AWESOME Choices Issue no.022 研究部門+知財部門でのキャリアに加えて、産学官での経験を活かし、企業の「強み」を守る知財支援に従事するというキャリア
中川美和さん
現在は関西地区の企業・大学への知財支援を担当しているということですが、高校や大学での進路選択の理由について教えてもらえますか?
もともとは歴史好きだったので文学部史学科に進学予定でした。その当時、バイオテクノロジーブームでTVや新聞・雑誌で目に触れる機会が増え(まだ、インターネットなど無い時代でした)、生命を解明する事の面白さに惹かれてきました。さんざん迷って、この時代でしかできない分野に飛び込みたくなり、高3の途中で理系に進路変更しました(文系クラスだったので、理系クラスだけの科目は意外と大変でした)。その後、大学の学部選択時に高校の先生とどの学部にするか相談し、当時、遺伝子工学が一番熱い農学部に決めました。
これまでに経験したお仕事を選ばれた理由や仕事内容について教えてください。また、企業から大学、大学から現職とシフトを重ねてこられていますが、その時の思いや、今振り返ってみたときに感じたことなどもあわせて教えていただきたいです。
最初に就職した企業を選んだのは、バイオテクノロジーと半導体技術などの他の技術を組み合わせた、複合領域のものづくりをやりたかったのが理由です。農学部の同じ分野(農芸化学・遺伝子工学)の同級生は、製薬、酒造、食品、技術系国家公務員への就職、それから博士課程進学もありました。博士課程も勧められましたが、当時は大学より企業の研究環境が魅力的だったので修士での就職を選択しました。就活では製薬企業も内定していたのですが、バイオセンサなど、新しいものづくりがしたい気持ちがあり、バイオ分野事業に進出したばかりの総合印刷メーカーに決めました。最初の部署の研究所では、バイオ、半導体、ケミカル、電機、いろんな分野のメンバーと日々交流する事がとても刺激的でした。その後、育児と仕事の両立のため、より時間に融通が利く知的財産の仕事にシフトしました。
本音では研究職を続けたかったのですが、夫婦双方の実家が遠く、ファミリーサポート等を活用しても研究業務を続けることが難しかったことと、 当時は地方勤務で育児と仕事を両立している技術系女性社員の前例がなかった事から、育児両立中の女性社員がキャリアを継続する事に対して会社の理解が得られづらく、 子供が小さく、子育てに手のかかる時は、職場の要請もあり知財の仕事に移らざるを得なかった事情があります。その後、長い時間をかけて研究業務も再開しましたが、知財の仕事を頑張りすぎたせいか(笑)、知財業務での成果が評価され知財の仕事にシフトする事になりました。
「知的財産」という言葉にはなじみがない方が多いかもしれません。企業や大学の研究成果は「発明」、それ以外にもデザイン、ブランド、そして広告のキャッチコピー、文章や音楽、アプリなどのプログラムは著作物という知的財産です。製造業では自社の技術をいかに知的財産権で守るかが大きな事業課題です。企業時代は、研究部門、開発部門の発明を発掘・ブラッシュアップして特許として権利化する、他社の特許出願動向を分析して自社の事業戦略を検証・方向づけするような仕事をしていました。
その後大学に転職したのですが、その理由は、部署異動で通勤が長くなり、育児と仕事の両立が難しくなってきた頃、たまたま近くの大学で知財部門の募集があり応募したのがきっかけでした。それに加えて、先端研究の知財に関わりたいと思ったのも理由の一つです。学内の研究から、社会実装できそうな発明を特許出願すること、大学の研究を事業化するための出願戦略を考えるお手伝いをしておりました。
そして現職にシフトしたきっかけは、企業や大学の仕事で、中小企業やベンチャーと仕事を一緒にする機会があり、技術やブランド・企業理念でキラリと光る企業をサポートしたいと思い志望しました。企業・大学勤務時代の経験を活かして、中堅・中小企業、スタートアップが抱える知財課題の相談・助言や、知財の事を知ってもらうためのセミナーでお話させて頂いております。
振り返ってみて、初めての仕事が企業でしたが、この間、バイオ以外にも、電池分野や情報系などの仕事にチャレンジしたり、研究部門であっても、製造現場や営業の方とチームを組んで仕事をしたりとかなり多様な経験をする事ができました。大学は、企業の仕事の仕方と違う事があり、はじめは戸惑う事も多かったですが、何より、先端研究の知財の面でお手伝いできることがとてもエキサイティングでした。現業は、まさに現在進行形で振り返るという感じではないですが、進化し続ける技術の中で新しい事業にチャレンジする企業様の支援をする事にとてもやりがいと感じています。
お仕事の中でご自身が「理系が出ているな」と感じることなどはありますか?
企業・大学で、いろんな分野の技術に関わってきたので、相談に来られた方の知的財産の技術や課題のツボはいち早く発見できているように思います。仕事やプライベートで問題が発生した時に、現状分析からロジカルに解決方法を見出していく考え方は、理系で身についたように思います。トラブルや壁にぶち当たった時に、何が問題の本質なのか、現状分析から解決策を見出すやり方が、「理系かな」と思います。あと、新しいものが好きなので、情報機器やアプリは新しいものが出たらすぐに飛びついてしまうところが理系らしい一面なのかもしれません。
理系を学んで、理系以外のお仕事を選んだことで感じたメリットやその逆などもあれば、是非教えてください。
営業や広報など、ビジネスには理系以外の仕事の方も関わっていますが、仕事につながる人とのネットワークづくり、製品の魅力をアピールするプロモーションなど、理詰めではない人間力的なものは、常に磨きたいと思っています。
あとは、ついコストなど経済的な部分を考える事が後手になりがちなので、私だけかもしれませんが、そこは少し弱い部分かなと感じています。
「理系を学んだこと」や「リケジョ」に対して何か思うことなどあれば、教えてもらえますか?
「リケジョ」という言葉が使われるのは、理系女性がまだ少数派だからと思っています。日本には「女性は理系が苦手」という先入観がまだまだ根強いようなので、子供たちが男女の別なく理系・文系に限らず、いろんな分野の学問・知識に触れる機会がもっと増えるといい、と考えています。(男の子が裁縫・料理に興味を持ちやすい環境を作るのと同じくらい、女の子が工具やプラモデルに興味を持てる環境など)
これからの進路を考える女子中高生や理系学部で学んでいる学生の方などに向けて、ぜひ一言アドバイスをお願いします。
理系分野は、変化が激しい分、ワクワクでいっぱいです。理系で新しい未来を切り拓いてください!
最後に
高校進学時に生命を解析することの面白さに惹かれたことから理系の世界に入り、現在は前職・大学での知識を活かしながら、企業のサポートに従事されていることがよくわかりました。育児と仕事の両立のために知的財産の仕事へシフトし、今では最前線の課題解決のお仕事にやりがいを感じている美和さんの更なる活躍を応援しています!貴重なお話、ありがとうございました。
あとがき
いかがでしたか?
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