ライブレポ|ハッピーポンコツ(P青木ひとり生誕祭「ポンコツの日!2023 ~ファイナル~」 6/3)
青木勉(57):株式会社エイティーフィールド/有限会社ロックエージェントジャパン 代表
”BAYCAMP”やこの”ポンコツの日”などのライブやフェスの企画のほか、東京初期衝動や忘れらんねよなど色んなバンドのスタッフとして地方、さらには海外のライブまで同行して前説やダイブしたメンバーの戻しなどもしており、その行動力から本当に会社の代表なのか、そして今年57歳なのか疑問に思うほどだ。
しかしその一方で、今日のタイムテーブルも含めライブ情報などの発表がギリギリになってしまうなど”ポンコツ”な面もある。
そんなバンドのファンからも愛されている名物プロデューサーの生誕祭が、渋谷Spotify O-EASTにて開かれた。
P青木ひとり生誕祭「ポンコツの日!2023 ~ファイナル~」
会場のSpotify O-EASTの入り口には、バルーンに囲まれたATFIELDの垂れ幕と”ポンコツの日”の公式認定証、青木さんの写真が飾ってあるほか、お花まで送られていた。
開場の13:30となり入場が始まり番号順に呼ばれ、フロアのある2階へと上っていく。スタッフの方にチケットの確認してもらい、リストバンドと青木さんのイラストが描かれたビックリマンシール風のシールが配られた。
フロアへ入りステージを見るとまず目に飛び込んできた「ポンコツですが。なにか。」と描かれた幕。さらには"ハッピーポンコツ"や"らぶりありてぃ"など青木さんとゆかりのあるバンドの曲が会場内では流れていて、すでにお祝いムードが広がっていた。
開演時間の14:00になると本日の主役 青木さんが隣のサブステージに登場し、いつものように前説が始まる。注意事項などの諸々の説明も終わり、いよいよライブスタート!と思いきや、なんとここでオープニングアクト代わりの青木さんによるひとりカラオケ大会が始まった。今日出るバンドやゆかりのあるバンドの曲を歌うのかと思いきや、歌われたのはマカロニえんぴつの"なんでもないよ、"と、Vaundyの"怪獣の花唄"というまるで今日のライブとは正反対な選曲。特に"なんでもないよ、"にいたってはリズムが合わなかったという理由で、2番に入ってからもう一度歌い直すという”ポンコツ”を発揮していた。会場からは笑い声が上がっていたがそれでもお客さんは手拍子を欠かすことはなく、お客さんたちの青木さんへの愛を感じた。(ちなみにこの日のライブで唯一時間が押したパートでもあった)
前説とカラオケ大会も終わり、今度こそライブのスタート。1バンド目は超能力戦士ドリアン。ドリアンを初めて見た2月のBAYCAMPのときにも思ったが、自分たちからノリや勢いを作ることができる、まさにトップバッターにはもってこいのバンドだ。Vo.おーちくんがゴリラの着ぐるみを着て、コールアンドレスポンスならぬ”ドラミングアンドレスポンス”のある"ゴリラのドラミングーチョキパー"から始まり、メンバー紹介も兼ねた"いきものがかりと同じ編成"と2曲続けて演奏。その後のMCで、青木さんの誕生日を祝いながらもおーちくんが「青木さんが最初歌うこと聞いてなくて、"怪獣の花唄"歌うなら僕らも恐竜あるからそれ1曲目にしたのに」と、冒頭のカラオケ大会のことをイジり、会場では笑いが起こっていた 。
お客さんがそれぞれA・O・Kのポーズをとり、前日に作った青木さんのパネルでIに見たて、AOKI(青木)を表した新曲(?)の"P青木"や、その青木さんのパネルをジェットコースターの安全バーにした”ジェットコースターソロ”のある"おいでよドリアンランド"など、初めてドリアンを見た人でも楽しめる曲、そして楽しむための振り付けの説明も欠かさず、最後の"焼肉屋さんの看板で牛さんが笑ってるのおかしいね"が終わる頃にはフロアも温まっていて、トップバッターの役目を果たすどころかそれ以上のことを成していた。
そして、おーちくんがライブ中ずっと「みんなに楽しんでもらいたいから(振り付けを)無理してやらなくていい。できる人だけで大丈夫。」と言っていた。これは言っているときの眼やライブでの様子を見れば煽りとかではなく、本心で言っていることがわかる。青木さんもその魂に惹かれたのだと感じ、(変わらないとは思うが)そのスタンスのまま突っ走っていってほしい。
超能力戦士ドリアンの出番が終わりタイムテーブルを見てみると、「ポンコツの日 SP」と書かれていた。何が始まるのか気になっていると、どこからか青木さんの放送が入り、2020年にオンラインで開催されたポンコツの日で公開された、新しい学校のリーダーズやリーガルリリーなど色んなバンドから届いていた誕生日メッセージ動画が流されていた。
メッセージ動画も終わり、メインステージでは次のI'sのセッティングが始まっていた。セッティングが終わりかけのころ、ステージに青木さんが現れ、それを見たGt.中山卓哉が「歌います?」と聞き、スピッツの"チェリー"を演奏し始めた。すると青木さんが歌詞を調べ歌い始め、冒頭のカラオケ大会の延長戦が行われた。
そんなこんなでI'sのライブが始まった。Gt.中山卓哉、Ba.キッチン前田、Dr.畝狭怜汰の3人が登場したあと、フリフリのついた白いシャツに黒のネクタイ姿のあのちゃんが現れた。ギターを肩にかけ"アンダーすたんど-You!"へ。途中のMCで誕生日を祝いつつ「こんなに大きくなってー」とテレビ見るあのちゃんの姿を見せた。「子供みたいでさー…」と続くと、「お前が言うなよ!」とメンバーにツッコまれながらも青木さんの誕生日を祝っていた。"DON'T COMMIT SUICIDE"ではステージを飛び出しフロアの柵に乗りフロアに飛び込んでいき、"はっぴーえんどろーる"ではダイバーも発生するほどのアツいライブで、今日一の盛り上がりを見せた。
ライブを見るまではテレビやCMなど”タレント”というイメージが強かったあのちゃんだったが、ライブでギターを弾いて歌っている姿はテレビでの姿とは全く違っていて、歌やギターの上手さにも驚いたが、それ以上に感じたのはライブでの表情や様子だ。決してあれは演じて出てくるものではない、心の底から出てくる感情が籠っていて、紛れもなく"バンドマン”の顔をしていた。
I'sの演奏が終わった数分後、サブステージでは次の愛しておくれがセッティングをしていた。Gt.Vo.中山卓哉はI'sから続けてのライブのため少し慌ただしいながらもセッティングが終わった。そのままリハに入っていくのだが、サブステージながらもメインステージに引けを取らない数の人が集まっていて、盛り上がりも物凄かった。
そうして始まった3バンド目の愛しておくれ。リハーサルからの勢いそのまま"ユー・アー・ノット・アローン"、"サラウンド"と続けて演奏し、MCに入った。MCでは「GOING STEADYとかサポートしてたって聞いて『すげー!』って思って、そんな青木さんにグッバイフジヤマの頃にCreepy Nutsとの対バンに呼ばれて、1曲目演奏したらすごい盛り上がりで、そのまま2曲目にコールアンドレスポンスのある曲をやったらシーンとしてて…、今でも忘れません(笑)」と青木さんとの苦い思い出を語った。そんな思い出とともに"ひとつになれないけものたち"、"ダーリン!"など、グッバイフジヤマ時代の曲を演奏した。"チェリッシュ"ではギターを置いてフロアへダイブし、サブステージながらもこの日一番の盛り上がりを見せていた。青木さんへのお祝いと感謝の気持ちをライブで表した。
愛しておくれの演奏が終わり、メインステージに目を向けるとすでに東京初期衝動がセッティングを始めていた。愛しておくれの出番の間にセッティングを終わらせていた様子だったが、まれちゃんの機材が不調らしくセッティングに手間取っていた。マイクテストも含めなんとかセッティング完了しリハへ。演奏されたのは"STAND BY ME"。実は、トキョショキを最後に見たのは417の日(お布施回収ライブ)以来で、今日までの間にしーなちゃんとしても、東京初期衝動としても色々なことがあり、正直気が気ではなかった。しかし、いつも元の歌詞をアレンジして歌っている「ここでつまずくなよ 東京初期衝動」というセリフ。思わず涙が出て、少しだけ荷が軽くなったような気がした。時間の都合からワンコーラスで終了し、お客さんに挨拶をして舞台袖に捌けていった。
そしてトキョショキの出番直前、舞台袖から円陣を組んで掛け声を出しているのが聞こえた。ライブを見るまで不安で仕方なかったが、この声が聞こえたお陰で不安が和らいだ。
(余談だが、愛しておくれ→東京初期衝動というGOING STEADYつながりの流れが、個人的に「さすが青木さん!」と感じた)
照明が暗くなりいつものSEが流れ出し、メンバーが登場。なおちゃんのスティックカウントから始まる"Becauseあいらぶゆー"からライブがスタートすると、そのまま"ベイビー・ドント・クライ"、"流星"と続けて演奏。ここでMCに入ると開口一番しーなちゃんが「おととい解散するはずだった東京初期衝動でーす」と解散未遂をネタにし、フロアからは少し笑いもあったが、それと同時に生の声を聞けたことによる安堵からか拍手が上がった。また、青木さんの誕生日を祝いつつも「ポンコツの日お客さん埋まらなくて今年がファイナルだそうです。」「次は新代田FEVEぐらいから頑張りましょー」としーな節でフロアを沸かせた。振り付けのある"マアルイツキ"や"新曲"(恋せよ乙女)、"高円寺ブス集合"とフロアの熱を上げ、その熱量のまま終盤へと向かい、"再生ボタン"や"ロックンロール"ではダイバーが出るほどだった。"ロックンロール"の最後の1音を鳴らす前、しーなちゃんがマイクを通さず大声で「青木さん、誕生日おめでとうございます!」と祝いライブを締めた。と思いきや、しーなちゃんがスタッフに「まだ時間ある?」と聞き、もう1曲やろうとしていた。フロアから「時間あるよー!」と、ファンの方から声が上がっていたが、時間がなく残念ながらここで終了したが、これぞトキョショキのライブだなという雰囲気で終わった。
実は、しーなちゃんが前日の夜に扁桃腺炎で熱が出てしまい、点滴で無理やり熱を下げてこの日のライブに挑んでいたのだ。そのせいか、いつものようにフロアへダイブしていたが、疲れているように見えた。しかし、ライブ自体は楽しんでいて、それは表情を見ればすぐにわかった。さらに、他のメンバーも見てみるといつもより表情が豊かだったように見え、普段あまり表情を変えないからか、まれちゃんが特に表情豊かだったような気がした。それもこれもメンバーと正面からぶつかり合えたお陰だと思う。この経験さらに躍進していつかZeppステージに4人が立つ姿を見たいと強く思った。
ライブ後、物販に向かうとすでにまれちゃんとあさかちゃんが立っていて、ドリアンがライブで使っていた青木さんのパネルと写真を撮っていた。そのまま物販を買って2人からサインをもらったり、フォロワーに挨拶をしたりと休憩がてらのんびり過ごしていた。
時間を見てみると19:20。あっという間に残り2バンドとなっていて、サブステージでxiangyuが演奏していた。ステージを見てみると青木さんが上がっていて、言われるがままピースサインを寝かせて前に刺すザリガニポーズをして"ZARIGANI"という曲を演奏していて、たどたどしくノッていた青木さんが少し面白かった。
xiangyuが終わるとメインステージにかかっていた幕が上がり、忘れらんねえよがセッティングとリハをしていた。大トリということもあり、たくさんの人が集まっていた。
照明が消え、いよいよ大トリの忘れらんねえよがスタート。入場SEには"リンダリンダ"が流れていて、全員登場したあとGt.Vo.柴田さんが「みんなで歌いましょう」と、みんなでワンコーラス歌ってからライブが始まった。MCでは「昔、THE BLUE HEARTSとかやってたんですよ」と、青木さんは実は凄い人(本当に凄い人)という紹介もしつつ誕生日を祝った。途中の曲に入る直前、MCをかっこよく決め、カッティングをして曲に入ろうとしたが、スイッチャーを切り替えミスで音が出ず、綺麗に締まらず、まさにポンコツの日だなと感じた瞬間だった。
ライブも終盤に差し掛かったところで演奏された"Cから始まるABC"。忘れらんねえよで初めて聴いた曲で、おそらく一番有名な曲だろう。フロアからは「うおー!」と声が上がり、それを見たからか演奏中の柴田さんもとても楽しそうだった。
ラストの曲となった"忘れらんねえよ"では青木さんもステージに上がり、お客さんがスマホのライトを付け、みんなで振りながら歌った景色は最高の誕生日プレゼントになったことと思う。
アンコールに入る前、柴田さんがMCで「青木さん、どうか元気でいてください。そして、またBAYCAMPにも呼んでください。」と笑いも交えつつアンコールの"世界であんたがいちばん綺麗だ"
すべてのバンドの出番が終わると青木さんが登場。締めの挨拶へと移った。今日出演してくれたバンドへの感謝やこの8年の思い出と苦労を綴り、最後には「ポンコツでどうもすみませんでした」と誕生日にも関わらず謝罪で終わるというなんとも不思議な終わり方をした。そして、挨拶が終わるとハッピーバースデートゥーユーが流れだし、忘れらんねえよの柴田さんから青木さんのイラストが描かれたケーキが送られ、最後にお客さん含め全員で写真を撮って幕を閉じた。
今日のライブで青木さんがバンドを見るとき、舞台袖から見ているときもあったが、フロアに降りてきて見ていた姿をよく目にしていて、ちゃんとお客さん目線でも楽しむ姿がとても素敵だった。ポンコツの日は今年で一旦ファイナルとはなったが、BAYCAMPや所属バンドのライブなど、”楽しい場所”をずっと提供し続けてほしいと思った。
最後に、青木さん誕生日おめでとうございます。