座る寿司屋しか知らない
結婚して居る時には、年に一度くらいは寿司屋に行っていた、回ってるのじゃ無くて、カウンターで座る寿司屋だ。
その寿司屋は、親父さんが1人でやっている所で、数年前には息子と違う所で店をしていたのを、息子に売って自分は違う店を作ったようだ。
我が子は子供の頃からその寿司屋に行っていたので、回る寿司屋は大学に入ってからしか経験して居ない。
私などは回る寿司屋なんて入ったことが無い。
近所の人と話していて、回る寿司屋行ったことが無いと言ったら、最初同情された。
それが回らない寿司屋には行ったりすると言うと、途端に『お金持ちなのね~。』と嫌味の嵐が吹いた。
行っても年一位だし、他の時には相当生活費を締めていても、人間一部を見て全部を理解した気になるんだよね。
その寿司屋の親父さんは、美味しいと言って食べると喜んでくれて、我が家の食欲旺盛な子供たちは喜ばれた。
ここのウニは特別だとか、生きている白魚を出されて動いているのを飲み込むと言われたり、一般家庭で寿司屋なんて殆ど行かなかった(回るのも)自分にとっては目から鱗だった。
夫は生まれた時から父親が経営者だったので、ある程度大きくなるとそこに行って安めの物を食べていたらしい。
おーい、貧乏人発言は何処行った??
そう考えている私には夫はこうも言った、「俺も大人に成って会社に入ってから、接待やなんかで行っただけや、自腹で入って無い。」
こんな感じの経営者が会社を傾かせるんだろうな、今ならそう考えてしまう。
寿司というのは特別な食べ物だ。
特に江戸前の寿司は特別だ、押し寿司なら家で作る可能性も有るが、江戸前寿司は家で作る人は殆ど居ない。
家で作るのは家庭料理で、家庭料理ってのはお金も時間もそれほどかけないで作る。
それでも家族が美味しいと言ってくれたら、成功と言っていいものなのだ。
江戸前寿司は数種類のネタを丁寧に処理して、昆布を入れた酢飯を作り、これまた丁寧に握って手で作り上げる。
そうです、外食でしか食べる事が出来ない食べ物なのです。
我が家は普通のサラリーマン家庭だったので、家族総出で寿司屋に行く事は無かった。
家を建ててローンを払いながら、子供の学費を出すのは大変だったのだと思う。
それでも父親が自分の小遣いを貯めて置いて、弟か私を交代で外食に連れて行ってくれた。
弟は大食漢だったので、家族全員の分は払いきれないと考えて、1人づつ連れて行く父の奇策だ。
「サチコ、何処に行きたい??」そう言われて私はレストランを指定した、レストランなら値段が解かる、寿司屋には値段が書いてない、解らないのは怖いからね。
「何が食べたい?」
「ハンバーグ。」
「もっと高い物頼んでええぞ。」
そんな話をしながら、2人で食べたものだった、いつも四日市で老舗のお店で十分に満足していた。
それでも、ハンバーグは家でも食べれるものだから、チョット高級感薄めだったけどね。
後で弟と食べに行った父に愚痴の様な言葉を聞いた。
「○○な、何処に食べに行きたい?と言ったら何処言うたと思う?」父か聞く。
「ウーン、解らんけど、寿司屋に行きたいと言ってたよね。」答えた。
「そうや、あいつ1人やったらええかと思って、寿司屋に連れて行ったんや。」うんうん、それで。
「座ってやな、なんて言うたと思う?大トロありますかって聞くんやぞ、あいつの食欲でトロ食われたら、幾らになるか分からへんで、俺はかっぱ巻きしか食えんかった。」小学生の弟が寿司屋で大トロと言ったのを想像して、ニヤニヤしてしまった。
『しまった私もお寿司にすればよかったかな。』なんて考えながらね。
「大トロ食べたん??」そんなの食べたら語って欲しい、我が家では食べた人居ないんやから。
「それがさ、大トロって言ったら、親父がすまなさそうに、『うちでは大トロは置いて無いんですよ、中トロならありますけど』って俺の方を向いて聞いてくるんや。」そりゃあ払う人の了解を取るでしょうね。
「じゃあ、中トロでええんで、って言ったら、その後○○がウニやイクラって高いもんばかり頼むんや、あいつはただでさえ食うんやから、レストランに連れてったら良かった。」後悔先に立たずである。
「お前とあいつが反対のとこに居っとたら丁度良かったのにな。」弟の食欲はそこを知らないざるで、私は直ぐにお腹一杯になるのだから、最初からそうすればよかったんよね。
現在の我が家はほぼ外食をしていない。
何時も行っていた寿司屋の大将は亡くなって、私も離婚して贅沢も出来る状況にはない。
それにそれが哀しいわけでは無くて、出来たら娘と家を建てたいと思っているから、それで良いと思っているのだ。
余裕が出来たら寿司屋だって行けるし、年一位でターベラカルダオオノさんにも行きたい。
でもね、家を手に入れて余裕があればの話しなのですよ。
何でも手造りのこの生活も楽しいし悪くない、作って楽しむ生活が解ったのは離婚してここに住んだからなのだ。
ただちょっと考えるのは、結婚して居る時には夫の家のローンを一緒に払って、これから娘が家を建てたとしたら、娘のローンを払って、自分の家は持って無いのに、私はローンの達人か?
まあ人生未だ長い、ゆっくり頑張って行きましょう。
パンも美味しくできてきた事だしね。