アパレルで、デザイナー/MD/経営者をやってた僕が考察してみた、2021年のアパレル業界どうなるの? 予想•序
緊急事態宣言でスタートした2021年
アパレル業界にとって、冬のセールもまだまだ始まったばかりというさなかの2021年1月8日、首都圏は緊急事態宣言が発令された。
これからセールのお買い物どころか、これから成人式、これから心新たに新年は頑張ろう、これから、、、これから、、、という我々の心はまた目には見えない渦に巻き込まれていく事になる。
冬のセールは、アパレル会社によっては年間売上の10%近くを取れる、春の新シーズンを迎える前の最後の大きなチャンスだ。
まして昨年のコロナ禍で苦い汁をすすりながら、在庫レベルを下げ、売上を落としてきた後では、期待も大きかったはず。
そこに今回の緊急事態宣言。
首都圏から発令された、そのどこかあやふやな、そして腹の底からは理解しかねるルールは、中部、関西、九州まで、じわじわと範囲を広げた。
百貨店は早々に閉店時間を切り上げを決め、売る側は店舗スタッフの確保もままならない。
アパレル会社は新年早々、さっそく出鼻をくじかれた。
2021年のアパレルは果たしてどうなるのか?
アパレルでデザイナー、MD、経営者(時には同時にその全てを!)経験してきた僕が、考察してみた。
今回は、この春に突入する前の時期の予想として、”序”としてみる。
春夏であふれた在庫が、負の渦をつくる
アパレル業界の全体感を時系列を追って考えてみる。
まず2020年夏物のビジネスから。
昨年春の緊急事態宣言を受けて、アパレル各社は夏物在庫をキャンセルが間に合うだけ、できるだけ減らした。
各社とも4月が、このコロナ禍で、しかも緊急事態宣言下で、どれだけ売上減になるのかという実感が湧いた時だったろう。
日本のアパレル会社は、だいたい3ヶ月前後のスパンで企画から納品までやろうとするので、7月8月以降は止められたはずだ。
だから、通常体力のある所は7月8月の夏のセール期間でも新商品を投入するが、20年は一斉にそれが止まった。
通常であればアウトレットに回るような商品も、プロパー店舗のセールでよく見かけた。
夏の攻め方は確実に今までとは違って、後ろ向きな物になっていた。
アパレル上場企業/7割7月全店売上前年割れ
帝国データバンク調べ
春の緊急事態宣言が明け、感染者のペースが減少に転じたように見え、政府が待ってましたとばかりに矢継ぎ早にGoToを打ち出して経済の再興を図る、と言った中、アパレルの2020年夏のビジネスはまだまだ渦の中でもがいていたのだ。
在庫を抑え、コストを減らす。
だけど同時に売上も減った。
コロナの渦なんかよりもハッキリとわかる、減収増益の負のスパイラルへの入口であった。
夏の在庫発注はなんとかギリギリ止まった、という会社は、来たる第2波に備えて、秋冬の発注も同じく抑えにかかっただろう。
夏の発注が止まらなかった会社は、益々焦り、意地でも秋冬の発注を止めにかかったと思う。
発注を抑えたはずの2020年冬物の在庫があふれてる
かくして、20年秋冬は、在庫の観点から言うと、大きくは
1、夏の在庫を減らせて、秋冬の在庫も減らせた
2、夏の在庫を減らせず、秋冬の在庫はカナリ減らせた
という2パターンのスタートであったと推測される。
1の場合でも、短い秋に端境商品をタンマリと積む余裕などなく、実にアッサリとした少ない品番数、そして在庫の深さであった事だろう。
2の場合はもう目も当てられない。夏の在庫を秋まで売り、冬をさらに削る、という事が起きたはずだ。
どちらにしてもお客様は買い物を楽しめない。
コロナ云々を置いといても。
という訳で、総じて冬物の在庫は低かった。
売上の減を予測して在庫を減らすという行為においては、ほぼその通り、売上は下がるものだ。
減収増益、または減収減益だ。
2021年秋冬のビジネスにおいて、百貨店や量販店、大手アパレルは自ら引いた減収への線路道を慎重に走り、想定通りに売上減のゴールへと到着した。
日本百貨店協会/11月外国人売上89.3%減、10カ月連続マイナス
アパレル上場企業12月度月次
全店100%超 39社中11社
全店平均90.6% 既存店平均90.5%
TSIホールディングスは、12月の株価が37%まで下落するという、まさにフリーフォールの状態。
そして、この21年明け早々に、ただでさえ1年間ずーっと真っ逆さまに落ちている感覚だったのに、さらに渦の底の方へと引き摺り込まれる。
年明け早々の緊急事態宣言発令だ。
マーケットのリアリティを見てみよう。
人々の購買意欲はもちろん低い。
それどころじゃないのだ。
もしくは、使うお金を抑える。
仕掛ける側はどうか。
アパレル各社が減らしたはずの冬の在庫は、予想を下回る売上を連発する会社が増えて、市場は見るからに在庫がダブついている。
コロナのせいで、、、とか言う前の、物があふれていた頃と変わらないな、というのが買う側の実感だったと思う。
そうだった。
コロナが世界の脅威になるずっと前からアパレルはもがいていたのだ。
なので、このようにコロナ禍でなす術なく落ちていく図は理解できる。
オンラインの成功はコロナ禍でも好調を作るか
それでもコロナ禍、オンラインをしっかりやっていたところは堅調だった。
ユナイテッドアローズの場合、緊急事態宣言発令後の週末に公式アプリのユニークユーザー数が100万を超え、実店舗を開けることができない危機的な状況下でも、情報収集や購買のチャネルとしてアプリが有効に機能することを証明している。ユニクロは、アプリにおけるコンテンツマーケティングを抜かりなく実施。自宅にいる時間を快適に過ごすための特集コンテンツを発信し、顧客に適切な情報を発信することで購買単価の向上につなげている。
UNIQLO、アローズやベイクルーズはその代表例だろう。
若者の独壇場かと思われていたオンラインは、コロナウイルスの蔓延とともに、中高年にまで波及していった。
中高年がお金を使う目的の上位であった旅行や外食が閉ざされた、というのもアパレルのオンラインビジネスを押し上げただろう。
アパレルにおけるオンラインビジネスは、このコロナ禍で確実に世代間格差を減らしたのだ。
それこそが、アパレル業界でデザイナー、MD、経営者(時には同時にその全てを!。。。しつこいですね。。。)経験してきた僕が思う”2021年アパレル業界どうなるの?序”の答えだ。
アパレルにおけるオンラインビジネスの世代格差がなくなった
ではそれはどういう事になるのか。
それはまた別の記事で書こうと思う。
Thanks, and good luck.
Sadao
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