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【美術室】3次元とフィクション

先日、高峰秀子さんの展示を見てきました。
駅の看板に広告が出ていて、名前も顔も知らなかった彼女の事が何故だか気になって、機会があったので行ってきました。

幼少期の写真から亡くなる前までの彼女の姿が展示されており、1人の女性の一生を見たような感じがしました。

今回は展示の感想と、この展示で写真を見た時に近い感動を得たMVをご紹介します。




登場人物 - ある女


展覧会に入ってすぐの展示コーナーには、出演されていた映画のワンシーンが並べられていました。どの高峰さんも、その世界にいる「1人の女性」になっており、役者としてのプロフェッショナルをものすごく感じました。自然体ではなく、当たり前に不自然ではなく、「その物語の人物はこういう表情をする」というものを表現する力を持っている人なのだと思います。少し表現が違うかもしれませんが、二次元化されている感覚に近いものを感じました。完璧なフィクションを三次元上に表現している感じ。語彙力が乏しくて上手く伝えられませんが、「すごい」と思いました。

そんな仕事として撮られた写真の中に、「高峰秀子」を感じる写真がありました。それが、早田雄二さんが撮った、高峰さんがデッサンを持っている写真です。彼女は絵を描く事に興味があったようで、自分の趣味と向き合っているその瞬間に、彼女のパーソナリティを垣間見た気がしました。

この展覧会に母と一緒に行ったのですが、その母が同じ写真を見て、「最近撮られたものみたい」と言っていました。どうしてそう感じたのかなと考えてみると、「何気ない瞬間を撮ったものだから」かなと思いました。

日常よく見る、あるいは最近の写真は、普段の何気ない様子を撮ったものだと思います。出版されている写真集はそのような感じがしますし、普段の感じを見せたいというテーマのもと、撮影されているものが多い気がします。でも、高峰秀子さんは作品として成立させているから、全てキマっている。「この空間にいる私はこうあるべき」というものが見えていて、その表情やポーズを取る。そういった写真が多く並んであった中、ふと高峰さんのお人柄を感じる瞬間を切り取っていたので、そのように感じたのだと思います。




登場人物 - タクシー運転手


話は変わりますが、先日Teleさんのラジオで、クリープハイプさんのナイトオンザプラネットを流していました。ラジオの中で初めて聴いたのですが、とても自分好みで、そのままMVを見にいきました。
(完全に忘れていたのですが、「後で見る」に追加していました。)

この曲は『ちょっと思い出しただけ』という映画の主題歌になっており、ヒロインの伊藤沙莉さんがMVにも登場しています。設定は映画と同じ、伊藤さんがタクシー運転手で、その後ろにクリープハイプの尾崎世界観さんを乗せて、バンドの演奏セットが置いてある場所まで送るというのが、MVの流れです。

このMVを見て、私は今回お話ししている高峰秀子さんの展覧会を思い出しました。タクシーに乗るお客さんを乗せて目的地まで運ぶ。日常を切り取っているのですが、よくある日常というより、運転中から到着までがちゃんとフィクションになっている感じがしました。届ける先が「バンドセットが置いてある屋外」という非日常感があるにしても、MVを見終わった後、短編小説の読後間に似たものを感じました。

伊藤さんが運転しているシーンで様々な風景は映るのですが、背景の雑音が少なく、登場人物の2人を中心に世界が動いている感じがしました。ここに、私が感じた小節っぽさがあるのかもしれません。そしてその運転している伊藤さんの佇まいが、100%タクシー運転手なんです。「こういう人いるよね~」の100%ではなく、「伊藤沙莉」という人間が0%で、「登場人物 - タクシー運転手」として存在していると感じました。(伊藤さんの何を知っているんだと言われそうですが)

この高峰さんと伊藤さんに共通するものは何か。私が思うに、表情管理だと思いました。特に目から「私は確かにここにいるぞ」というオーラのようなものを感じました。ふわっとそこにいる感じではなく、しっかりと定まった視線が、視聴者の意識下にきちんと存在させているのだと思います。



写真と映像の違いとは?


私は今まで何度か写真展に足を運んだことがありますが、その度に、写真は動くものを切り取っていると感じます。だけど一瞬ではなく、その奥で動いているように見える。止まっているけれども、ストーリーが見える。つまり写真は、抽出された世界の新たな物語の入り口のようなものだと思います。しかし、高峰秀子さんが映っている写真は、0秒の「切り取られた」ものでした。その他の被写体との違いを、今回の展示を見て感じました。

では、映像との違いは何か。映像こそ動いているものを記録しています。映像が見せているものは何なのでしょうか。

展覧会終了後から数日考えてみたのですが、結局今まで答えが出せていません。なので、そのヒントを探るべく、高峰秀子さんの出演されている映画を来週までに見てみようと思います。どの作品を見るかは特に決めていないので、投稿されるまでのお楽しみです。答えが出せるのか、その辺りも曖昧ですが、来週の集合場所を、また【美術室】にしたいと思います。今回の展覧会を見た方も、そうで無い方も、配信サイトにいくつか作品があるので、ぜひ見てみてください。

それじゃあ今回はここまで。ばいばい!


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ナイトオンザプラネット / クリープハイプ


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