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伊那を旅して 2
旅は、天気に大きく左右される。
吸い込まれそうな青空、白やグレーの絵筆で描かれたような雲たち。できれば、晴れていてほしい。そう願う人の方が多いだろう。
旅の予定日が雨予報に変わった時、行くか行かないか悩むのは、バイク乗りだけかもしれない。雨を全身で受け止める覚悟。その覚悟があるのか?
毎日変わる天気予報。旅を諦めるのか。
初日だけ曇りになった。
雨が降る前に帰って来よう
帰る日を決めず、旅に出た。
***
青空と富士山が見えてよかった
西に行くと、富士山が見たくなるのはなぜだろう。見えるとホッとする。遠くから見守っていてくれる、親しい友のようで。
「あなたが出かけると、いつも富士山が見えるね」義母に言われたことがある。そう。いつも顔を見せてくれる。見えない時は全く見えないのに。
「今日も見えるだろうか」
心はやらせながら走ってきた。その富士山が今、目の前にある。
この景色だけで満足だ
思い切って、旅に出た自分を褒める。
ホテルを出て、同じ道を戻った。道路沿いの紅葉が赤く色づき始めている。
曲がり道を間違えて、手前の道に入ってしまった。せっかくだからと写真を撮る。
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少し標高を上げたのか?御殿場より色づいている。紅葉まつりと書いてあったか。河口湖は今が紅葉シーズン真っ盛りなんだろう。
R137に入り、御坂峠を上る。前回、峠の茶屋が閉まっていたことを思い出す。また、日帰りツーリングの時に行ってみよう。15時で閉まっていたから、今度はもっと早く。
トンネルを抜けると、緩やかなカーブで下っていく。山はまだ青い。ここは常緑樹なのか、少し標高を下げたのか。濃い深緑におおわれた山を見ながら走る。
下りながらふと、ふもとの夜景が見えた気がした。前に暗くなって通ったかな?と不思議に思う。記憶と現実を行き来しながら、バイクは走る。
一宮御坂インターから中央道へ。
ここの空気は温かい。金沢の帰り道を思い出す。雨にずっと降られて冷え切っていた体を、この区間は包み込むように温めてくれた。盆地ってすごい。
双葉SAに入る。早めのお昼。
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スバルラインのふもとで食べたほうとうを懐かしく思い出した。また食べたいな。ほうとう巡りもいいかも。
休憩を終え、中央道を走る。前に眠気と闘った区間で気になったが、問題なく走り切れて諏訪南で降りた。R20に合流。北上する。
峠道に入る前にガソリンスタンドへ。
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燃料補給をして、いよいよ楽しみにしていた峠道。県道16号からR152へ。前に教えてもらい、九州へ行く前に通った道。タカトウコヒガンザクラという固有種が咲く、高遠を通る道。
その時は少し早かったのか、ほとんど咲いていなかった。1箇所だけ咲いていた桜並木を走り抜けたことを、今も悔やんでいる。停まって写真を撮ればよかったのに。
***
R152へ左折すると、スカイラインの入り口のように趣きが変わった。こういう雰囲気、好き。心が跳ね上がる。
グンと上りながら、右、左とカーブを抜ける。一気にふもとの街が遠くなる。山の中へ分け入ったようだ。木々が近い。でも、ここはまだ緑色。
右へぐるっと、左へぐるっと。大きめのカーブ。好きなRだ。つづら折れの道が、山を上っていることを実感させる。
車はいない。もうすぐかなと思いながら、いくつもカーブをこなす。楽しい道だったという記憶しかないけど、思ったより距離があるなと思ったら…
あった!
左カーブの外側に、突然開けた駐車場が見えた。慌てて右ウィンカーを出す。ここに来たかったんだ。次の休憩地と思っていたところ。
杖突峠展望台
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お昼にほうとうを食べたので、ここで食べるつもりはないけれど…入り口が開いているってことは、やってるのかな?次は食べてみようか。
建物の左手から景色を望む。
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休憩だけのつもりでいたので、バイクに戻る。バイクの横でのんびりしていたら、BGMが聞こえてきた。ピアノの音だ。耳が喜んでいる。嬉しい。
ん?
BGMで流れているにしては、演奏がつたない。たどたどしい音。時折空くおかしな間。音を聴き取りながら、閃いたひとつの答え。これはもしかして…
心はやるのをおさえながら、音の聴こえた方、右手の建物へと急ぐ。もしかしてもしかして………
そう。その答えは正しかった。
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男性が、坂本龍一さんの曲をとつとつと弾いている。これは、やっぱり……ストリートピアノだ!
お邪魔にならないように、どこかないかと周りを見渡す。
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展望台の文字に、階段を登ってみる。
木がふんだんに使われた、居心地の良さそうな喫茶店。の窓の外が気になりすぎる。外に人の影。行っても良さそうな感じ。
店内を突っ切って、ガラス戸を開けた。
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視界に入りきらない絶景が目の前にあった。前回は、さっき見た建物の横からのぞいただけだったので、こんな種明かしがあることにびっくりする。知らないって罪だ。
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テーブルと椅子もあり、ツーリング途中の男性が2人、恋人のように仲良く食べていた。バイク旅なら男性2人でも、周りの視線が温かそう。
よかった、となぜか思った。
旅のつづきは、こちら
旅のはじまりは、こちら