見出し画像

富士五湖ツーリング その12


道志みち。
道志川に沿っている道。

川沿いだからくねくねしている。
峠道として有名な道だ。

昔は、〇〇峠と書いた場所ばかり選んで
走りに行っていた。

少し遠征して
阪奈道路を走っていた時もあったな。

ベニカンと呼ばれる聖地のようなところがあって
私が行った頃には、走れないように
路面にガタガタに筋が入れてあった。

関東に越してからは
箱根、伊豆、富士山、日光、宮城。

意外に地元の峠道を走っていなかった。


今回、時間があれば走ってみたかった道。
道志みち。

45分走ってきて
初めてコンビニを見た気がする。

このコンビニは需要ありそうだな。

需要に応えるように、駐車場が広い。

こんなに。

目の前全て駐車場

写真を撮って気づく。
完全に日が暮れてしまった。

目の前は多分、川なんだと思う。
ずっと川沿いを走ってきたんだと。

前に車で通った時は
道路よりだいぶ下の方に川が流れていた。

だから、今日も水音がしなかったんだろう。

途中、道志の湯という温泉と
道の駅道志があった。

唯一、休憩できる雰囲気の場所だったけど
先を急ぎたくて停まらなかった。

今度は、道志だけ来ようか。

反対周りで、道志→山中湖→河口湖くらいで
戻って来るのもいいかもしれない。


飲み物を飲みたかった。お手洗いにも行きたい。

街灯もないような真っ暗闇の外とは
不釣り合いなほど明るいコンビニに入った。

人がいる。そのことに少しホッとする。

何か甘い飲み物を。
おにぎりは前回のコンビニで買ってある。

店を出てバイクのところに戻る。
一度、店内の光に慣れた目には、外は暗い。

バイクが何台かやってきた。
他にも走っている人がいるんだ。

真っ暗になった空を見上げ
スマホに目を落とす。

45分と書いてあったのは見間違いだったのか。
分岐の交差点までは、まだある。

最寄りの高速を探す。
相模原というインターへの道筋を勧められる。

相模原…

2年前の榛名からの帰り道を思い出した。

確か、相模原で降りたんだ。

あの時、オドメーターは1,999kmだった。

懐かしく思う。
今は、9,000kmを超えている。

その後の大変だったことは
2度と通りたくないと思っている自分の気持ちが
全てを物語っている。

相模原の先の下道はダメだ。
じゃあ、そこまでの下道は平気なのか?

もう一度、目の前の暗い道を見つめる。
他のルートを考える。

交差点を右折して南下。
厚木を目指すのはどうか?

厚木までの下道はスマホで所々赤い。
渋滞しているようだ。

疲れている時に渋滞にはまりたくない。
左肩は今も鈍痛でうずいている。

途方に暮れてしまった。

まだ、あの榛名の帰り道よりも
遠いところに自分がいる現実に
圧倒されてしまった。

下道オンリーだと、あと2時間はかかる。
今、18時。全部渋滞は厳しい。

思考が止まる。
心細さが湧く。

判断ができない。

知らない場所。真っ暗な道。
帰るルートが定まらない。

少し、何も考えられずにいた。


バイクが2台入ってきた。
男女の2台だ。峠道で抜いた2人か。

男性が女性の世話をやいている。
女性はバイクに慣れていないようだ。

走り方もそうだった。

2人が見ている視界に、頭の中を切り変える。
こんな暗い夜道に、女性1人。

そう、わたしは一人なんだった。

数台のバイクが、集団で駐車場に停まった。
また、女性が一人いる。

女性ライダーが増えたな。

増えたけど、ソロライダーはやっぱりいない。

今ですらいないのに
昔、わたしはどんなふうに見えていたんだろう。

今のわたしは、どう見えている?

見られることにだいぶ慣れて
ヘルメットを脱ぎ
その場にいられるようになったけど…

暗やみに助けられて
途方に暮れた姿には気づかれないようにした。


この時間なら、高速も空いてきているだろう。

つぶやいていたnoteにコメントをもらって
案じてくれている言葉に勇気が湧いた。

一人しかいないんだから
自分で判断するしかない。

そう腹をくくって、もう一度スマホを見る。

雨と夜は、高速の方が安全。
九州で得た経験から、心はそう言っている。

一番近いインターを目指そう。
圏央道の相模原インターへ行くルートに決める。

青山という交差点を右折。
R412を進み、長竹三差路を左折。
県道513へ入り、一度右折。
県道510方面に進み、相模原を目指す。

このルートを覚えていられるのか。

自信はなかった。
夕方は、脳が疲れて記憶力が落ちる。

暗い中、交差点名は読めない。
緑の看板、高速への誘導案内に頼るしかない。

何度もまた停まるかもしれない。
それはもう覚悟した。

方向音痴は昔からだ。
仕方ない。自分しかいないのだから。

他のバイクはみんないなくなっていた。
わたしもまた、走るために準備を始めた。


バイクを走らせ、夜道を進んでいると
少し開けたところに出た。

集落のようだ。ポツポツとある街灯と
周りを取り囲むような山々。

前にnoteで見た一枚の写真を思い出す。

夜の始まりのような写真。
周りは山に囲まれている。
写っているのは山の稜線のみ。

バイクで走ってこの景色を見ている。

それは、夜が始まる今
まだ山の中にいることを意味していた。

帰ることを考えていないような
夜に包まれた静かな山の写真に

いつか山の中で、あの稜線を見たい。

と思った。

夜の始まる頃、山の中にまだいる自分。

そんな時間に山にいるなんて。
そんなこと、いつかできるんだろうか。

そう思っていたことを思い出す。

そして今、夜、山の中にいる。
そんな写真がわたしも撮れるかもしれない。

バイクを路肩に停めた。

静かな集落だ。人の姿は見えない。
ヘルメットのまま写真を撮る。街灯がじゃまだ。

上手く撮れない。
ここは山の中じゃないのか。

こんな集落だったよという証拠写真。

スマホだと明るく撮れる

レンズ越しに見ると
思ったより明るい町の灯りで
noteで見た写真と同じようには撮れなかったのが
少し残念だった。


車が一台通り過ぎた後、また走り始めた。

追いついた車はすぐに譲ってくれた。
抜きながら左手を挙げる。

抜いた後、車間が空くよう加速して先を急ぐ。

譲ってくれた車のじゃまにならないように
ぐんぐん先へと進む。

ヘッドライトを頼りに走る。
自分のヘッドライトだと近すぎて
見たいところを照らせない。

もう少し先を照らしたいな。

車の列に追いついた。
車のヘッドライト先を見る。

やっぱりこっちの方が見やすい。


青山という信号まで来た。
ここで右折。

ここは多分半原に近く
何度か通ったことのある交差点だった。

半原にはポケバイコースがあり
夫からよく話を聞いていた。

連れて行ってもらったこともあり
名前をよく聞く場所に近いというだけで
知っているところに来たような
ホッとした気持ちになった。

ここはよく混むイメージ。
車が連なっていても諦めがつく。

車の列に並び
人里に帰ってきたような気持ちになる。

長竹三差路で左折できるんだろうか。

前方に緑の看板がいつ見えるのか
目を凝らしながらバイクを走らせる。

紙の地図ならあと何キロと距離を調べ
バイクのメーターで交差点までの距離を
予測できるのに。

スマホの地図は拡大できて便利だけど
地点ごとの距離がわかりにくい。

車の流れはインターに向かっているはず。

前を行く車の列の動きも気にしながら
次の交差点を目指した。


少し周りが明るくなり
前の車が何台も左折していく。

ハッとして、わたしも左折。

目的の交差点だったのか
交差点名は見えなかった。

でも、この道を知っている気がした。
前に通ったことがあるんだろうか。

曲がってすぐに
ぐんぐん上っていく坂道を走りながら
地図の道路の形状と今通った道が同じだから
大丈夫と自分に言い聞かせた。

この後の右折は交差点名がない。

でも、インターへの最短ルートだから
緑の看板はあるはずだ。

そう信じて、車の後を走る。
新しく作ったようなきれいな道に出る。

緑の看板があった!
前の車も右折しようとしている。

間違いない。ここだ。

安心して右折した。
あとは車の流れに乗って走るだけだ。

街灯の並ぶ道路を
数台並ぶ車について走った。

相模原インターまであと少し。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?