息子が高校に行き、娘が中学を遅刻した朝
朝6:10。
台所から音がする。
息子だ!
わたしも慌てて起きる。
いつもは5時台に起きているのだが
今日はまた寝坊した。
「おはよう。」
声をかける。
「おはよう。」
息子の声は落ち着いている。
一緒に朝食を食べた。
「雨かな?」と息子。
外を見る。
「雨降ってるね。」とわたし。
「送ってくれない?」
息子は
雨と風と雷が嫌いだ。
「いいよ。何時に出る?」
送ることにした。
前日の夕方。
「明日の体育。
体育館シューズは売店にあるのかな?」
息子が少し不安そうに言うので
すぐ返事した。
「今、買いに行こう。
運動靴でもいいんでしょ?」
「今?もう夕飯前だけど?」
「不安あったら明日また起きられないでしょ。」
すぐに車を出し、靴を買いに出た。
2足まで絞り
決めきれないようなので
「両方買えば?」と言うと
「えっ??」とたじろぐ息子。
「2足も?」
「体育館シューズ買うの止めて
それ使えばいいじゃん。」
「・・・。そうだね。」
両方買って帰った。
帰ってから、色々聞いた。
時間割の確認。
教室はわかっているか?
持ち物で困っているものは無いか?
一つずつ不安を潰していく。
前回は
この作業を怠った。
息子は一人で調べているうちに
パニックになり
翌日、初登校の高校を休んだ。
明日は息子にとっても
わたしにとってもリベンジだ。
新しいことが苦手過ぎる息子。
不安を消していくしかない。
一つ一つ細かいことまで想定して
その不安材料を詰んでいく。
手作業でいらないものを
丁寧に取り除いている気分。
終わった。
全ての不安材料は詰めた。
あとは本人の勇気次第。
全てが整えば
自分で動き出す息子。
翌朝、早めに起きてきて
朝食の用意をしている息子を見て
「今日は高校に行く。」と思った。
笑い話にしてしまおう。
「火曜日、中卒でいいって言ってたよね。」
敢えて触れてみる。
「今でも中卒でいいと思ってるよ。」
と息子が返してきた。
わたしは考えて言ってみた。
「中卒でも働けばお金はもらえるよ。
でも生活に必要なお金は皆同じ。
月13万もらって生活費10万かかったら
趣味に使えるお金は3万しか無い。
高卒になれば月15万で5万円。
大卒になれば月18万で8万円。
毎月、自由に使えるお金が変わる。
中卒でも高卒でも
生活はできるけど
生きる楽しみに使える
お金が変わるってこと。
週末、好きなことして
過ごしたかったら
高校は出たほうがいいと思う。」
息子は前にこう言った。
「どんな仕事に就きたいかは
決まってないけど
父さんのように生きたい。」
父のように。
夫は人生を楽しむために生きている。
週末のために平日を生きている。
多趣味で興味を持つと
何でも試す夫。
棚でも野菜でも
何でも作ってしまう夫。
釣りにハマり
週5で早朝釣りに行く夫。
(リモートだからできるんだけど)
息子は
小さい時から
父と遊び尽くしている。
『人生とは
楽しむためにある』
ということを
息子は既に知っている。
楽しむために働く。
楽しみのために
嫌なことを堪える。
楽しみのために。
嫌な仕事を
嫌な高校を。
2人は同じ。
だから
高校は卒業すると思う。
息子を駅まで送った。
駅から戻ると
娘がまだ寝ている。
7:45。
朝食の時間がもう無い。
慌てて起こすが
動きが悪い。
昨日の夜からおかしかった。
ついに遅刻?
兄はやっと高校に行ったのに?
小学校の最後。
朝、起きられなくなって
毎日遅刻していた娘。
一度、遅刻すると
張りつめているものが
切れてしまう。
一難去ってまた一難。
今度は娘と付き合う。
娘の動きが悪い。
何か気になることがある様子。
色々聞き出す。
ようやく特定できた。
社会の小テストだった。
娘に話す。
「5が取りたいなら
小テストを受けないといけない。
(5を取る中学生YouTuberに憧れている)
成績は
100点かどうかを見るのではなく
嫌なことにも辛抱して
向き合えるか?を見ている。
小テストから逃げる人に
5はつけられないよ。
30点でもいいから
小テストを受けないと。
期末の練習に…と
やってくれるテストを受けずに
期末本番どうやって
落ち着いて解けるの?
それこそ
期末で失敗したら
5は取れないよ。」
しばらくして娘が言う。
「送ってくれる?」
「ん?中学まで?
近くない?」
と返しながら思う。
息子と同じ。不安なんだ。
「いいよ。
送るから準備して。」
送る車の中で娘が言う。
「昇降口が閉まってたらどうする?」
「隣のドアのピンポンを押せば
職員室の先生につながるよ。」
「教室が閉まっていたらどうしたらいい?」
「職員室に行けば誰かいるから
その先生に開けてもらえばいいよ。」
不安を摘む。
一つ一つ摘む。
落ち着いて話す。
わたしの不安は
娘には絶対に見せない。
車から降りる時
娘は泣きそうだった。
ZOOMの研修が迫っていたので
「研修10時からだから。
早くしないと間に合わない。
一緒に行くから
正門大きく開けて。
上に車停めないと!」
「わかった。もういい!」
娘は車から降りて
背を向けた。
正門を小さく開けて
自分だけ入っていく。
行った。
背中を見送り
車を発進させる。
うちに戻る。
9:57。
研修3分前。
怒涛の朝だった。