なぜ湿原に足を踏み入れてはいけないのか?
最近、子ども達や友人たちと八甲田登山をしています。
普段下界から眺めているだけの八甲田山。
やはり、一度は地元の山に登ってみたいものです。
山頂から下界を見下ろすと、視野が広がります。
自分たちの住む町がちっぽけに見えます。
紅葉を楽しみながらの秋晴れの登山は最高の思い出です。自分の足で登ったからこそみられる景色に、感動しかありません。
秋の八甲田の素晴らしいところは、山頂からの眺めも最高なのですが、やはりなんといっても高層湿原のある毛無岱。
草紅葉と言われるのもうなづける絶景。
左奥には岩木山も見えて、目下に広がる紅葉と高層湿原。
息をのむほどの美しさ。
280段の階段を下りて振り向くと、さっきまで立っていた高田大岳山頂と、紅葉の森と、草紅葉と、抜けるような青空!
最高の登山だったのですが、コロナの自粛期間も明け、紅葉と天気に恵まれたこの日、登山客もたくさんいました。
木道ですれ違う時は、お互い譲り合いながら。
歩くのが遅い方は、木道の退避場所で道を譲って、お先にどうぞ~。と、お互い気持ちよく歩きます。
ただ、その中で、気になる方が・・・。
高層湿原保護のためのロープを超えて、湿原の真ん中で談笑している外国人登山客。
同じく、ロープを超えたところで腰を下ろしてご飯を食べてる方・・・。
「すみません、そこは植物を保護しているところなので、だめですよ。ロープの内側でどうぞ~」と、やんわりと話したらわかってもらえたみたいで、よかった。
自然の中に行きたいと思ってくれるのは、すごくうれしい。
人は自然とは切っても切れないものだから。とっても大切なことです。
でも、自然の中に人が増えると、困るのがマナー。
ごみをポイ捨てしたり、こうやって湿原を踏み荒らしたり。
本人たちに、湿原を踏み荒らしているという認識は恐らくない。知らないんですね。
なんで湿原に足を踏み入れてはいけないかというと、湿原ができるまでに、それはそれは長い年月がかかっているからなんです。
湿原ができるには、土地そのものに加え、寒冷な気候&ミズゴケの堆積という二つの条件が必要です。
ミズゴケが泥炭になって8メートルも堆積している。
8メートル堆積するにはどれくらいかかると思いますか?
なんと一万年!
泥炭は1年にたった1mm程度しか堆積しない・・・。
うっかり足を踏みこんで、ほんの1~2センチくぼませると10年~20年分。
湿原に入って地面を5cm沈めたら”50年分”がオジャンに。
特に高層湿原は水面より上に泥炭層があるのが”高層”の名前のゆえん・・・陸地に見えても
その下に水面があるのですね。踏まれて沈んだところはもう”高層”じゃなくなちゃう!
そしてミズゴケは一度踏まれると、黒く枯死して容易に回復しないのです。
踏んだところは、湿原の乾燥化の原因になってしまいます。
何しろ雨水だけが水源なので乾燥化のキケンとは常に隣り合わせ。
乾燥してしまうと湿原ではなくなってしまうのです。
湿原のすばらしさを写真に収めようと、湿原に足を踏み入れる方もいます。
木道が水没しているからと、横の湿原に足を踏み入れたところは裸地化しています。人が踏んだふみ跡には植物は生えてこないんですね。
まだ、八甲田の紅葉は楽しめます。
そんな登山のマナーも、心にとめて、雄大な自然を楽しんでいただきたいです。
そして、この景色を、次の世代まで残してあげたいです。