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サウナのサチコ、『五塔熱子さんに会いにいく』

こんにちは。サウナのサチコです。

今日も朝の通勤電車の中で、この記事を書いてます。できるだけ短い時間で、簡潔な文章を書く練習でもあります!!

今回は、五塔熱子さんの話です。

関東圏の方なら、いえサウナーであれば、五塔熱子さんという熱波師の名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。熱子さんのロウリュは、一度体験すると忘れられない、唯一無二のものだと私は思っています。

その五塔熱子さんが、5月から鳥取に拠点を移されるという話を聞きました。もう、簡単には会えなくなる。何とかもう一度、関東にいらっしゃるうちに熱子さんのロウリュを体験しておきたい。私だけでなく多くのサウナーがそう思ったはずです。

熱子さんが4月15日と18日に「草加健康センターに降臨!」という情報を得て、私は15日の木曜日に熱子さんに会いに行くことにしました。紙粘土で作った熱子人形を持って。これ↓

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昨年、初めてSKCで熱子さんのロウリュを体験した時に作ったものです。勝手に作って何度もインスタに載せておいて「プレゼントします」だなんて、甚だ図々しく上から目線の話ですが。

だってこんな粘土でもなければ、熱子さんに直接話しかけるきっかけなど、とても作れないと思ったから。


4月15日木曜日。

一番空いているであろう、15時の回に参加することにしました。この日は一日、熱子dayにしようと決めて、朝1番のラッコバスに乗るため草加駅に降り立ちました。ラッコバス到着まであと10分。今から緊張してどうする私。しっかり胸に抱えた紙袋の中を覗いて、逃げ出すはずのない熱子人形を確かめました。

あれ。

プチプチに包まれた熱子人形の様子がおかしい。よく見ると、熱子さんの手に握られているはずのタオルがありません。なんと途中から折れているではありませんか!

まずい、どうしよう。

壊れやすいと常々自分で言っておきながら、こんな時に限って修理道具を持ってきていません。慌てて文房具屋さんに入ろうとしましたが10時前で開いてない。コンビニに駆け込みました。しかし木工用ボンドや、アクリル絵の具などというものは当然見当たらず、黄色に輝くアロンアルファだけ見つけました。普通のアロンアルファでいいのに、こういう時に限ってエクストラゼリーとかいうお高いアロンアルファしかない。いやもう、迷っている暇はないとそれを購入し、すでに到着していたラッコバスに乗り込みました。

とにかく、とにかく落ち着こう。絶対復元できる。このエクストラゼリーがいい仕事をしてくれるはず!と信じることにしました。

草加健康センターに到着したのは10時過ぎ。今回はリクライニングスペースも予約しました。そこで15時までゆっくり過ごそうと前日から予定はしていたのですが、まさか粘土を修理するスペースになるとは。

しかしうっかり奥の暗めの席を予約してしまったために、粘土の細かい破損部分が見えません。仕方なく入り口近くのヘアアイロンなどがある明るい席に座り、こそこそ修理し始めました。後ろを人が通るたびに手で粘土を隠したりして。慎重に慎重に、エクストラを破損部分に垂らしました。


くっついた。

くっついたことはくっついたけど、接続した箇所の違和感は否めません。しかも細かく欠けた部分は戻らず、白い粘土の色が出てしまっている。やはり絵の具で上から塗らないとダメか。今日は持ち帰って、また出直す? いやいや熱子さんのロウリュを体験する日に渡したい。持っていた黒ポールペンで白い箇所を塗ってみますが色が乗っかりません。油性マジックなら何とかなるのに。

ふと、思いつきました。受付カウンターならマジックがあるんじゃないかと。でもたとえあったとしても、何て言って借りたらいいんだろう。迷いつつも階段を駆け降り、カウンターへ向かいました。

結局、この状況を正直に伝えました。話が前後したりして分かりにくかったかもしれませんが、スタッフの方はうんうんと頷いて聞いてくださって、奥から油性マジックを4色出してきてくれました。タオルの色の緑はなかったけど、黒もあるしなんとかなる! お礼を言ってまた、リクライニングスペースに戻りました。

今度はちゃんと色が着きます。よかった。夢中で塗っていたら、隣でリモートワークをしていた女性に声をかけられました。

「それ、熱子さんですか?」

恥ずかしい。顔が熱くなるのが分かりました。カウンターのスタッフさんにした説明を、私は繰り返しました。

「いろんなことがあった方が、絶対いい思い出になりますよ」

そう言ってくださったその女性は、熱子さんのグッズも作られている、筋金入りの熱子ファンでした。私が緑色のタオルの端を黒マジックで塗っているのを見ても、「そういうタオル、熱子さん持ってた持ってた」と励まし、笑わせてくれました。そのあとは熱子さんのロウリュがいかに素晴らしいかを二人で話しました。そして最後に彼女が言いました。

「熱子さんのロウリュ。みんな言うんですよね、なぜか涙が出るって」

その言葉以上の言葉が、私には思いつきませんでした。そうなんです。熱子さんのロウリュは、汗だけじゃなくて涙が出る。


試行錯誤の上、何とか修理を終えて私は受付カウンターに戻りました。スタッフの方にマジックを返しながら、こんな風に直しましたと熱子人形を見せました。「直したなんてわかんない、わかんない」とここでも励まされ(涙

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⬆︎  今回問題の発生したタオル部分です。黒く塗ってごまかしました。下に透けて見えているのは、SKCのカウンターにある料金表。

そしてこれが全体図 ⬇︎

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「あの、この粘土人形、熱子さんに渡していただけませんか?」

スタッフの方にお願いしてみました。来る時にはもちろん、自分で渡すつもりでした。でも、熱子さんのファンの方と出会って思いました。ロウリュが終わった後、熱子さんとの時間を共に過ごすべきなのは、こういう人たちなのだと。私みたいな、にわかファンが勝手に盛り上がって邪魔しちゃいけない。

古くからのファンだからとか、にわかファンだからとか、そういう考え方こそが思いあがりなのだと今になれば分かるのですが。その時には頑なにそう思っていました。誰かに夢中になっている人、何かに熱い人を前にすると、一緒に熱くなるどころか一歩も二歩も後ろに下がる癖が私にはあります。それがこんなところでも顔を出しました。

ところが、

「自分で渡さなきゃ意味ないでしょ」

スタッフの方が間髪をいれずに私に言いました。

「私たちスタッフから渡されるより、本人からの方が何倍も嬉しいから!」

「でも、でも。私が持ってるとまた壊しそうですし」とまだ抵抗する私。

「大丈夫。このままそっと、そーっとしておけば大丈夫」


リクライニングスペースに戻って、先ほどの彼女にカウンターでのやり取りを報告すると、「ロウリュの始まる30分くらい前に渡したら?」とアドバイスされました。そっか。そもそもロウリュ後に裸で粘土を渡そうとすること自体に無理がありました。彼女にお礼を言って、スタッフの方のおっしゃった通り、そーっとロッカーに粘土をしまいました。

時計を見るとすでに11時を回っています。

お風呂に入って気持ちを切り替えよう。久しぶりにゆっくり草加のお風呂に浸かりました。そしてそのあと食堂へ。この日はこれ。というか、またオムライスです。

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美味しかった。お腹いっぱいです。


ここまで書いて、バイト先の最寄駅に到着。冒頭でも述べた通り、この記事は通勤電車の中で書いております。続きは仕事の帰りの電車の中で。


・・・と思ったら、仕事が早めに終わったので、今は駒込にあるサウナ「ロスコ」におります。サウナ入ってビール飲んで、カレー食べながら記事の続きを書いてます。と言っても片手間に書いてる訳じゃありませんよ。いつもの通り、魂込めて書いてます(...酔わないうちに最後まで書かなくちゃ)。

さて。

草加の話に戻ります。オムライスを食べたあと、リクライニングスペースでウトウトしました。目が覚めると14時半。慌ててロッカーから粘土を取り出してカウンターに行くと、ちょうど熱子さんが現れました。大きなリュックを背負って私服姿だったので、もし間違えたらいけないと思って、よーく観察しました。熱子さんはスタッフの方とエレベーターに移動していきます。それでも疑い深い私は、カウンターのスタッフさんに思わず、「あれ、熱子さんですよね?熱子さんですよね?」としつこく尋ねました。「そうそう、熱子さんよ!」と言われて、ようやく納得して熱子さんの元へ走っていきました。

「熱子さん!サウナのサチコです!」

急に後ろから呼び止められた熱子さんは、振り返って「あ!」と。インスタのDMで事前に、「粘土をお届けにいきます」と勝手なことを書いていたので(いつどこに行くとは言ってないけど)、熱子さんはサウナのサチコをすぐに認識してくださいました。私は完全に舞い上がり、「ここに来る途中で粘土壊しちゃって、SKCの皆さんに助けていただいて」とか訳の分からないことを言いながら、「15時の回に参加します。よろしくお願いします」と粘土が入った袋を熱子さんに押し付けて走り去りました。あれで自分で渡したことになるのか、今でもよくわからないけど。

15時近くなると、サ室の前は人でいっぱいに。こんなにたくさんの人を温浴施設で見るのは久しぶりです。もちろん熱子さんのロウリュは満席でした。平日の15時なのに、満席。

熱子さんが登場し、「今日は一回きり。10分ちょっとのロウリュになります」とご挨拶。皆、一言もしゃべらず、拍手だけがサ室に響きます。

静かにロウリュが始まりました。熱子さんがアロマを垂らすと、蒸気の音とともに草加の熱いサ室がさらに熱くなります。タオルを思い切り振るスペースすらなくて、「いつもどんな風にやってたっけ」と熱子さんが苦笑いしてます。途中でタオルを替えながら、なんとか熱波を皆に届けようとする熱子さん。一人ひとりに扇ぐことができない状況であっても、端に座っていた私にまでしっかり風が届きます。いつもなら様々なタオルさばきを見せてくれる熱子さんが、一つの扇ぎ方を繰り返しています。それは私が熱波師検定Bで教わった基本の扇ぎ方。小気味好い音が熱子さんのタオルから聞こえてくるたびに、この扇ぎ方の奥深さを実感します。

熱い。あまりの熱さに、一人ふたりと退出していきます。流れていた音楽から、「あなたに会えてほんとに良かった。嬉しくて言葉にできない」という歌詞が聞こえてくると、あちこちからすすり泣く声が。

2周目。さらに退出する人が増えていって、とうとう熱子さん自身がその場にしゃがみこみ、「これで終わりにします。少し早くなってすみません」とおっしゃいました。

皆が一斉に外に出ると、熱子さんもそのまま誰とも語らずに去っていきました。以前なら、外気浴をするみんなを熱子さんが一人ひとり扇ぎながら、短い言葉を交わしたりしていたのに。今は沈黙が一番の思いやり。そして熱子さんへの餞別なのだと皆が分かっている。それがとても辛かったです。


着替えた私は再び食堂へ。木曜レディースデイはクラフトビール飲み比べトリオセット1300円が700円です。

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ロスコでもクラフトビールの飲み比べを頼んだことがありますが、大抵普通のビールが一番いいと思ってしまう私。しかし今回は真ん中の「アフターダーク」が一番美味しかった。ブラックラガーです。そしてそれぞれのビールに合うおつまみが、その下にあるというオシャレな構成。アフターダークには苺のチョコレートとイチジクです。ぴったり合いました。ほろ苦いビールの美味しさも、この時の私の気分にぴったりでした。なんて。


帰りのラッコバスに揺られながら、熱子さんのことをずっと考えていました。

熱子さんは鳥取という新しい場所で、サウナやロウリュを広めていく。関東でこれだけの人気がありながら、一からまた始めるその勇気に頭が下がります。

大抵の人はこれまでやってきたことがうまくいかなかったから、失敗したからという理由で新たなことに挑戦するものです。私がその代表(笑)。でも熱子さんは違う。一つのことをやり遂げたからこそ、違う地も踏もうとしてる。熱子さんが見ているものは、私なんかが考えるより、もっともっと遠くにあるのかもしれません。


次の日、熱子さんから粘土のお礼メールをいただきました。そのお返事に私は「熱子さんのロウリュは涙が出る」と書き、その理由も書き添えました。でも今思うと、熱子さんのロウリュによって出てくる涙は、そんな言葉にできるようなものではなく、言葉にできないから出てくる涙に似ています。

サ室で熱子さんが流した音楽。それは熱子さんからお客さんに向けてのメッセージだったのかもしれないけれど。私たちサウナーこそ、

「あなたに会えて、ほんとに良かった」

と、思っているのです。

五塔熱子さん。私のようなにわかファン(まだ言ってる)にも優しくしてくださってありがとうございます。熱子さんが熱波師である限り、また必ずお会いできる。熱子さんのロウリュを体験できると思っています。熱子さんのホームは関東や鳥取だけじゃない。全国にあるはず。

さて、私もそろそろ家に帰ることにします。ロスコでだいぶ酔ってしまったため、後半の乱文お許しください。今回もちっとも簡潔に書けなかったな。

ロスコのテレビに首相が映っています。こんな状況ですが、皆さんそれぞれのやり方に従って、どうぞ楽しいサウナライフを。


サウナのサチコより。

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