空を統べる朱雀の涙③
あたしは、球の中に浮かんでる。球の膜が映し出す、色んな人の色んな人生を見ていた。あ。ううん。見てるはずだった。でも──
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こんにちは。フジミドリです。いよいよ完結致します。どんな結末となるでしょう。
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あたしたちは、一つになった。
どう言ったらいいのかな。一つになったと言っても、それは球の膜に映る世界を見ているあたしであったり、ミツ君であったり。
見てるのはダレなの、みたいな。
ミツ君が膜に映る時は、あたしになる。それで、あたしが映るとミツ君になってしまう。球の膜って、映画のスクリーンみたい。
《意識は、自由自在なのです》
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あれは何時だっけ。つい先刻のような、もう随分と前のことみたいな。
案内の精霊さんが、膜をすり抜けて球の中へ入ってくると、広がった。球の中が、精霊さんで満たされていく。
あたしらは、柔らかく暖かく心地よい、ビリビリと痺れるような波動に包まれた。
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玄武が潜む地下の洞窟は湿気に靄る。青龍の揺蕩う海流が深く蒼く澄む。白虎の森は鮮やかな百花繚乱に満ちて──そういった全てが混じり合っている。
これまでの案内人は、言葉で教えてくれた。玄武、青龍、白虎。でも、今は違う。
朱雀の攻略には、言葉が使えない。わかる。痺れるような波動で伝わった。言葉を使わずに、理解しなければ──
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何もかも外にあると思っていた。違うんだ。外の世界こそが、ボクらの中身だった。
自分は独立してる。見る景色や聞く音や触る物が外にある。そう思い込んでいた。
違うんだ
この世は色んなものがある。好きなもの嫌いなもの。善いもの悪いもの。けれども、そういった全てが本当の自分なのだ。
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自分が大きくなる。どんどん広がっていく。スゴく豊かだなって思えた。ああそうか。
自分は世界
世界が自分なのだ
そして、これは善いとか悪いとか、心地良いとか不快とか、どう捉えるかで、次に映し出す世界を決めていく仕組みなのだ。
わかった。本当は、初めからずっと、わかっていたのかもしれない。わかるというより、思い出す感じかな。理解できた──
《朱雀の至宝攻略です。炁空発動します》
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二人はイデアルームにいた。
今、球の中で浮かんでいたはずだ。それが、スッと変わって、ソファと紅茶とケーキ。
《炁とは大元。神なる法則。空は善悪双方を含みます。陰と陽が相殺されて無なのです》
AIの説明は、淡々と続いた──
《空のままでは何も起こりません。何も味わえず、何も経験できない。そこで、無の状態にしてから、光によって創り出すのです》
ああ。そうだった。
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ボクらは光に戻った。周囲も全て光だった。芯から暖かく、何の憂いもない。
健康、学校、家族、友達、将来。思い悩んで考えた、その迷いは全て消えている。
柔らかい。何もかもが柔らかく感じられる。ただただ光り輝いていた。自分は一つの光で周囲に沢山の光がある。懐かしい。
次の瞬間、全ての光は一つになる。呼吸するように、個々であったり一つになったり。
ずっと此処に在りたい
心地よい。在るだけで心地よい──けれども遠くで誰かの呼ぶ声がする。戻らなくちゃ。嫌だなぁ。ずっと在たいのに。
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──イデアルームに戻る。
『ボクらは皆、自由自在な光だった』
「何でもできるの。何処でも行けるわ」
《意識が先で、現象は後です》
『潜在意識ってやつかな』
「心の底に、潜んでるんでしょ」
《真実は逆です。見る景色、聞く音、触れる物体こそが、潜在意識なのです》
『世界は反転してるのか』
「自分の顔って、見えないもん」
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「どうするの、これから」
『解らなくなってきた』
《道は、二つに分かれます》
イデアルームがしんとした。
《一つは、元の世界へ戻って全て忘れる道。一度きりの人生を、謳歌するのです》
二人が顔を見合わす。ミツヒロは腕を組む。サクヤが小首を傾げて微笑んだ。
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「戻ると、忘れちゃうの❓」
《忘れずに、楽しむこともできます》
『なんかゲームみたいだね』
《その認識で宜しいかと》
「もう一つの道は、戻らないの❓」
《次元上昇です》
『他の場所へ行くとか』
《進化した惑星もありです》
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『どうしよう』
「迷うわ」
『でも、選ばなくちゃ』
「別々はイヤよ」
『うん。一緒がいいね』
《気空無光真奇力存が発動です》
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イデアルームを出る。初めの草原だ。空は青く澄み、太陽が燦々と輝いて、風は軽やかに吹き去っていく。何処かで鳥が叫ぶ。
サクヤとミツヒロは、顔を見合わす。微笑み合う。また、二人に分かれたのだ。
『やぁ、こんにちは』
「こんにちは」
『ええっと、よろぴく』
「うふふ。こちらこそね」
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イラストは朔川揺さん💞
12月5日午前10時で終わり💖
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ありがとうございます🎊