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自然派と反ワクとワタシ

アナタの「自然派」はどこから?
ワタシの「自然派」は、母親学級という名の出産準備セミナーで、たまたま隣に座った人から言われた「あなたの出産はどこで?アタシは水中出産!」から。

水中?
出産?

その時のワタシは全く意味がわからなくて「え?どういうこと?」と彼女に何度も尋ねました。

水中出産とは。

「水中」といえば「水中、それは苦しい」というバンド*1 しか思い浮かばないワタシにとって、「水中?なんでそんな苦しそうな出産を?」としか思えない。

思えないんですけど、彼女から聞いた話では。

産気づいたら、マントラを唱えながらビニールプールの水の中で出産したあと、胎盤を食べる。

というのが「水中出産」なのだそうです。

その時は知らなかったんですよ。
その「水中出産」の人がいわゆる「自然派」の人であることを。

出産、それは苦しい。

それは、出産を経験した人間ならわかる。

しかしですね。
「ビニールプールの中で出産」して、その後、胎盤(妊娠中に子宮に張り付いていた血の塊。出産時における排泄物)を食べた、という人がいるという事実。

それは、それまで自分が知っていた「世界」が反転した瞬間でした。

ワタシは、その「自然派」の人達の意味のわからなさに恐れおののきました。

「自然派」の人たちの意味のわからなさは、出産後、子育てをしていくうちに、もっとハッキリしてきました。

「自然」が全てなので、人工的な「医療行為」を否定する。
そんな「イデオロギーの伝道師」みたいな人がたくさんいました。

ワクチンがいかに赤ちゃんに有害なのかを、ワタシは何人もの「自然派」の人たちから「伝道」されました。

小学校に入ると、「イデオロギー」として給食の牛乳を拒否する「自然派」の親御さんもいらっしゃいました。

「アレルギー」ではなく「イデオロギー」で子どもに牛乳を飲ませない人がいることを知りました。

宗教的に禁じられた食物があるのも「イデオロギー」なので、「自然派」=宗教なんだなぁと、その時のワタシは思っていました。

それぞれご家庭の「イデオロギー」があるし、それはそれ。
尊重しなければならないし、自分としては距離を持って対峙すればいい、と。その時は思っていたんですよね。

それが。
そうとも言えなくなったのが、2011年の原発事故でした。

「福島の農作物や海産物には放射能が含まれている(可能性がある)」という事実を、「自然派」の人は「ベクレている」*2 と、表現しました。

2011年の原発事故当時の放射線量を考えると、「自然派」でなくても、小さな子どもを育てている家庭にとっては「西から農水産物を取り寄せる」というのは当たり前の事でした。
ワタシだってそうしていたし、佐賀からの農産物をシェアする事業すら立ち上げた。

だけど、福島ルーツである家族を持ち、「世界一美味しい」福島の桃を毎年食べていたワタシ達家族にとって、福島の農産物や海産物が「ベクレている」といわれる事はとてもつらいことでした。

(山本太郎、あん時しょっちゅう言ってたな「福島はベクレている」って。忘れてねぇぞアタシは)

ワタシが「自然派」の人と相容れない部分はそこなんですよね。

帝王切開するかしないか。
無痛分娩するかしないか。
母乳かミルクか。
ワクチン打つか打たないか。
輸血をするかしないか。
ガン治療するかしないか。

そもそもさぁ。
ワタシ達人間にとっての「自然」ってなんだろうねぇ。

そこからだよ。

*1 「水中、それは苦しい」というバンド
ジョニー大蔵大臣(ボーカル・ギター)を中心としたスリーピースのバンド。1992年結成。代表曲『安めぐみのテーマ』。全員が適当に高学歴(早稲田大学と東京外国語大学)

*2 「ベクレている」
放射線の値を示す「ベクレル」という単位表記を引用し「放射線が含まれている(可能性がある)食品」に対して使う蔑視的な形容詞。福島県の農水産物に対する差別表現

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