オフシアター歌舞伎『女殺油地獄』(観劇記録19年5月)
中村獅童さん企画のオフシアター歌舞伎『女殺油地獄』を天王洲の寺田倉庫で観てきました。
いつもどおり感想ツイートしようと思ったんだけど、ものすごい長いスレッドになってしまいそうなのでnoteで。
結論から言ってものっすごく面白かった!!!
観終わったあと興奮して、10人近くにLINEしました。
現代的、あるいは「今の時代に即した」歌舞伎、というのは、スーパー歌舞伎にはじまりコクーン歌舞伎、六本木歌舞伎etc…、若い俳優中心に様々な展開がされているけど、それらの中でもダントツに今回の「オフシアター歌舞伎」はワクワクしました(※私の主観です)。
何がワクワクしたか。
キーワードとしては“生々しさ”、でしょうか。
コンクリ打ちっぱなしの床や壁、配管むき出しの天井。センターステージ(客席が四方を囲んでいる)はかなり小ぶり。一辺何メートルくらいだろうね? 5メートルくらい?
パイプ椅子。開演前のサイケデリックな映像もいい。
なんなら音響が少々悪く、ちょっとワンワン反響しちゃうところすら、雰囲気でてる。
この無機質なシチュエーションと『女殺油地獄』という不条理で救いのない演目が非常によくマッチしている。
あともちろん、演出の赤堀さんの起用も。
これらの要素がうまくマリアージュされて、けっして現代劇ではない、ちゃんと「歌舞伎」なんだけど、300年前のこの事件が「いま現代の社会の病巣」から生まれた事件だ、と思ってしまいそうな生々しさがあった。
なんかもう…企画に脱帽です。
ああ、『女殺油地獄』ってこれが正解だったんだ!ってチラっと思っちゃう。いや、歌舞伎座で観るのも好きだけど。
獅童の与兵衛は軽くてガラが悪かった。
例えば仁左様の与兵衛なんかは(与兵衛といえば仁左様)、甘えから道を踏み外した、どこかで歯車が狂ってしまった感があったけど、獅童のはもっと根性ひん曲がってます。世間のこと逆恨みしてそう。堕ちるべくして堕ちてったダメ人間。ちょっと反省するんだけど、だからこそさらに自分のこと正当化ちゃう。こういう若者いそう…。リアルだった。
お吉と小菊の二役をやる壱太郎くん、相変わらず上手し。
小悪魔的な小菊、落ち着きと色香のあるお吉。ともに魅力的でした。
荒川良々さん、物語から逸脱しないギリギリのラインで笑いとってた、さすが。
セットはほぼなく、床几とか小道具がちょっとだけ。
さらに歌舞伎の『女殺油地獄』といえば…の油にまみれての殺しはなかったのですが、素晴らしい照明が、殺し場をスリリングに作り上げていた。このシーンの獅童と壱くんの演技も素晴らしかった。
殺し場の、お光の使い方もとても印象的。
あと逮夜の場を私は観たことがほとんどなく詳しくないんだけど、小菊の残酷さも赤堀さんのオリジナルかな(違ってたらごめんなさい)。
いやぁ、素晴らしかったです。
5月17日(金)まで、寺田倉庫にて。
そのあと5月22日(水)~29日(水)で歌舞伎町のライブハウス、新宿FACEで上演されます。
が、寺田倉庫はけっこう広く、四方八方から俳優が出入りするしてくるんだけど、遠くからだんだん人が近付いてくる感が味わい深くて、(新宿を観ずに言うのもなんだが)寺田倉庫で観るのおススメです!
公式のレポートの写真、無機質な倉庫の雰囲気がよく伝わってます↓