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2017年4月の記事一覧
パラレル・シスターズ 秋桜編【掌編小説】
ある朝ベッドから起き上がると、私の部屋には三人の女の子がいた。彼女達はまったく同じ顔、まったく同じ体、まったく同じ声。彼女達はそれぞれ違う女の子でありながら、同時に同じ女の子。彼女達は平行世界からやってきた、平行な三姉妹、〈パラレル・シスターズ〉だったのだ。
どうしてパラレル・シスターズが私の部屋へやってきたのか。それは誰にも(シスターズ本人たちにすら)分からない。平行世界を行き来するあらゆ
センチメンタル・ツベルクリン【掌編小説】
あの注射器の細い針を相楽ユウコは今でも鮮烈に覚えている。
特定の記憶というのは、目の奥の網膜に焼き付いて離れないものだ。そして油絵の具を塗り重ねるように、思い出す度にゴテゴテと不細工に盛り上がっていく。頭の中にはひねくれた小さな画家が棲んでいる。相楽ユウコは冗談のようにそう思う。
木枯らしが吹き始め、風景からいよいよ生命の躍動感が消失していく。もの悲しい季節だと人は言う。相楽ユウコは決して
風船売り【掌編小説】
ペンキで塗ったような青い空をした日曜日。こんな日には、もしかしたら〈風船売り〉がやってくるかもしれない。
風船売りはもちろん風船を売るのが仕事だ。でもそれは表向きの話。風船売りの風船には、街中で囁かれた言葉が詰まっている。良い言葉も悪い言葉も、真実も嘘も噂話も。
僕の弟は風船売りの風船につかまったまま、どこかへ行ってしまった。お父さんもお母さんも早く手を離しなさいって大声で叫んだけど、弟