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今日は空が澄んでいた


朝、外から声が聞こえてきた。

『富士山見えてるよ!
 手前の山まで見えてる!!』

慌てて屋根裏に登る。
窓を開けた。

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本当だ。珍しい。

こんなに曇っているのに
富士山がくっきり見えている。


これは、出かける日だったね。
しまったな。


昨日の雨で洗い流されて
空気がきれいに澄んだんだ。


ツーリングに出かける時は
雨上がりを狙ったりする。

景色がクリアだからだ。

今日は曇りだし
そもそも息子を送るし
出かけるつもりは全然なかったのに

こんなにきれいに富士山が見えていると
そわそわしてくる。


どこまでなら行ける?


息子が起きて来ないので
不審に思って9:30に起こしに行く。

布団の中だ。これはヤバい。


「9時半だよ」

『んー。めんどい』

「今日土曜日だから英検だよね?」

『・・・(無言)』

「遅刻できないと思うよ。
 受験料払っちゃってるよ。」

『・・・(反応なし)』


これは…行けない時のパターンだ。

今週ずいぶん頑張っていたから
ここに来てエネルギー切れか?


覚悟を決めて
塾長先生に欠席のメールをしようと思ったら
息子が起きた音がした。


あの状態から起きるのか?


信じられない!
あの完全に寝てる、朝のダメダメから?


でも、起きて
ドライヤーをかけている音がする。

降りてきた。

「時間だから行く?」

『ああ(不機嫌)』


慌ててペットボトルと
パンを何種類かかき集めて
息子に見せた。

「車で食べたら?」

黙ってペットボトルを取って
かばんに入れた。


外に出る。

「今日、富士山が最高なんだよ。
 手前の山まで見えるんだ。ほら」

下から雲が湧いてきている。
手前の山が半分隠れてきた。

『ほんとだね』

少し明るい声で息子が返事をする。


車に乗り、走らせて
富士山がよく見える信号まで来た。

「ほら、どう?」

『いいね』

手前の山は雲で見えなくなっている。
どんどん湧いてきているようだ。


交差点を直進し、次の信号で曲がる。

線路沿いの下り道。
空が吸い込まれるように広がっていた。

英検の開始時間ギリギリなのに
思わず車を停めて写真を撮る。笑

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会場に向かう。いつもの塾だ。

「何時まで?」

『12時半くらいかなぁ』

「2時間かぁ。富士山見に行きたいなぁ。
 どこまで行けるかなぁ。
 帰り、迎えに来なかったらごめん」

『とりあえずわかったら
 終わりの時間連絡するわ』


塾の前で降ろし、家に戻る。
車を停めて、バイクを見る。

「バイク…
 突然バイクは乗れないか」

洗濯がまだだ。
洗い物も残っている。

家事をおろそかにして出かけると
バイクが悪者になってしまう。


家に戻り、洗濯を回す。
洗い物を片付ける。


迎えに行く前に
車で少し見に行く?


ふと、息子を連れて行ったらどうだろう?
と思った。

迎えに行く前じゃなくて
迎えに行った後、息子も乗せて行ったら?


英検でがんばった息子に
ごほうびのドライブはどうかな?

最近、免許を取りたがっているし
近所のお気に入りルートを伝授したらどうかな?


息子を迎えに行き
待ち合わせのセブンでお昼を買う。

車で食べながら出発だ。


「とりあえずガソリンないから
 スタンド行こう。
 その時、朝、富士山見た交差点通るから
 富士山まだ見えてるか確認しよう」

『見えなかったら?』

「その時は橋は渡らずに
 手前の行きたいとこだけ行こう」


交差点でちょうど停まる。

「今はマンションで隠れてるのかな。
 スタートしたら右後ろ見てね」

スタート。
一緒に振り向く。

『いないな』

そのまま進み、スタンドに入る。
さて、どうするか。

ガソリンを入れ終わる。
車に乗った。

「どうする?」

『どっちでもいいよ』

「じゃあ、見えないかもしれないけど
 行こうか。景色はいいはずだから」

『そうかな』
(と言った気がする。後でそのことを思い出す)


車を走らせる。

事故現場を通る。

「ここでバイクがUターンしてきたの」

『ここね。前に2人で(父と)見に来たわ』

そうなの?知らなかった。


通りながら、事故の様子を話す。

どうやって、妹を無傷で済ませたか。
ぶつかる瞬間、どう対処したか。

「バイクにごめんなさい!って思ったのに
 フォーク曲がってなかったんだよね」

『代わりに、鎖骨が折れるという。笑』

「そうだよ。ミシッて聞こえたの
 バイクじゃなくて自分の骨だったよ。笑笑」


富士山が見えるポイントに来る。

「この先で右に富士山が見えるから」

『わかった・・・見えないね』

本当だ。見えない。


橋を渡るかどうか聞いたら
どっちでもいいと言うので
渡ることにした。

橋の上で両側の柵がなくなるのを待つ。

「もうすぐ網目消えるから」

網が無くなった。

「あんまりくっきり見えないね」

『今1時でしょう。そりゃ、かすむよね』

息子が写真を撮る。

よかった。
一応楽しんでいるみたいだ。


橋を渡り、向こう側でUターンする。
いつもは休憩する公園を通過。

そのまま復路に入る。


もう一度橋を渡る。

今度は反対側の柵が切れるのを待つ。

切れた!
息子がまた写真を撮る。

「本当はこっちに富士山見えるんだけどね。
 夕方はまた富士山見えること多いんだ」

『夕方いいかもね』


橋を渡り終えた。


もう1箇所、気に入っている場所に連れて行く。
車を停めてゆっくり見る。

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景色がよかった。
さっきよりくっきり見える気がする。


帰り、坂道発進の話になった。
実際に、坂道で説明する。

「坂道は、ブレーキとクラッチを踏んでる。
 ここで、ブレーキを離す」

本当にブレーキを離した。
スーッと下がる。

「ブレーキを離した瞬間、下がるから
 サイドブレーキを引いておく」

サイドブレーキを引いて
フットブレーキを離した。

下がる。。笑笑
2人で笑ってしまった。

『下がるねー』

「ワイヤー伸びてるみたい。
 普通は下がらないけど
 足よりは弱いからね」

で、もう一度
サイドブレーキを引いて
フットブレーキだけ離した。

「足のブレーキを離しても
 さっきほどは下がらないから」

『うん。下がり具合が
 少しゆっくりになるね』

「ここでクラッチを少し緩めながら
 アクセルを踏む。

 あれ?さっきここでサイドブレーキ
 外さないとエンストするって言ったのに
 (エンスト)しないね」

『サイドは最後の最後まで
 外さなくていいんじゃね?』

たしかに。。

前は、クラッチ緩めてアクセル踏んだら
慌ててサイド外してたけど

エンジンの回転数が充分上がってから
サイドを外せばスムーズなのか!


息子に教わるという…笑



無事帰宅し、息子がひと言。


『あー、免許取りたい!!』


ドライブの楽しさを
見せつけてしまったかな?笑

悪い母ちゃんだ。笑笑




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