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原因不明ー①

 私が聞いていた話とは違っていた。大学というのは華やかでもっとこう、ワイワイしている所だと聞いていたのに、サークルや学部の友達と遊んだり、男女でアウトドアデビューとかやってみたいし、と平均的な大学生となる事が私の理想だったのに。中の中の高校生で女子高生を満喫し、中の中の大学に合格し、ほんのちょびっと恋愛をする、普通の女子なのはここまでよ、神様私を女子大生にしてください!と去年と今年の初詣には3ヶ所くらいで神様にお願いした私です。
 
 原因不明のウイルスが世界を覆ったのは私がキラキラの大学一年生になる少し前でした。世の中は他国で凄い事が起きていると油断しているようでした。何を隠そう私もその一人ではありましたし、まさかその時はたくさんの事が画面の中で過ぎていくとは想像もしてませんでした。あっという間に謎のウイルスは私達の国へも上陸し、たくさんの事に制限がついたんです。テレビでは政府のやる事に大人が文句を言い、子供の事を自分の事のように大人が決めていくのです。なんだかなと思いつつ、周回遅れで夏休みが来ている感じで嬉しさもありすごく複雑でした。

 一年が経って、さすがの先進国ですね薬やらワクチンやらが出てきて元通りとはいかないけど、外出くらいは出来るようになりました。大学二年生になった私ですが、一応個々の判断でリモートか授業に参加できるという事にはなりました。友達も作りたいし私は授業を直接教場で受ける事にしました。そういえばしっかり大学に来たのって初めてかなっと考えるとウキウキしてきました。授業を受け、帰宅しようとした時、サークルの事を思い出しました。入学当初リモートサークル見学会という行事がありました。そこで私は、映画サークルの話を聞き、学生同士で映画を撮るなんておしゃれ、最高じゃないの、と画面越しでプルプルしてました。入会を決めSNSのグループに入りましたが、そこではフィルムノワールがーとか、黒澤明がーとか異次元の会話が繰り広げられていました。私だけ違う次元にいるのかと思いそっとスマホを机に置きました。私も少しは映画を見るのです。ショーシャンクの空にとか面白くないですか?
 
 私はそれなりに冷静なので高次元のラインで会話をしているのは一部の人間だと気付きました、絶対に私のように大衆に媚びりに媚びりついた映画大好き女子がいる事を信じており、サークルの入会は取り下げませんでした。私の大学では各サークルに机とベンチが支給されておりサークルの人間がそこで談笑できるような場所を設けています。閃きました、私は映画サークルのベンチに行ってみようと考えました。我ながら行動的で驚きました、相当人と会う事に飢えていたのでしょうか。映画サークルのベンチには男の人がスマホをいじってました。なんだか私よりは学年は上のように見えて、見たくれはそんなに悪くないです。躊躇しましたが思い切って話しかける事にしました。なんかちょっとかっこいいし。「あの、ここは映画サークルのベンチですか?」私はベンチにいた男性に話しかけてみました。「うん、そうだよ」彼はスマホから一瞬視線を逸らし私の問いかけに答えました。

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