センチメンタルはがねのメンタル
part43。
昨晩突然親父との電話で、
相続の配分とか決まって色々話が進んでたんだけど、親父の実家であり俺の本籍地、曾祖父の代に建てられた家屋の解体が始まっているとの情報が入った。
別件で通話してたんだけど、
「そういえば全然違う話で大した話じゃないんだけど~」
と振りがあった上でその話を聞かされた。
いやいやいやいや別件で電話したけどそれこそクソも大した話じゃない件で、そっちの話の方が遥かに大事だろうよと。
親父からしたら産まれた時から住んでて、母親と出逢い同棲するまでずっといた、The 実家だ。
俺の親父の悪い癖なんだよな。
そういう変なとこまでカッコつけて肩肘張って無理をする。
昨晩その話を聞かされた時は俺にとっても爺ちゃん婆ちゃんの暮らしてた家だし、ものすごく動揺した。
とりあえず分かったよと電話を切って、ベッドに入りながらその土地での幼い頃からの記憶を思い出していた。
思い出せば出すほど、分かったよで済ませていいわけが無いだろと思って、今朝6時頃親父に電話をした。
仕事の都合で同じ北海道とは言え親父が住んでるのは車で4~5時間かかる離れた土地だから、
解体のペースがどれくらいかとかは素人だから分からなかったが、恐らくあっという間だろうなと思ったからだ。
親父が次にこっちに帰ってくるのが来月の上旬、下手したら更地になってるかもしれないと思った。
「おはよう、どうした?」
と親父はもうジジイなので朝4時半とかには目が覚めることを知ってたから当然出た。
俺は思ってることを素直に伝えた。
男同士だから照れくさいとかそんな事はどうでもよかった。
感傷的な気持ちに浸っても仕方の無いことだからと昨夜の電話で親父は口にしていたが、
自分の本当の気持ちに蓋するのやめようぜって。
人間には感情をしっかり吐き出さなきゃいけない場面てのがあると俺は思ってる。
近しい人が亡くなった時なんかがいい例だな。
そんな時は目が潰れるくらい腫れようが、枯れ果てるまで涙を流すべきなんだよ。
そこで無理に感情を殺したら、後々とんでもないシワ寄せがやってくる。
後悔ってやつ。
それは出来ることならしない方がいい後悔だ。
だから恥ずかしかろうがなんだろうが、しんどいと思ったら俺でも妹でもいいから、必ず電話してきてくれと、必ず吐き出してくれと。
涙してたのか震える鼻声で分かったと返事が返ってきてとりあえず通話を切った。
そこから最低限の身支度をして俺は家を出た。
取り壊し中の現場に向かった。
親父の実家は土地内に計3軒家が建っていた。
2軒は借家だった。
その2軒の借家はもうほぼ完全に取り壊しが済んでいた。
そして親父の実家の棟は、右半分がもう壊し終わっていた、そんな状態だった。
俺もセンチメンタルになってうるっとしながら、
その様子を数枚の写真に収めた。
自分と、今すぐは帰って来れない親父の為に。
帰り道にLINEで文章と共に撮った写真を送信した。
「やっぱりショックだな…」
と返信が来た。
それでいいんだよと思った。
俺の親父が男としてカッコつけるべき時のカッコつけ方がカッコいいのは俺が1番よく分かってる。
でも何もかもカッコつけてたら壊れちまうからさ。
そうだよな、つらいよなって。
わざわざ朝早いのにありがとうなと礼を言われたが、
俺は当たり前のことを、当たり前にして欲しかっただけだから、俺にはこれくらいしか出来ないからさと返した。
みんなはちゃんと哀しい時とか、感情をしっかり表に出せてるか?
絶対出せよ?
どんなにカッコ悪くても、どんなに不細工でもいい。
後になって自分の首を絞めないように、必ず吐き出せ。
絶対だぞ?
ちょっと今回は長くなったけどこの辺で。
今日のまとめ。
『哀しみを溜め込むことそれ即ち心に毒素を溜め込む事也。』
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