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飾りじゃないのよ乳首は


娘が幼稚園を卒園した。


ランドセルに文房具を入れたり出したりしながら小学校に行くのを楽しみにしている。

あの小さな赤ちゃんがもう学校に行くなんて!!

子どもの成長スピードについていけない。
あっという間過ぎて子どもだったことも忘れていきそうだ。


ギリギリ思い出せる今のうちに赤ちゃん期の子育てのことを書いておこう。


産後は「聞いてないよー!」のオンパレードだった。


授乳を始めて数日。
明日こそ乳首がもげるかもしれない。
大きなかさぶたが取れたとき、本当に乳首が取れたかと思った。

2,798gで生まれた娘。
生後1ヶ月を過ぎるまでうまく母乳を吸い上げることが出来なかった。


はじめての授乳。


どうやってあげればいいのか全くわからない。 


自分が生んだ子どもなのに、自分から母乳出てるのに、あげかたが分からない。


首が座っていないほやほやの赤ちゃんをどうやって抱くのか。
どうやってあの体勢にするのか。
授乳ってこんなに難しいんだ。
そんなの聞いてない。



夜間授乳で細切れの睡眠。
出産で受けたダメージがなかなか回復しない。

うちの子は良く寝てたから全然大変じゃ無かったよー
なんて言う人もいる。



感じ方には個人差がある。
母親の性格もあるし、子どもの性質も関係するだろう。
近くに頼れる親がいたりしたらまた違う。

私はあのとき、2歳くらいまでの子どもを世話する間、
何度も思った。


「死ぬかもしんない!!!」


例えば、子を産み育てている人に対してのこういう表現がある。


「普通のおばさん」

あるいは謙遜して

「私なんてなんのとりえもない平凡な主婦です」

とか。

そういうの今後一切禁止して欲しいって思った。


だって私は誤解していた。



余裕できるっしょ!
と軽く考えていた訳ではなかったけど、まぁどうにかなるんだろうな、くらいに思っていた。
まさかこんなに大変だとは。


子育てって誰にでもできる、とか、子どもを生みさえすれば自然にできるようになる、とか。そういう風に少しでも誤解させるようなことはもう誰も言わないで!って思った。

子どもといると自分の時間がない。
大人のようにコミュニケーションがとれる訳ではないので殆どが独り言だ。


物言わぬ赤子に、
笑いかけた方がいい。
喋りかけた方がいい。
気持ちを代弁せよ。

と言うことで何かと働きかける。

オムツを替えて
「さっぱりしたね」

授乳を終えて
「お腹いっぱいだね」

全力でいないいないばあをして
絵本を読みきかせる。
童謡を何度も真剣に歌うので上手く歌えるようになった。(自分比)

私の場合、一番辛かったのは、体力だった。睡眠不足が続くのがしんどい。


眠りたい!
一人でゆっくりご飯が食べたい!
朝まで一度も起こされずに寝たい!
そうできるならもう何もいらない。


抱っこのしすぎて指の関節がずっと痛い。
妊娠中はなんともなかったのに、出産中に興奮し過ぎたからか、妊娠高血圧症になった。
妊娠が終わってから妊娠高血圧症に罹るなんて。これまた聞いてない。


子どものことは可愛い。
愛おしくて仕方ない。
この上なく大切な存在だ。


子どもが赤ちゃんのころのお世話は、けれど同じく大切なはずの私自身のことを蔑ろにすることでしかできなかった。

体力がギリギリだと、メンタルも追い詰められていく。

産後2週間、突然夜中においおい泣いた。


保育園のとき。
さっちゃんはダメ、と通せんぼされたこと。

小学校5年生のとき。
女の子のグループ内で仲間外れの順番が回ってくるのが怖かったこと。

娘がこれから遭遇するかもしれないネガティブなこと。
それら全てから、私は守ってあげられない。

そう思って大泣きした。

娘からしたら大きなお世話だ。
今思えば命というものに対して大きな誤解をしていた。すいも甘いも苦いも辛いも、そういうのを全部味わいたくて生まれてきたのだ。ネガティブな感情を感じることも人生の醍醐味だ。
邪魔してどうする。


いいことばっかりの人生だったらいいなぁ!なんてのび太が言ったらドラえもんなら説教するところだろう。


それに私と娘は別人格だ。
私が通ってきた道を必ず娘が通るなんてことはない。
それでも、ほんの2週間前までは1人の人間だったのだ。別人格と認識できるまでには時間が掛かる。


次に大泣きしたのは娘が1歳4ヶ月の頃。 
RSウィルスに罹った。

1日目。
鼻水が止まらなくて眠れず、泣いてぐずる娘を抱っこしてバランスボールで朝まで揺れた。

揺れながら思う。
「これも後からいい想い出になるのかな」
まだ余裕がある。

4日続いた。
無理!
体力の限界だよ!
揺れるの無理!
眠りたいよ!
娘と一緒に泣いた。


はじめての子育て。
必死だった。



子どもと一緒に車に乗っているとき、ふと思った。
例えばこのまま事故に遭うとする。
できる限り生かそうとするのは自分の命じゃない。
娘の命だ。


平凡な自分。
親子というありふれた関係。
だけどそこに、とんでもなく非凡な感情が湧いてくることがある。


赤ちゃんが居る空間の甘い匂い。
必死に母乳を飲む姿。
言葉にはならないけれど、必死で何かを伝えようと出てくるあーとかうーとかいう可愛い声。


あの頃の娘にはもう二度と逢えないと思うと、切なくなります。






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