noteが10周年をむかえました。
noteは2014年の4月7日にサービスを開始しました。
本当に多くの人に使っていただいていて、関わってくださったすべてのみなさん感謝しています。ありがとうございます。現在のユーザーID数は700万超、投稿された記事の数も4000万を超えています(くわしい数字は近日中に発表します)。
この機会に、あらためてなぜこのサービスをつくろうと思ったのかを書いてみます。
ぼくはもともと出版社で編集者をしていました。
編集者の仕事は、作家のものづくりを手伝う仕事とよく言われます。実際にそれはすごく大事な仕事なのですが、でも、やるべきことの半分くらいじゃないかなと思うんです。もう半分はなにかというと、それを広めることです。より具体的に言うと、「売る」ということです。
売って初めてお金になって、作家に収益が生まれます。それ以外にも、デザイナー、イラストレーター、写真家、書店、印刷所、紙屋さん、そして出版社など、さまざまな関わっているプレイヤーにお金が回って、それで産業が動いて、またあらたな作品づくりが始まるわけです。
こういう循環は、出版だけじゃなくてほかのメディア産業にもあります。テレビにはテレビの循環があり、映画にもラジオにも、新聞にもそういう循環があるわけです。
2000年代から、だんだんとネットが普及して、この循環が崩れ始めました。
だれでも簡単に発信できて、多くの人に見てもらえるのはネットのすごくいいところです。おかげで、多くの出会いが生まれたり、さまざまな機会や作品や、すごい数のビジネスが生まれています。
でも、当時はネットのコンテンツをお金にする手段が、ほとんど広告しかありませんでした。広告自体はニュートラルなもので、それ自体が悪いものではないのですが、それだけしかない状況は問題があると考えました。
理由は2つあります。1つ目は、広告で収益を稼ぐということになると、ページビューを稼ぎたくなるから、どうしても過激化しやすくなるということです。これは現在問題になっている、誹謗中傷や炎上にもつながる話です。2つ目は、コピペや剽窃です。これもネットによくある問題ですが、コピペや剽窃は、コンテンツの制作費を「下げる」効果があります。その結果、広告による収益性が上がるわけです。
この2つのネットの課題を解決するためにも、広告以外の収益化手段があることが必要だと考えて、noteには最初から課金の機能をつけました。こういう機能は、必ずしも全員が使う必要があるものではないのですが、そういう手段があることが大事だと思うのです。
こういう、ものづくりのベースとなる循環を変えないと、創作の流れが続かなくなってしまいます。だからこの会社は、最初から、ものづくりだけでなく、収益化もテーマにしています。noteのミッションである「だれもが創作をはじめて、続けられるようにする」の「続ける」には収益化が含まれています。
もちろん、お金がすべてというわけではありません。適切な「出会い」や「機会」があることがやっぱり大事です。読者は自分にあったおもしろいものに出会いたいですし、クリエイターも出会うべきお客さんに出会いたい。「創作大賞」のようなイベントは、クリエイターのみなさんに機会を提供するためにやっています。
それぞれのひとにあった、いろんなかたちのサクセスを提供したいと考えました。
インターネットの本質は、オープンであることと、ひとびとが簡単につながれることです。そこにちゃんとした市場を作り、住心地のいいコミュニティをつくることで、創作の輪を大きくしていきたい。そんな思いではじめたサービスです。
また本日、弁護士ドットコムと、誹謗中傷や炎上などの課題を解決するためのプロジェクトをはじめました。
この記事の冒頭に、編集者やメディアが果たしてきた役割は、つくることと広めることの2つだと書きました。じつは、あともうひとつあって、それはクリエイターを「守る」ということです。ネットの課題を解決するために、僕らができること、やるべきことはまだまだあると思います。
10年前、noteの最初の日にこう書きました。
いまでもまったくその気持ちは変わっていませんし、これからも変わらないでしょう。
だれもが、好きなことや思っていることを発信をするだけで、友達ができたり、仕事になったり、その人にあったいいことが起きる。いろんな人と力を合わせて、そんなネット環境を作っていきたいと思います。