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「百合子がととのうまで」(ユ道)
第1話 『大沼百合子55歳、独身。仏生山温泉に行く』
初めまして。大沼百合子と申します。大沼です。小さい池の百合子に似てるとよく言われますが全くの別人です。私の方がひとまわりくらい若いはず。55歳グルシンです。いやだ、シングル(独身)ってことよ。
注)グルシンとは水風呂の温度が一桁台のこと(サウナー用語)
それよりサウナーの皆さん。今から少し、私の話を聞いてくださいませんか。
私は契約社員として長い間ひとつの会社で働いてまいりましたが、このたび契約を打ち切られてしまいました。いきなりです。コロナのせいで送別会もなく、もちろん退職金もなく、花束一つで会社を追い出されました。
ひどい・・・。
後ろにいるのは上司です。誰かに似てるって? もう、おじさんなんてみんな同じ顔ですってば。
私は男社会の中で精一杯頑張ってきました。いえ男以上に頑張ってきたのです。それなのに、それなのに・・・。
ひどい・・・。
正直、途方に暮れています。この年で次の職場を見つけるのは至難のわざだから。家で待っている爺やになんて言ったらいいのか。私はしばらく旅に出ることにしました。
東京よ、さようなら。
Tシャツが未練たっぷりですって? たまたまです。
まっすぐ羽田に行き、すぐに飛び立つ予定の飛行機を探して飛び乗りました。行き先はなんと香川。1時間もかからずに高松空港に着きました。香川って何があるの? うどんしか思いつきません。でも検索してをみると、こんぴらさんや瀬戸大橋、栗林公園など観光地は色々あるようです。とにかく自分に染み付いた東京の会社の匂いを消したくて、私は温泉を探しました。
「仏生山温泉」
ずいぶんと渋い名前。ここに向かうことにしました。
高松空港からならバスに乗って「桜木神社前」で降りて徒歩40分くらい。高松駅からなら「ことでん」という2両しかない可愛い電車に乗って「仏生山駅」で降り、徒歩で15分くらいでしょうか。私は桜木神社前から歩きましたよ。何も考えずに、ただひたすらお湯を目指して。
あっ・・・た!
オシャレ〜♫
え?
写真が小さいし、背景が夜になってるって?
サウナーなのに細かいのね。小さいことにこだわる人間はととのわないって爺やが言ってたわ。写真はね、ホームページからお借りしました。
中もすごくオシャレで驚きました。しかもこんなにオシャレなのに若いカップルが一組もいなくて常連さんばかり。静かなのよ、土曜なのに。でも私が一番驚いたのは、
脱衣所です。
丸見えなの。
露天風呂から脱衣所が丸見え。大きなガラス一枚で仕切られているだけなのよ。すごいでしょ。お日さまが燦々と降り注ぎます。
あら、届かない・・・。
年をとると体が硬くなって。これからはフロントホックにしようかな。いけない、サチコnoteの読者は男性が多いんだっけ。サービスサービス(笑)。
お風呂はとろとろヌルヌルのお湯だから、滑らないように注意してね。噂の露天風呂はぬるいお風呂と熱いお風呂が何種類もあって、交代浴ができるようになってます。ぬるいお風呂って言っても相当ぬるいから風邪ひかないように気をつけて。それから各お風呂は小さいから、混雑時は大変かも。源泉掛け流しのため(成分が薄まらないように?)敢えて小さくしているそうです。私が行った時はそこまで密にならずにすんでよかった〜。
これでサウナがあったら最高なんだけど・・・と思っていたらありました。室内の奥の方に「サウナ」と書かれた扉が見えて興奮したわ。早速入ってみようと思って扉を開くと、いきなりご婦人がこちらに足を広げて寝ていたからびっくり。サウナ・・・というか岩盤浴っぽい感じね。しかも二人くらいしか寝られない。中もほんのりあたたかいだけで、正直サウナーには物足りないかも。私も熱いサウナを期待していたから、ちょっと拍子抜けでした(笑)。
こんな失敗も、旅ならではの楽しみね。
やっぱりここは露天風呂がいい! 交代浴を楽しみながら、秋の空を見上げました。
あぁ、ととのいたい。
つい思っちゃった。
勘違いしないでね。サウナがなくても仏生山温泉はすごくよかったのよ。これまで経験したことのないお風呂だったし、何よりオシャレで清潔。休憩するところには50メートルにわたって古書が置いてあって読めるし、お土産も渋い。静かにひっそりと上質のお湯を楽しめる大人の施設というのが、百合子の感想です。
夜は高松駅近くの「ススム酒場」というところに行きました。もうここも本当にオススメ。すんごく料理がうまい。中でもハマチのタタキが絶品! そして安い! 埼玉の大宮あたりにあったら週3は通いたい!
いやだ私ったら、つい・・・。なんだかんだで楽しんじゃった。香川の旅。
埼玉に帰ったら、疲れてぐっすり。
爺やがいくら起こしても、なかなか起きなかったみたい。(目を開けて寝ています)
今回は大沼百合子がお届けしました。途中からサチコなのか百合子なのか自分でもわからなくなったりしたけど、たまにはいいでしょ。というか、これから結構出てくるかもしれません。大沼百合子55歳、失業中。サウナでいろんな人に出会い、昔のことを懐かしみ、ととのうまでを描いていきます。どうぞよろしくお願いいたします。
サウナの情報以外はフィクションです。(みんなわかってるし)
おまけ。
百合子とサチコが香川にいる頃、世の中はこんなことで盛り上がっていました。
その土地の新聞て面白い。ホテルの部屋に置いてあったものを持って帰ってきました。
もう11月。寒くなってきました。サウナの季節ですね(春夏秋冬いつでも言うけど)。今夜もどこかで誰かがととのっている。それはあなたかも・・・。
いってらっしゃい!!
サウナのサチコより。