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2025年に向けて

新年あけましておめでとうございます。Sunny Side Venture Partnersの才木@カイロです。日本ではもう年が明け、こちらでは2024年も残すところ数時間という中で、新しい年に際し、「2024年の振り返り」をしてみたいと思っております。

2022年6月からアジア初の北アフリカ在住(@カイロ)VCとして投資活動を開始し、2年半が経ちました。2024年はアフリカ・中東のスタートアップ/VCエコシステムには良いことも悪いことも含め、色々なことがありましたが、それはここでは語りつくせないので、現地に根差して活動してきた我々「Sunny Side Venture Partners」にフォーカスをし「2024年の活動振り返り」をしてみたいと思います。


投資活動

引き続き、現地に根差しながら、長期視野を持ちつつ、加えて、昨今のアフリカマクロ環境も鑑みて、FundamentalsやDiversificationを強く意識して投資をしてまいりました。例えばToCとToBのバランスも、2023年前半ぐらいまではほぼ半々だったのを、現状はToC:ToB=3:7と、ToCでアフリカの持つ将来的な人口ボーナスの爆発力は担保しつつ、足元はしっかりとToBで固めるポートフォリオを組んできております。結果、12月下旬時点で、投資先は【17社】(確定含む)となり、投資先のオペレーションの国数は【15か国】となりました。

投資先17社一覧
Sunny Side Venture Partners - 投資先オペレーションカバレッジ

もちろん、世界的、特に、アフリカのスタートアップエコシステムにおいては、引き続きFunding Winterの真っただ中にあり、Struggleしている投資先もございます。一方で、この逆境の中でそれぞれのやり方で活路を見出しむしろ勢いを増して伸長している投資先も複数あり、オーバーオールで見ると、17社のうち9社がアップラウンドが確定(Valuation Capの更新やSAFEのEquity転換含む)しております。現状のFunding環境の中にあって、これは非常に素晴らしいことだと理解しており、これはひとえに世界で最もビジネスするのが難しい地域で起業している投資先各社が必死に頑張った結果だと思います。

Funding Winterが続くアフリカエコシステム (Source: Africa The Big Deal)
経済同友会の訪問を受けるLogidoo@Dakar, Senegal

中でも、すでにIPOが2-3年後に見えてきている投資先も1件あり、現在Pre IPOラウンドをレイズ中IPOは2-3年後に今世界的にも盛り上がっているサウジの株主市場で行うべく進んでいます。もしうまくIPOすれば、2022年のファンド組成から4-5年でのExit案件発生(かつIPO)ということで、足が長くExit実績が出せていないアフリカVC(そもそもセカンダリーではないEXITを1件でも出せているアフリカVC自体が世界的に少ない)、さらには全世界的にVCが冷え込んだ2022年組成ビンテージの中にあって、我々がプレシード&シードターゲットVCであることも鑑みるとpeerを圧倒的に上回るスピードでのExit案件発生となると思います。アフリカのエコシステムに最も必要なのは、さらに資金を呼び込むためのExit事例だと思っており、まだアフリカにおいては歴史の浅いVCというアセットクラスがこの地で成り立つことを証明することに大きなLifetime Cascading Impactがあると信じています。2025年も引き続きできる支援をしていきたいと思っています。


そんな投資先各社の「頑張り」が「結果」に繋がるように、私としても以下のようなサポートを実施してまいりました。

①ファンドレイズサポート

なんといってもメインはこれで、とにかく投資先からの要望が多いです。それぐらいアフリカにはキャピタルが足りておりません・・・。ファンドレイズ中のスタートアップに対して、ファンドレイズピッチデックのブラッシュアップを実施したり、延べ数十社というVCをWarm Introしたりしました。おかげさまで私が紹介したVCからレイズができたという事例が数社においてございました。

②定例モニタリングの実施と適時のサポート

各社との接点を月1回~四半期1回は持ち、経営状況の把握およびサポートリクエストの吸い上げを行いました。具体的には、戦略やマーケティングの壁打ち相手となったり、アフリカで活動する日本企業でビジネスに繋がりそうな企業は積極的に投資先スタートアップに紹介してまいりました。

③メディア繋ぎこみ

TechCabalやJETROニュースなど、海外や日本のウェブメディアに投資先をご紹介させて頂く機会を得ました。もうすぐいくつか記事となって世界や日本に向け発信されると聞いており、楽しみにしています!


「できることはしっかりやる」「This is Africa(TIA)を言い訳にしない」
をキーワードに、リスクが多いアフリカだからこそのセレクティブなスクリーニング(累計面談数約700社、うち投資17社[2.4%])、PreSeedやSeedというアーリーステージのため情報は少ないながらもできる範囲でしっかりとDDすることを心がけてきました。とある投資先からは「これまで欧米系含め様々なVCからDDプロセスを受けてきたが、その中でもとてもしっかりと包括的にDDをしていて、質問も良かった。DDプロセスを通じて、よりSunny Sideに投資して欲しいと思えた」という嬉しい言葉も頂きました。


また、インターン生にも恵まれました。こちらは、年末に実施したこれまでの歴代インターン生のオンラインネットワーキング会の様子です。プロボノ(Unpaid)ながら、日本人、エジプト人、ドイツ人、ルワンダ人など多国籍、かつ、バックグラウンドも大学生、弁護士、コンサル、アクセラレーター等多様で、ただ、皆「スタートアップを通じてアフリカの未来に貢献したい」という同じパッションを持った面々が集まり、積極的にサポートしてくれました。本当に感謝です。彼らと一緒に働くことで、まだまだ黎明期でタスキを繋いでいかねばならないアフリカVCの次世代の担い手に現場経験を提供することができ、少しでもエコシステムへと貢献ができればと思うばかりです。

Sunny Side Venture Partnersの歴代インターン生(一部)の皆様

イベント

今年もおかげさまで8か国10都市における30件のイベント(オンライン含む)に登壇・参加させて頂きました。細かくは書きませんが、以下、一部を時系列で写真を並べてみますと、改めてどれも非常に充実した学びの多いものだったなと思います。また、有難いことに、アフリカ現地エコシステムでの認知も高まってきたことを感じており、先方からお声がけを頂くことも増えてきました。ちなみに出張はすべてイベント主催側の招待もしくは自己負担とし、無駄な出張は極力しないようにしています。他のアフリカ・中東ベンチャーキャピタリストに比べると少ないかもですが、それでも、カイロにて幼児2名を共働きで育てながら、妻の多大なる協力を得つつ、できる範囲で、できる限り、足を動かしました。

Advancing AI for Africa by AI Factory and NOVATION CITY@Sousse, Tunisia
LEAP@Riyadh, Kingdom of Saudi Arabia
Techne Summit@Cairo, Egypt
GITEX Africa@Marakesh, Morocco
Rally Startup Festival @Alexandria, Egypt
Moonshot by TechCabal@Lagos, Nigeria
Emerging Valley@Marseille, France
Africa Startup Conference@Algiers, Algeria
日・アフリカ官民経済フォーラム@Abidjan, Cote d’Ivoire


また、現地に根差していることで、日本ではなかなか得難い貴重な機会にも恵まれました。昨年2023年はエジプト訪問中の林芳正外務大臣(当時。現内閣官房長官)との昼食会に参加させて頂く機会を頂きましたが、今年はカイロご出張中の小池百合子東京都知事と日本・エジプト各社との会食会に参加させていただきました。小池都知事や東京都の皆様に加え、Orascom ConstructionやElaraby GroupやElsewdy Electricなど、エジプトを代表する企業の経営者の方々や、Egypt-Japan Business Council、エジプトで活躍される日本企業やJETROの皆様ともご一緒させて頂け、大変貴重な機会となりました。アフリカ・中東や当地エジプトのスタートアップシーンの盛り上がり(ここ数年で世界で最もベンチャー投資が伸びている地域)や課題(伸びてはいるもののそれは過去が少なすぎただけで、絶対的かつ相対的にアフリカにはとにかくキャピタルが足りない)、エジプトにおけるパブリックセクターとスタートアップエコシステムとの連携事例、Sunny Side Venture Partnersの活動などについて、お話させていただきました。

エジプト訪問中の小池百合子都知事やエジプト・日本を代表する企業の経営者様と

発信

ソーシャルメディア(主にLinkedIn)での発信も引き続き積極的に続けました。各種評価機関からMost Active VC Firms Based in EgyptTop 50 Creator in Egypt Venture Capitalistランキングの10番目などに選出されました。

また、中東協力センター(JCCME)の「北アフリカ地域における現地スタートアップ動向に係る調査」に協力させて頂きました(詳しくはこちらをご覧頂ければ幸いです)。
「Scaling Ventures - 道を創る者たち」と題しつつ、アフリカスタートアップエコシステムの成長を阻害する最大の課題の一つであるLack of Liquidity(特に大きなExit事例の不足)に立ち向かい(ちなみに、この「アフリカの発展にとってなぜLiquidityが大きな課題なのか」についても、私のパートの冒頭で背景含め簡単に解説してます)、エコシステムの飛躍には欠かせない「大きな成功事例」をまさに先駆者として創ってきた現地スタートアップへのディープダイブを行っています。北アフリカのスタートアップシーンを代表する5社の創業者たちにインタビューする貴重な機会を得、大変学びも大きかったです(JCCME様のポリシー上、配布が禁止されており、ご興味のある方はこちらのURLからJCCMEに所定の手続きを踏んで入手するレポートとなっており、ご不便をおかけいたします)。

2023年のアフリカ唯一のユニコーンとなったMNT-Halan(エジプト)の社長と

その他

家族でエジプトに住み始めて2年半が経ちました。3歳と1歳の娘を抱えてのカイロでの共働き生活は色々と大変なこともありますが、おかげさまでなんとか無事に過ごしております。今年、初めて家族4名でピラミッドに行く機会がありました。投資先以上に子供の成長は早いです。

約4500歳差のピラミッドと娘たち


次の写真は2024年のNigeria出張時に立ち寄ったMakokoという水上スラムです。VCという仕事をしていると、どうしても「国」というよりも「都市」の成熟度合いが重要だったり、付き合う現地の人(起業家やVCたち)も海外で学んで帰ってきたエリート層や比較的富裕層だったりして、視野が狭くなりがちのため、時間があればスラムを訪れるようにしています。これまでKenya・NairobiのKiberaやSouth Africa・JohanesburgのSowetoに行ったことがありましたが、Makokoもかなり衝撃的でした(そしてKiberaやSowetoと同様、例によってとてもFancyな都市部から車で数十分のところにあるんですよね)。自分が選んだ「VC」という仕事ができることは限られていますが、だからこそ、ことアフリカにおいては、「インパクト」に逃げず、VCとして本当にすべきこと、すなわち、「ビジネスを創り成り立たせることが世界で一番難しい地域」においてチャレンジしている「世界で最も勇気ある起業家」をアシストし、アフリカの持つNarrativeを「支援の受け手」から「魅力的な有望マーケット」に変化させることこそが、この地域でVCをやる意義だと思っています。前掲の通り、Funding Winterで、アフリカのVC投資額は下がってきています。2024年はおそらく$2B-2.5Bになると見込んでいますが、この数字は2023年の日本のスタートアップ投資額約$6.5Bのわずか3分の1です(人口はアフリカが10倍)。キャピタルが足りません。裏を返せば、アフリカでVCをやるAdditionalityはむしろ大きくなっていると言えます。

Nigeria・Makokoの水上スラム

ドライパウダーも残りわずかとなってまいりましたが、より一層、アフリカ・中東地域の未来の経済を創る大きな志を持ったスタートアップへの投資や、現地エコシステムの活性化、日本文脈を含むCatalyticな活動を、引き続き現地に根差しながら行っていければと存じます。そして今後も、世界や社会や市場を主語にした時にどう自分の能力や自分の活動の価値を最大化できるか、つまり自分のキャリアや人生のAdditionalityをどう最大化することができるかに、しっかりと向き合っていきたいと思っています。

最後に、いつもお世話になっている皆さまや普段遠くてなかなか会えない友人たちに、感謝を述べさせていただきたいと思います。2024年も本当にありがとうございました。
2025年が皆様にとって健やかで実りある年となりますことを、心よりお祈り申し上げております。

Sunny Side Venture Partners 才木貞治

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