【レビュー】さだまさしコンサートツアー「さだ丼〜新自分風土記Ⅲ〜」【ネタバレなし】

さださんがトークで「ワクチン接種した人〜」って場内に声をかけたら、半数以上の人(推測)が拍手で応えていて、さだまさしファンの年齢層をあらためて痛感させられました。

さだまさしさんのコンサートは、その客層が故にすでに会場内で集団免疫が出来上がっている、世界で一番安全安心なコンサートなのでは、と感じました。

座った列の前後左右を見渡すと皆年輪を重ねてきた「おばあ様」の方々で、オセロのルールに則れば必然的に私もおばあさんである、そんな空間でした。

コンサートに参加した感想を書きます

「さだ丼〜新自分風土記Ⅲ〜」ツアーの初日(2021年6月12日 川口リリア)に参加してきました。

毎度さださんのコンサートの参加記みたいなものを書き残そうかとも思っているのですが、普段のコンサートツアーはセットリストのネタバレを恐れてリアルタイムでは記事を書くことははばかられ、その結果いつのまにか忘却の彼方に過ぎ去るのを常にしていました。

今回は、先行して発売されたセルフカバーアルバム「さだ丼〜新自分風土記Ⅲ〜」の曲順通りにコンサートを行うことが事前にアナウンスされているので、セットリストのネタバレを気にすることがないので書いてみます。

とはいっても、さださんのコンサートは歌だけでなく「トーク」についても同じかそれ以上に楽しみにしている人も多いので、あまネタバレに繋がりそうな内容は深堀りして書かず、アウトラインと自分自身の感想だけ書きます。

メンバーについて

まずメンバー構成。バックバンドはいつもどおりの「さだ工務店」の面々で、2020年のツアーと同様にドラムの島村英二さんを加えた8人構成でした。
・ピアノ:倉田信雄
・アコースティックギター:田代耕一郎
・パーカッション:木村”キムチ”誠
・チェロ:徳澤青弦
・バイオリン:藤堂昌彦
・オーボエ:庄司さとし
・ベース:平石カツミ
・ドラム:島村英二
・(フロントマン、歌、ギター、バイオリン:さだまさし)

さだまさしを知らない知人友人などにも「森山直太朗の”さくら”でピアノ弾いてた人」「”ラーメンズ”や”君の名は”の音楽担当してた人」「題名のない音楽会によく出てる人」等の言葉で通じる面々で構成されている、国内屈指の実力派集団だと思います。
あまり話題にならないのは、J-POPの流行歌手で、こんなクラシカルな編成をしているバンドが他にほぼ存在せず、競争相手・比較対象がいないからでしょう。
(極めてクラシカルなサウンドを志向している最近の鬼束ちひろが、比較的方向性が近いでしょうか。チェロを、さだまさしと縁の深い結城貴弘さんが担当している、というのが不思議な縁です)
今回のツアーでは、普段の担当楽器とは違う楽器を各人が演奏したりもしていて、サウンドも普段よりも厚みがあるように感じられました。

歌・演奏について

個々の楽曲については、「さだ丼」の通りの曲目曲順、アレンジもかなりアルバム版を踏襲しているので、あまりコメントすることは無いです。
「北の国から」「案山子」「無縁坂」「道化師のソネット」「関白宣言」等々の誰でも知っているヒット曲の数々が織り交ぜられており、初心者でも参加しやすい構成だと思います。僕も、大好きなのだけど最近コンサートであまり聴かなかった「道化師のソネット」「しあわせについて」が生で聴けたのがとても嬉しかったです。

歌や演奏については、コンサート初日ということもあり、緊張も感じましたし、アレンジがまだバンドとして落とし込みきれてない感じは少ししました。まあこれは、いつもどのツアーでも同じ感じで、これから数十回公演を重ねていくことで洗練されていくのも楽しみです。

今回は、「さだ丼」の曲を曲順通りやると宣言しつつ、ツアー中に新曲が出来上がったら都度混ぜていくということで、同じツアーでもアレンジも歌う曲のセットリストも前後半で様変わりする、そんな異なる顔を公演の度に見せてくれると思います。
(だから、さだファンは、同じツアーでも1回行けば満足、などということはまず無いです。罪深き沼の深さ。)

トークについて

「今回は2時間で、できれば1時間45分で終わらせるように言われています」「さだ丼のCDの収録時間が60分くらい。なので45分もトークができます(笑)」といつもの名調子でトークを語るさださん。今回も大ネタのトークが披露されてましたがそちらが何なのかはネタバレ防止のため割愛します。

一点、さださんもワクチンを接種済みのようで、そのエピソードを話してました。「接種後は平気だったけど、2日後くらいに痛みが来た」「今日も演奏中腕が痛くなって、歌詞を忘れたり演奏止めたりするかも(笑)」といつもの軽口を叩いていましたが、まさかあの曲であのような出来事が待っていようとは…(その日、場内最高の盛り上がりを見せました。)

会場について

さださんのコンサート会場は、コロナ対策が万全で、理想的な対策をしている、と話題になっています。

入館時は必ず連絡先などの個人情報を記載して提出(なにか有った時の連絡先として。1ヶ月で責任をもって廃棄していただけるとのこと)
アクリル板完備で導線設計がきっちりされた会場の中、検温、手指消毒、足裏消毒を行った上で入場。チケットもぎりなども人との接触を避けるような配慮がされています。場内はもちろんマスク必着。立ち上がったり声出しもNG。
「密」を避けるために退場時は規制退場、人だかりができがちな「セットリスト」の公開や、記念スタンプ台の設置も行われていませんでした。

対策は万全なのは観客にとっては安心ですが、その影響もあってか、いつもは飛ぶように売れるコンサートグッズの売上があまり芳しくないようで、人気商品の「あ、さだ飴」の新作も在庫が大量に売れ残っているようです。通販でも購入可能です。

オフトピック

順調にいけば今年でソロ通算コンサート回数が4500回を達成する見込みだそうです。さださんもそのことを見越して、記念コンサートのために逆算して大きめの会場を抑えたそうです(東京ガーデンシアター)
ただ、コロナの影響でコンサートの延期・中止が相次ぎ、計算がずれてしまい、結果「ほぼソロコンサート4500回ぐらい記念公演」として公演するとのことです。

この辺のお茶目さというか、いい意味でのこだわりのなさ、いい加減さが、さださんらしいな、と思います。

あらためて、さだまさしコンサートの魅力とは

「生の音楽にこだわる、音楽家としてのこだわりの深さ」
「年齢を感じさせないバイタリティ、今でも手を抜かず妥協せずに常に上を目指す職人としての凄み」
「歌・演奏だけでなくトークも含めた、喜怒哀楽すべての感情を刺激し浄化させてくれる空間」

個人的に思うところをまとめると、こんな感じかな、と思います。
会場の皆が、笑いながら、ハンカチで涙を拭ってる、そんな光景を目にするのはさださんのコンサートか、落語の高座くらいです。
(笑いすぎて涙がでている、というわけではないです。中にはそういう人もいてもおかしくはないですが)

69歳を迎えたさだまさしさん、いまだ健在で衰え知らずなのは変わらずですが、世の中いつ何が起こるかわかりませんからね。最前線で立ち続けていただいている今のうちに、ぜひ後世にも語り継がれる「名人」のパフォーマンスを一度は生で見ることを、オススメします。
一度目にしてしまうと、高い確率で沼に引きづりこまれてしまう事も、あわせてお伝えしておきます。

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