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「男の子って、できないって言えない生き物なんだよね」

私の理想の恋人について、その条件のごく一部を「運命の人、聞こえますか」にてご紹介しました。これを書いたきっかけは、大学の友人に言われた「さちこは自信たっぷりな男が好きだよね」という一言に、自分で衝撃を受けたこと。

友人との食事の場で話題に上がったのは、私が好きだったけどあっさりフラれたJ君、付き合ったけどやっぱりフラれたC君。どちらも自信家で、夢にあふれていて、強気で、彼らの生活に私が入り込む余地がなく、忘れられない女がいて、そして弟がいる長子だった。私は自分が見向きもされないことを理解してもいて、そして「私を好きになってくれるはずがない」ほど素敵な人に愛されている、という喜びを手に入れたがっていた。

私、自信たっぷりな男が好きだったわ……。まわりにもそう言いふらしていた。優しくて私に遠慮してくれるタイプの人には、惹かれなかった。しかし、まったくもって記憶の彼方だったし、漫画の好きなキャラや好きな俳優さんはおおむねこのタイプではないんだよね。


どんな人を好きになるか、親しい人に何を求めるか――男女に限らず人間関係の凹凸の話で、私は自分のコンプレックスを満たしてくれる人を探してきた。私はというか、みんなそうなのかな。どうなの?

大学生の頃の私は、大学デビューというほどではないんだけれど、「意外にアクティブな自分」「意外に友達と仲良くできる自分」「好きなことにのめりこむ自分」みたいなものに初めて出会って、結構、心が華やいでいた。私をもっともっと上へ上へ引っ張ってくれる、華やかな人に魅力を感じたんだろうね。

余談だけど、あの頃は「痛みの数だけ強くなる」とか信じてた気がする。その事実が信じられない。失敗なんて、できる限りしたくない。


それが変わってきたのはおそらく、働き始めてからだと思う。「消極的な自分」「人から必要とされない自分」「やりたいことを形にできない自分」……そういうコンプレックスを、私は仕事で昇華できることを知り(知ってしまい)、働くなんて絶対無理まじ無理と思っていた私が、どちらかというと仕事大好き人間になっていて。

彼氏ほしい、恋したい、結婚したいと言いつつも、直近でやりたいこと・やるべきことリストには一切、恋愛関係の事項が載っていなかった。

私はそろそろ社会人として6年目の春を迎えようとしている。あっという間だな……でも細かく振り返ってみればいろいろな出来事があって、たくさん怒られたし、たくさん失敗したし、ミスをして落ち込んで、力不足で悔しくて、職場でも家でもたくさん泣いた。もう消えたいって何度も祈って、殺されるとも思ったし、上司を呪ったことも1度や2度ではない(※今でも社会的に抹殺したい気持ちはあるのでいい呪術をご存知の方はコメントください)。


それでも、職場の人やお客様、友人たち、家族と、そして主にバスケットボール部で影が薄いと言われる彼や、元ヤンで自転車競技部の彼、野球部の元気なサウスポーの彼に、元気をもらいながら、励まされながら、いまも夢を追いかけているところ。

彼らは、けして自信満々な、華やかな人たちではなくて、まだ未成年なのに、好きなことで努力をして、夢が叶わなくて、いろんなものを失って、それでも全部、自分の力でまた手に入れようとしてもがいて……。今の自分では、負けるってわかってる。だけど負けたくないから、努力する。自分に何が出来るのかを知った時の儚さと、何が出来ないかを知った時の強さを、持っている。


私が応援している俳優さんたちもそう。いろんなタイプの役者さんがいるけれど、役者を始めたきっかけを問われてよくある答えが、これ。「それまで自分はたいていのことを器用にこなしてきたけれど、芝居は全然できなかった」。できなかったから、もう1回やってみて、できないから、もっとやって、いつの間にか、その魅力にとらわれていたんだ、と。

なにそれめっちゃいい……めちゃくちゃ心に刺さる……。

できないからやる、できるようになったら楽しい、その連続。努力してきた過程には自信を持って、だけど結果には謙虚に、貪欲に、満足することなく、挑み続ける。何歳になっても、挑戦者でいい。私は俳優さんたちからそう教わりました。

私も、その心意気を持って生きていきたい。自分にできないことを知っている人と、できませんって素直に言える人と、一緒に努力していけたらいいな。


あれ……恋愛の話をしていたはずが……仕事の話になっている気がする。

今回のタイトルは、職場の上司の言葉だけれど、ええ~!できないって言えないって、だっさ!と思った。いやプライドとか負けず嫌いとかわかります。できないって言いたくないから、できるまで試行錯誤してみる、もわかります。でもそこはさ、言えばいいじゃん、できないって。

失敗したっていいというか、むしろ、失敗しないわけがないくらいの環境にいたほうが、人生楽しいんじゃないかな。そうやって自分のまわりをアップグレードしていかないと、流れない水は腐るだけだから。「痛みの数だけ強くなる」って、また言えるようになりたい。

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