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奇人、変人、珍奇珍芸(見世物小屋レポ)
虫を頬張るもぐら女、樺太から来た野人、串刺し中国人、異常体質人間_____令和の世には相応しくないノボリを掲げ、コンプラガン無視街道を突っ走る見世物小屋が、新宿の酉の市には存在した。
最後の見世物小屋
前から、見世物小屋に興味があった。
お祭りにはつきものだと聞くし、見世物小屋をテーマにした創作物も多い。
なのに、生まれてから今まで一度も、お祭りで見たことがない。見世物小屋を見たことがあるという父の話からも、興行が途絶えてから久しいようだ。
もう見ることはできないのか…と落胆しながらパソコンにかじりついていると、新宿は花園神社で行われる酉の市で、見世物小屋が興行されるという情報を見かけた。
こうしちゃいられんと学校帰りに東京メトロに飛び乗って、新宿へと向かった。
テキ屋並木を抜けて
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ここがシンジュクかぁ〜、とおのぼりさん気分でテキ屋並木を歩き、花園神社が見えてきた。
参道の脇には屋台が並んでいるのを見て、そういえば、こんな絵に描いたようなお祭りには10年以上行ってないことを思い出しながら歩く。
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小屋はいずこ
屋台のそばを歩き続け、やれチョコバナナだの、やれ綿アメだのを横目に見世物小屋を探し続ける。
祭りの記憶が10年以上前で時代に取り残されたせいなのか、ほぼ食べ物の屋台だけなのが気になった。
見つけられた『遊べる屋台』は射的とスーパーボールすくいの2つだけ。サギ同然のヒモくじと3日で壊れるエアガン専門店はどこに行ったのだ。
主宰のTwitterアカウントを頼りに歩き続け、ついに…
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あった。
見世物小屋は令和の世にも存在した!
劇団ゴキブリコンビナートの『見世物小屋』だ。
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もう見られないと思った、夢にまで見たそれが、目の前にある。
『お代は見たあとの800円!』、『時間はそんなに取らせません!』
いったいどんなショーを見せてくれるのか、少しの恐怖と好奇心を抱きながら、幕をくぐった。
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奇人、変人、大集合
(館内は撮影禁止のためこの先写真は無い。あしからず)
館内で見られたのはこの六つ。
1.狂ったOL
2.たこ娘
3.もぐら女
4.串刺し中国人
5.樺太から来た野人
6.伝説のインド人
全部くまなく書いてはリアルで観たときの驚きが半減しようと言うもの。ピックアップして紹介していく。
狂ったOL
軋む音を立てて下がる舞台装置に乗って現れたのは、いかにもなベテランOLさん。仕事が早そうな彼女のどこが、『狂って』いるのか………
そう思いながら見ていると、おもむろにホッチキスを取り出しセブンイレブンのレシートを自身の額にバチン!と留め出した。小屋のあちこちから悲鳴が上がる。
司会いわく『彼女は激務の末、狂って痛みを感じなくなったのです!』と。
一瞬ビビりこそしたが、私は『ははーん。曲芸用のホッチキスで、糊かなんかで貼り付けているんだな。』と悪い考えを浮かべていたが、針を外す動作に妙な質量を感じるのと、彼女が刺した針のどの場所からも鮮やかな血が流れているのを見て、すぐにその考えを改めることになる。
痛みを感じなくなるほどの激務を課す日本の未来を憂うばかりだ。
もぐら女
次に登場したのは『もぐら女』だ。またもや軋む舞台装置から現れたのは、もののけ姫に出てきそうな、サンカのような服装というべきか、いかにも『山の人』といった感じの盲目の女性。
四つん這いで舞台を駆けずり、柱や梁も構わず駆ける身のこなし。司会いわく『生まれてからずっと暗い地下室に閉じ込められ、食べ物も与えられなかったため虫やネズミを食べて生き延びていた』らしい……
梁に登って辺りを警戒していた彼女だが、ミルワームの飼育ケースが開き、箸で摘んでやると慌ただしく梁から降り、おいしそうに口に含む。偽物の虫だろうという考えを抱いた観客を口元で蠢く虫で黙らせたあとは、優雅な咀嚼タイムだ。
『彼女は本当に食べてるんですよ!途中で見せてあげましょう!』と司会が言うと同時に、んべっと舌に乗ったペースト状の虫が半身をのぞかせる。
一瞬にして小屋の中は悲鳴と濃すぎるナッツのような香りに包まれた。
樺太から来た野人
また舞台装置が軋みながら現れるかと思いきや、降りてきた装置には誰もいない。
司会も首を傾げ、どうしたトラブルか、とハラハラしていると『ウワーッ!』と叫びながら3人の野人が登場!
風貌はというと、顔を黒く塗り、腰巻きを身につけ、棍棒をたずさえて…………
……………もう何も言うまい。
アイヌの人々に訴えられないことを祈るばかりである。
消えゆく文化
満足感に包まれ、見世物小屋をあとにした。
よく令和の世に興行できたものだなぁ、とつくづく思う。
最近は人権の観点からも、このような催しへの風当たりが強く、見世物小屋という文化も風前の灯火だ。
しかし、世の中のスタンダードにそぐわないという理由で伝統が途絶えるのも悲しい話であり、花園神社で見世物小屋を開いてくれた彼らには感謝感激の念止まず、本当に良いものを見せてもらった。
ここの見世物小屋の主催は劇団の『ゴキブリコンビナート』。
新宿酉の市での興行終了後の予定は未定だが、彼らがまたいつか神社に帰ってきたときは、観に行ってみるのも良いだろう。
ゴキブリコンビナート
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