神出鬼没の白虎笑う③
さぁ反撃。白虎を攻略するぞ。な~んて思った次の瞬間、むり無理ムリ。できっこない。そんな思いが浮かぶ、ボクってやっぱ──
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こんにちは。フジミドリです。11月。皆さま、如何お過ごしでしょう。何だかとても、時が経つのを速く感じる私です。
さて、連載中の意識学ラボ・シーズン2は、12月5日に完結予定でございます。
還暦を越えて尚、現役塾講師である私、入試直前期はここをお休み致します。戻って来るのは──わかりません。書き尽くした感がある気も致します。
ミツヒロ&サクヤの13歳コンビには、是非とも四つの至宝を攻略して欲しいものです。今回は、ミツヒロ視点に戻りましょう。
👀 👀 👀
白虎が笑う。あちこちで。顕われたかと思えば消えてしまう。消えた途端、別の場所へ。神出鬼没。大きくなったり縮んだり。怖くなったり可愛くなったり。
ボクらは、スキルを使って追い駆ける。これまで攻略した、玄武と青龍のスキルなんだ。何でも出来て何処へでも行けちゃう。
でも、案内人の妖精たちが、夫々違うことを言うから、迷って混乱するんだよね。
👼 👼 👼
うーん。だけどさ、何でも出来て何処へでも行けるのって、やってみたらコレ、意外と詰まらないんだな。知らなかったよね。
「なんかあたし、怖くなっちゃうの。だってあたしが思った通りになるわけで。爆発しちゃったり、困ったことにもなったでしょ」
『確かにな。元通りにすればいい。病気とか怪我とかでも、治せばいいんだけど、こんなんで、本当にいいのかって不安になるよ』
🌊 🌊 🌊
「やあねぇ」「これだから人間って」「望んだくせに」「叶ったらビビる」「気が小さいんだよ」「罪悪感」「責任の擦り合い」
👽 👽 👽
う。痛いこと言うな。確かにね。望みが叶わなきゃ、怒ったり泣いたり悲しんだり。何でも叶えば、今度は怖くなって落ち着かない。
金メダルを獲れば、他がみんな敗者。誰かの合格は誰かの不合格。誰かの儲けが誰かの損になる。ボクの吐いた息は誰かが吸う。
誰も彼もが、一人残らず満足できるなんて。そんな世界は、作れるのだろうか。絶対ムリって気がするよ。だとしたら──
《イデアルーム、推奨します》
🍵 🍵 🍵
ここは落ち着くよ。安全な空間。何も心配がない。現実にも、こんな場所があったらいいんだけどね。いつでも逃げ込めるからさ。
《人生体験のご感想は、如何でしょう》
ボクらはAIと確認した。夢でも見てるみたいだよね。サクヤと二人で色々な経験をした。ゲームなのに、臨場感が半端ない。
「でも、うっすらしか、覚えてないわ」
👻 👻 👻
人生って、こんなものかな。大人は、どんな風に感じているのだろう。次々と色々なことが展開して、でも消えていくんだ。
《生涯を、早送りで体感して頂きました》
その間、ボクらはずっと白虎を追い続けた。形を変えて、何時までも捕まらない白虎って一体何だろう。妖精の言葉で迷うばかりだ。
「人生って虚しいのね。空っぽだわ」
🍹 🍹 🍹
《仰る通り。内は空っぽなのです》
AIとサクヤが対話するのを聞きながら、ボクは窓から外を眺めていた。ふと思う。窓は枠があって区切られているけれど、ボクが外を見る時は、一つの空間なのだ。
あれれ。なんかヘンだよな。目は二つある。でも、周囲の景色は一つに見える。当たり前っちゃあ当たり前だけど、なんかヘン。
試しに、片目ずつ瞑ってみる。やっぱり景色は一つだ。今度は、両目を開いて瞬きする。
「ちょっとミツ君、何やってんの」
💢 💢 💢
《目を閉じれば、世界は消えるのです》
そうか。わかった気がするぞ。なのに、次の瞬間ぼんやりしてきちゃう。感覚ではわかるんだけど、言葉にすると逃げていく感じ。
「え。じゃあ、世界はあたしが創っているわけなの。信じらんなーい。まさかね」
《創るというより、映し出すのです》
🎥 🎥 🎥
ちょっ、ちょっと待ってよ。それってヘンだよね。あれれ。物が見えるって、反射した光が網膜に映って、それから神経で脳へ──
《目を閉じて、開けばすぐ映ります》
説明を聞いても呑み込めない。わかりやすく言ってくれるから、言葉としては理解できるけど、心がついていかないっていうか。
《僅かでも、時間差があるはずです》
光の速さは秒速30万キロだ。けど、いくら速くても、目を開けた瞬間、世界が見えるのはおかしい。確かにそうだけど──
🐧 🐧 🐧
「ミツ君、どういうこと」
『光の反射なら、見えない瞬間がある』
「へぇ~そうなんだぁ。ふーん」
『でも、見えない瞬間なんてないでしょ』
「ミツ君、よくわかるね。スゴい。頭いい~あたし、ついていけない感じよ」
『ボクだって、了解してるわけじゃないさ。自分が、この世界を映し出してるなんて』
《理解者数は、限りなくゼロに近いのです》
🌋 🌋 🌋
でも、この世界ではそうなんだよ。ボクの中にある。映画のフィルムみたいにね。現れたもの全て、映し出しているとしたら──
先刻、浮かんで消えた閃きが、頭の中で形を取り始める。そうか、そういうことか。
『自分の内に在る白虎を、捕まえればいいんだよ。外の白虎を追いかけちゃダメだ』
🐯 🐯 🐯
わかったつもりで、ゲームへ戻ったけれど、具体的にどうするのか浮かばない。
外の白虎ではなく、内の白虎を探す。意識の中で捕まえた。これでいいのかな。迷う。
でもサクヤときたら、すっかりその気になったみたいで、両手を上げて笑顔で叫んだ。
🎉 🎉 🎉
「攻略したってことに、しちゃいましょ。うん。これでよし。あたしが許すわ。大丈夫」
《白虎、攻略です。無光が展開します》
わ。何コレ。同じ風景なのに
見えている景色は変わらないけど
わかった。全部、ボクなんだね
外に在ると思っていた。でも違う
コレみんな、ボクの内に在ったんだ。気づいてみれば簡単なこと。この白虎その白虎あの白虎どの白虎も、初めからずっと──
世界が反転した。
イラストは朔川揺さん💞
11月14日午前10時へ続く💖
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ありがとうございます🎊