【観劇感想】ミュージカル「憂国のモリアーティ 」Op.3を観て
タイトルの通り、ミュージカル「憂国のモリアーティ」(通称:モリミュ)のOp.3を観劇してきた人間である。普段、感想を特別したためる事もなくただ、「すごかった〜」とだけ騒いでいる人間なのだが、溢れる思いを何か形にしたいと文字を書き始めた。
ガッツリネタバレしているので、苦手な場合は読まないようにしていただけるととても助かります。
公演の公式HPはこちら↓
モリミュといえば
モリミュと言えば、「生演奏」、「楽曲」、「歌唱力」ではないだろうか。
いい意味で、2.5次元ミュージカルから一線を画した作品だ。インタビューの合間からも、互いを尊敬する心、何よりもより良い作品を生み出すことへの熱い情熱を感じているのは私だけではないと思う。それは、メインキャストだけではなく、関わる方々全てに当てはまるように思う。
モリミュのテーマ曲
モリミュのテーマ曲に、感涙である。
実は、私事だが、緊急事態宣言で全ての舞台が中止延期になったあの頃から時が経ち、初めて観劇出来た舞台がモリミュのOp.2だった。座席を半分に間引いての観劇ではあったが、幕が開くという事が当たり前では無い事実と、こうして目の前で見ることが出来る喜びに涙が溢れた。各所で起こる拍手も、誰もが懸命に感謝と感動を伝えている事を感じたものだ。
世界はまだ混乱の中ではあるが、モリミュを再び観劇出来ることに心が締め付けられた。
モリミュのテーマ曲は、初演からの流れを汲みつつ、各公演の新キャラの色を魅せる素敵な楽曲だと思う。モリミュという世界観は続いていながらも、また新たなモリミュが始まる事を予感させる様は、毎回感動する。
そして、配信を何度見ても、思うのだがテーマ曲に入る演出が好きだ。
ジャック・ザ・リッパーが紹介され、ステージ上には多くのキャストが立っている。テーマ曲の伴奏が始まると、スポットライトがバイオリンに移り、次の瞬間にはモリアーティ兄弟にスポットが当たる。佇むのは3兄弟だけであり、先程までいた、多くのキャストや椅子などの道具が消える様が、美しく感じる。
オールキャストの歌声が、会場に響いた時。
――そこはもう19世紀末の英国だ。
ジャックと3兄弟の出会いの歌
「♪あぁ僕達が〜この先僕達だけで生き抜いていくために」
の箇所の歌で、一気にテンションが上がっていくのを感じた。
伴奏がクレッシェンドしていくことに加えて、低音が目立つようになる事も、雰囲気を作っているのか。歌唱も、ソロから3兄弟になることで、ハモリが厚みを増してくれている。また、再びソロに戻った後も、アクセントを感じる伴奏がより力強さや、意志を感じる。
原作を、読んでいない人も、ジャックがウィリアム陣として生きていくことに違和感を感じることなく受け入れられるシーンなのではないだろうか。
続く歌でウィリアムは歌う。
「♪この身が闇に落ちても」
この言葉が重い。
シャーロック謎の歌
犯罪卿の謎は、鈍い煌めきではなく、シャーロックの琴線に触れた一筋の光のようなものであると感じた。
ホワイトチャペルでの鬼ごっこ
ホワイトチャペルで鬼ごっこに入るシーンで3兄弟が歌い
「♪3人で『ジェームズ・モリアーティ』」
で声が合わさるところがとても好きだ。
とても、好きなのだが二人しか歌っていないように聞こえる。(歌ってます??)ここからも、一人で背負う事を暗示しているようで、苦しくなった。その後の、3兄弟の掛け合わせを目立たせるためだと言われるとそうなのかもしれないが、考えてしまう。
その後、ルイスは迷いのない顔を、アルバートは憂う顔を、そしてウィリアムは揺らぎを一瞬感じさせるように見えるのは私だけだろうか。
しかし、その後はウィリアム強い意志を持って歌っている事を感じる。それがまた、本人は晒す気のない、見てはいけないものを見てしまったような心地になり、私の胸がしめつけられる。
続く鬼ごっこのシーンでは、上手く表現していると感じた。
また、ボンドがモランに認められるシーンで、ボトルを渡しているところに、原作を見出して感激した。
ウィリアムとルイスの殺陣のシーンにニコニコしたのは、私だけではないだろう。間合いを理解している兄弟による殺人は、華麗であった。
シャーロックの嘘か真実かのシーン
シャーロックは、舞台の端で座っていても、惹きつける力を感じる。存在感がそこにあるのだと思う。
また、犯罪卿をスポットライトで表す演出が、とても好きだ。犯罪卿が存在することはわかっていても、ハッキリと結論として形付けることの出来ないことを表しているように感じている。
ゴルゴタへの道
アルバートを思うと落涙してしまう。アルバートだけが、ウィリアムが一人で死す事を勘付いていることに私は、何を思えばいいのだろう。また、ウィリアムを誘ってしまった事への罪悪感がゼロではない事が、明示されてしまうと苦しくて仕方がない。
そして、先程のシャーロックのシーンとは異なり、スポットライトの中にウィリアムがいる事に、私は、感激した。演出が好きすぎる。
風に吹かれるウィリアム
モリアーティ陣の誰にも晒していないウィリアムの心を、のぞいている。私は、何を見せられているのだろう。感情が入り乱れた。
天才数学者でクライムコンサルタント。完璧な計画を発案し、想定通りにならない事などない。超人だと思っていた。
でも、それは違った。ウィリアムにもごく普通の感情が存在しているのだと、あらためて気づいた。痛みを感じない人間が、弱き者たちの声を拾うことは出来ない。なんてことを失念していたのだろう。
それと、同時に究極の自己犠牲の上での憂国の志を抱き続ける彼は余りにも孤独で、辛くなった。
そして、その孤独のウィリアムに希望の光のように風を吹かせるのがシャーロックなのだ。しかし、その風に吹かれることすら、神に許しを請うように思わなくてはならないのか。いや、許しを請うという発想に至っているウィリアムの心を思うと苦しくなった。
話は変わるが、ウィリアムの指先が大変儚く美しいものだった。
ホワイトチャペルの鐘の音歌
シャーロックの裏で、ウィリアム史上一番低いパートを歌われているのでは?!と驚いた曲でもある。(検証等はしていないのであくまで感覚)その後すぐにトーンが高くなるあたりやはり難しい譜面だと感じた。このカンパニーでなければ歌えない、このカンパニーで歌えるレベルに挑戦している譜面であるとひしひし感じている。
音楽に詳しいわけでも、ミュージカルを沢山見ているわけでもない人間の戯言なのだが、譜割が面白く、場面が次々に展開されるため、繰り返し各パートを追いながら聞きたいと思ってしまう。
パターソンの歌
好きだ。
正義が通らないことに、嫌気がさしたパターソンが蝙蝠になり、ウィリアムの手をとる。嫌気がさすようなことがなければ、蝙蝠になるというような選択肢は彼の中で生まれることは無かったのだろう。
心の輪舞曲
犯罪卿からの絶対的信頼に気づくシャーロック。
そして始まる楽曲が美しい。
ウィリアムの動きに合わせて、操られるように動くシャーロックが、私には苦しくて愛おしくみえる。
それぞれの、指先の動きをみていても想っている事が伝わる。差し伸ばされた手の柔らかさが、胸をうつ。
その日が近づいている歌
ウィリアム陣の皆が、ウィリアムに向ける歌が切ない。どうして、互いをこんなにも想っているのに……。
犯罪卿が義賊だと気がついたシャーロックの迷い。
大学
ウィリアムが、生徒たちから、ごく自然に慕われている姿にドキッとした。
ホームズが入室し、
「ホームズさん!」
と言った瞬間に、ウィリアムの心は踊ったのだろう。
ウィリアムがビルに対して
「同じ地平に立っている」
という瞬間が愛おしい。
犯罪卿であるウィリアムとしてはシャーロックであり、数学者としてビルを得たように思えた。
シャーロックが犯罪卿を断罪すべきだと述べたあとのウィリアムの表情に心が奪われてしまう。
I will /I hopeの歌
「♪きみが(おまえが)『いるから』」
のシーンで互いに向けて手を伸ばし、すれ違う演出に胸を打たれた。
まだ、交わる事が許されていないようだ。しかし、確実に最後の事件近づいている事が苦しくなる。
以下各キャラ周辺の感想
ミルヴァートン
ウィッグの色が良い。顔を出さないシーンでは、黒く見えづらいようになっているが、光が当たると白みが増すように見える。
余りにもミルヴァートンで、私は敵でありながら惹かれてしまう。
レストレード
人形劇のシーンに思わず笑顔になってしまった。
初演公演日替わり内容で、”欲しいもの”をいうシーンがあった。
レストレードの答えは
「出番」
Op.2を経てOp.3。
ついに!!メインとして歌った!!!!!!
原作的にも、特別レストレードの出番が減らされている訳では無く、出て来ないだけなのだが、感動してしまった。
内容は、最高なので見て欲しい。
ボンド
モリアーティ陣に一気に華が生まれたように思う。
ボンドを交えて一見平和に見えるやり取りが、貴重な時間のように思え、私としては輝かしいほどに苦しいシーンのひとつになった。
パターソンと飲むシーンで、車の音が鳴る事もとても嬉しい。
アータートン
「♪これが正義!私が正義!〜」
と歌うシーンで、何を言っているんだと思っていた。どう考えても、正義では無いだろうと。
わからなかったのだが、やっと納得がいった。
手に入れた境遇を失いたくない気持ちや、正当化するための思索、どれも人間らしいように感じた。
ルイス
歌声に一層の磨きがかかった様に思えてときめいた。
兄を想う弟は、シャーロックに嫉妬していた時とは異なったように感じ、時の経過を感じた。
最後に
特に知見もない感想を、ここまで読んでくださりありがとうございます。
私は、作品を大切にしているカンパニーと、公演中に進化を続けていく舞台が好きです。
紛れもなく、モリミュはその部類に入ります。
どうかこの先も、続きますように。