いと律儀に向き合い500円玉貯金をします。

狂児の腕に入っている自分の名前の刺青を消すためです。(恐らくそうなんだけど、そう言い切れないのが和山先生の怖いところですね)。

ちまちま500円玉貯金をするのに、質屋に入れれば大金になる狂児の時計を衝動的に鍋にぶち込む聡実くんは、もはや狂児に関する事で正常な判断ができなくなっています。


▼時刻の意味

「ファミレス行こ。」では、時刻というものがしっかりと描かれています。時系列を追いやすいというのもあるのですが、そこで一つ引っかかる点があったので挙げさせてください。

聡実くんがラーメン作るのにお湯沸かしてるとき、狂児の腕時計と自分のスマホを見るじゃないですか。そのスマホの時刻が1:44なんです。

惜しい事に、英語圏のスラングで143という数字は「I love you」を示すんですよ。

たまたまググったら出てビビったよね。



聡実くんがもし1分早くスマホを見て、時計を鍋にぶち込んでいれば、もしかしたらそこで一生のI love you が約束、立証されていたのかもしれない。
しかし、実際にはその1分のズレが2人の歯車が噛み合わない、その時点でのI love you のエンドは難しい事を指し示している。という事になるんじゃないでしょうか。

悲しみ。

狂児は聡実くんをヤクザの世界に入れたくないし、聡実くんは500円玉貯金が貯まればもう会うことは無いだろうと思っています。

しかし「例のシーン」で2人の情緒もオタクたちの情緒も、めちゃくちゃになります。


▼例のシーン「バックハグ」

やりおったー!!!!!!(慟哭)

狂児「……なに?」
聡実「……いや、確認」

このワンシーンで一度単行本を閉じた方、天を仰いだ方もいらっしゃると思います。私もです。

この「確認」には様々な意味が含まれていると推測します。

まず、「狂児という存在の確認」です。
普通なら出会わなかったであろう2人の関係性に、未だ名前は付いていないと思っています。しかし、その名前の無い関係性にも、ライターである岡田の登場で、決断を迫られる事になります。聡実くんの心中では、狂児との付き合いを終わらせる方に矢印が向いていました。

そして繋がるのが、「自分の心の確認」です。
やはり聡実くんはもう狂児を「愛してしまっている」ところまで来てしまったのではないでしょうか。

しかし、狂児の心はどうなのか?
狂児も聡実くんのことを愛しているが、自分の立場、取り巻く環境、様々な要因がそれをNOとし、名前の付かない関係をただ受け入れて、去る者を追わないスタンスでいるのだと思います。

だって、狂児ならいつだって聡実くんを攫うことができますからね。

しかし、あのバックハグは予想外の事態だったのではないでしょうか。
「あら聡実くん。甘えてん?寒いんか?」と、いつもの調子で茶化す事もできず、「……なに?」と返し、夜の街に消えてゆく聡実くんの背中を複雑な表情で見送ることしかできません。

推測になりますが、このバックハグは衝動的なもので、聡実くんの「本心」が現れた行動だと思っています。

恐らく後々聡実くんは、この自分の行動に疑問を抱くことになるでしょう。先程記した様に、聡実くんのアンバランスな、成長過程にある精神では、この行動に対して「どうして僕はあんなことを…。」と思い詰める事でしょう。

この自分の心の確認は「無意識」あるいは「衝動的」に行われたものだと思います。

▼狂児と聡実くんの未来は?

幸せになって欲しいですね。
ただ、その幸せが「2人で」の幸せなのか、「個々人で」の幸せなのか、それは和山先生の手に委ねられています。

一般的にヤクザと大学生の付き合いなんて、危なっかしくて見てられません。しかしこの「ファミレス行こ。」という漫画を超えたヒューマンドラマでは、オタクは何としても2人が、2人で、幸せになって欲しいのです。

そうしてこんな支離滅裂な文章を書き、頭の中をぐちゃぐちゃにされながら、オタクは下巻の発売を待ちます。

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